音楽

【24/09】テレビ大陸音頭、長谷川白紙、Louis Cole、Sam Gendel、UNKNOWN ME、Ken Ikedaなど16選

話題の高校生バンドからLAジャズ、新世代ブラジル音楽、2020年代アンビエントまで、気になる作品をセレクトしました。

【1】テレビ大陸音頭「俺に真実を教えてくれ!!」

  • 2024/03/16、テレビ大陸音頭
  • 千代谷竜司:ボーカル / ALUMICAN
  • 鈴木隆太郎:ギター
  • ヤナガワヒロト:ドラム / イヌザル
  • 戸借晴亜:ベース(サポート)

札幌の高校生バンドがバズっているそうです。
Black Midi(ブラック・ミディ)の解散を現実として受け止めたくない新聖かまってちゃんといった趣きでしょうか。


ボーカル千代谷竜司さんの別バンドALUMICANを踏まえると、JAGATARA(じゃがたら)、EYEさん(ボアダムス)、中原昌也さん(暴力温泉芸者→Hair Stylistics)辺りを想起させられます。
ここからスカムやノイズも内包するアンビエントまで駆け抜けましょう。

【2】長谷川白紙『魔法学校 / Mah​ō​gakkō』

  • 2024/07/24、Brainfeeder / Beat Records

唯一無二の前衛音楽、独走態勢。
根幹をなすブレイクコアと歌声のギャップ萌えこそ、日本文化の賜物かもしれません。

  • ブレイクコア:速い、間がない、複雑、うるさい、重い、低音
  • ボーカル:美しい、優しい、儚い、かわいい、軽い、高音

『草木萌動』で多くのリスナーが思い描いたであろうシリアスな文学性を破壊する狙いで、等身大の若さを打ち出したのでしょうか。

長谷川白紙「口の花火」


そもそもBrainfeeder(ブレインフィーダー)デビューやSam Wilkes(サム・ウィルクス)とのコラボは、正当にカッパ発見並みの大騒ぎになっているのかどうか気になります。

長谷川白紙 「外 」THE FIRST TAKE


ぎりぎりJ-POPのバラードとして理解が追いつきそうな「外」で締めくくるサービス精神も持ち合わせています。

【3】Louis Cole (with Metropole Orkest & Jules Buckley)『nothing』

  • 2024/08/29、Brainfeeder / Beat Records

長谷川白紙さんとレーベルメイトになったLouis Cole(ルイス・コール)。


Jules Buckley(ジュールズ・バックリー)指揮によるMetropole Orkest(メトロポール・オーケストラ)とのコラボ作では、LAビート、LAジャズ、ファンク、クラシックが混然一体となっています。


KNOWER(ノウワー)のGenevieve Artadi(ジェネヴィーヴ・アルターディ)、KNOWER常連のSam Wilkes、Jacob Mann(ジェイコブ・マン)らも参加。
やはり超絶テクと骸骨スーツ着用という悪ふざけのギャップに萌えます。

【4】Emile Mosseri & Sam Gendel『Hardy Boys』

  • 2024/07/19、Greedy Heart Records

悪ふざけが過ぎるといえば、覆面ユニットClown Core(クラウン・コア)。
中の人はLouis ColeとSam Gendel(サム・ゲンデル)では?
……とささやかれつつ、暗黙のデビルマン化しています。
https://twitter.com/FRUE_JP/status/1698987798655844487
そのSam Gendelは魂のふるえるフェスᖴᖇᑌE(フルー)の常連。
星野源さん、折坂悠太さん、笹久保伸さん、同じくᖴᖇᑌEの常連Fabiano do Nascimento(ファビアーノ・ド・ナシメント)ともコラボしています。

今回はEmile Mosser(エミール・モッセーリ)とのコラボ。
Leaving RecordsのMatthewdavid(マシューデイヴィッド)がマスタリングを手がけた奇妙なアンビエントは、叫んだりふざけたりせずにはいられない先鋭的な狂気性も内包する哀愁が漂います。

【5】Bruno Berle『No Reino dos Afetos 2』

  • 2024/04/10:Far Out Recordings
  • 国内盤CD:2024/04/17、Unimusic

ᖴᖇᑌEの本祭、FESTIVAL de FRUE 2024(フェスティバル・デ・フルー 2024)は11月2日・3日、静岡・掛川のつま恋リゾート彩の郷にて開催されます。


Amaro Freitas(アマーロ・フレイタス)やSam Gendel & Sam Wilkesのほかにも注目したいのがBruno Berle(ブルーノ・ベルリ)!
ブラジルのSSWですが、ローファイヒップホップのトラックメーカーbatata boy(バタータ・ボーイ)と共に初来日とのこと。


日本でもYouTuber感覚で「ローファイBGM×AIイラスト」の自作動画を投稿する人が増えているようなので、ひょんな流れでバズる可能性もありそうです。
https://twitter.com/J_LandscapeAi/status/1826378753796440569

【6】Simmer Pine『Recipe』

  • 2024/07/31、Simmer Pine

ローファイというか、ヴェイパーウェイヴっぽい「へにゃへにゃぺにょぺにょ感」に終始ニヤニヤさせられるのが、Simmer Pineの1st EP。
2022年に結成されたばかりの4人組インディーポップバンドです。

【7】Buffalo Daughter「Everything Valley / ET (Densha) – AMBIENT KYOTO Mix」

  • 2024/07/19、Buffalo Ranch

Everything Valley – AMBIENT KYOTO Mix (Type A)

Everything Valley – AMBIENT KYOTO Mix (Type B)

ET (Densha) – AMBIENT KYOTO Mix

邦ロックバンドのアンビエント化現象が起きているようです。

原口沙輔『スクリーンⅡ』

  • 2023/09/30、Sasuke Haraguchi

Buffalo Daughterとも共演している、とんでもないプロデューサーもいます。

【8】SUGIURUMN『SOMEONE IS DANCING SOMEWHERE』

  • 2024/08/07、KiliKiliVilla

豪華なゲストに彩られた、歌ものクラブミュージック。
その昔、インストのクラブミュージックで踊り明かした日々に聴こえた気がした空耳は、幻ではなかったようです。

【9】滞空時間『鳥』

  • 2024/08/16、microAction / BRIDGE

影絵師&音楽家の川村亘平斎さんが主宰する滞空時間。
「架空の島の民謡」というコンセプトなので、ガムランやスティールパンがエキゾチックに響いたり、カッパが都都逸(どどいつ)を歌ったりします。

【10】K. Yoshimatsu『Fossil Cocoon』

  • 2024/08/16、Phantom Limb

台所でやかんのお湯が沸騰しそうな緊張感のみ継続し、一向に吹きこぼれず、空炊きにもならない日常の妙が目に浮かぶミニマルミュージック。
最終的にたどり着く楽園も枯れないお花畑のようです。

【11】菅谷昌弘『海の動物園 / The Long Living Things』

  • 1988、ALM Records
  • 2024/08/07、P-VINE

パパ・タラフマラの舞台音楽の再発、というだけで小劇場フリークには垂涎もの。

80年代の日本のアンビエントが海外から再評価されるきっかけとなったコンピ『Kankyō Ongaku』にも1曲収録されています。

ローファイ、ヴェイパーウェイヴ、「架空の島」のコンセプトにも通じる「へにゃへにゃぺにょぺにょ感」のほか、ジャズピアノ的な雰囲気も堪能できる環境音楽、アンビエントです。

VA『Kankyō Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980-1990』

  • 2019/02/15、Light in the Attic

再評価の注目の的は吉村弘(Hiroshi Yoshimura)さん、芦川聡(Satoshi Ashikawa)さん、尾島由郎(Yoshio Ojima)さん、宮下富実夫(Fumio Miyashita)さん、清水靖晃(Yasuaki Shimizu)さん辺りでしょうか。


さらに北村昌士(Masashi Kitamura)さんと津田治彦(Haruhiko Tsuda)さん率いるフォノジェニックス(Phonogenix)のユニット作までコンパイル!

北村昌士さんは音楽雑誌『FOOL’S MATE』の初代編集長、TRANS RECORDS(トランスレコード)レーベル主宰者、YBO²のボーカルでした。

つまりインディーロック、ポストパンク、ニューウェイヴ、ノイズも内包するアンビエントの具体例が示されていることになります。

【12】UNKNOWN ME『Bitokagaku / 美と科学』

  • 2024/07/19、Not Not Fun
  • やけのはら、P-RUFF、H.Takahashi、大澤悠大

「2020年代の現行アンビエントがとんでもないことになっている!」とカッパ発見並みに大騒ぎしても、食わず嫌いの人にはピンとこないかもしれません。

TURN TV【DIG IT! vol.1】Kankyō Records


その場合、80年代コンピ『Kankyō Ongaku』の吉村弘さんに相当するのが、2020年代コンピ『Medium Ambient Collection』のH.Takahashiさん(Kankyō Records)、だけでも覚えて帰ってください。

そのH.TakahashiさんのユニットのひとつがUNKNOWN ME!
とにかく聴けば伝わるでしょう。
この世にこれほど美しい音楽が存在するのか、とカッパも川に流れます。

VA『Medium Ambient Collection 2023』

https://twitter.com/masanori_nozawa/status/1728256563520123081

VA『Medium Ambient Collection 2022』

  • CD:2022/12/21、medium
  • LP:2024/03/20、medium / astrollage
  • Bandcamp:Bandcamp

https://twitter.com/masanori_nozawa/status/1739928662139343278

【13】Multi-Surface『NAP』

  • 2024/07/19、Not Not Fun

UNKNOWN MEの面々とレーベルメイトになる山口の音楽家Multi-SurfaceことTomokazu Fujimotoさんの『NAP』も極上のアンビエント!
めくるめく音響の美しさに、刹那の緊張感も織り交ぜられています。

雅な茶室で抹茶をいただくうちに密林の奥深くへと紛れ込み、湖に浮かんだかと思いきや気を失うような間の美学とインダストリアルな喧騒を思い出し、小動物や鳥や魚とたわむれる能楽絵巻のようです。

【14】soma hayato「光遊び」

  • 2024/08/11、soma hayato

2020年代の日本のアンビエントシーンのうち、個人的な注目ポイントはざっくり3つ。

  • アンビエント専門(周辺)のレコード店
  • アンビエントコンピ『Medium Ambient Collection』
  • アンビエントイベントMIMINOIMI

流れは2つ。

  • クラブ系:クラブミュージック~IDM、エレクトロニカ~アンビエント、エクスペリメンタル
  • アート系(芸術・美術系):現代音楽~実験音楽~環境音楽

そのうちアート系の流れをけん引するのがMIMINOIMI周辺という認識です。

MIMINOIMIのYama Yukiさんに着目して、たどり着くのがsoma hayatoさん。
2020年代アンビエントを象徴するおもしろさは「空間的な広がりを生み出す柔らかな音色」にあるとにらんでいますが、「光遊び」もその賜物でしょう。
とんでもない芸術運動が粛々と繰り広げられています。

【15】Ken Ikeda『Sparse Memory』

  • 2023/04/21、ROOM40

MIMINOIMIの新たなレギュラーイベントシリーズ「Food for Ears 〜 耳の糧 」、その5回目は2024年9月7日、東京・渋谷のミュージックバーTangleにて開催。
David Lynch(デイヴィッド・リンチ)や横尾忠則さんの展示にも楽曲提供する即興音楽家Ken IkedaさんをDJとして招く、芸術的な意味や糧に痺れます。

Lawrence English(ローレンス・イングリッシュ)主宰のROOM40からリリースされた23年作は、まさに耳福。
レヴィ=ストロースの『野生の思考』に触発された、進化する神話の一種だそうです。
Akaiのサンプラー、Yahama DX-7、Korg SDD-3000といった古いシンセや機材により、深い森とも宇宙の果てとも水中とも判別のつかないタイムレスなサウンドが紡がれます。

【16】Kenny Ueda『Pasadena Garden』

  • 2024/07/22、Mystery Circles

横浜の音楽家Kenny Uedaさんも、5回目の「耳の糧」にDJ参加。
そのMIMINOIMI、耳の糧のYama YukiさんとBahía Mansaのコラボ作同様、Mystery Circlesからリリースされた新譜もレトロフューチャーな音色がたまりません。
Roland Juno6、Casio Sk1、Yamaha VSS-30・SY35やエレキギター、エレキベースを駆使しているそうです。

おわりに

今月は「危険な時間帯に危険地帯で毒を吐いたり奇襲合戦を繰り広げたりするのは本当に危険と思い知った果ての……LAジャズ、新世代ブラジル音楽、2020年代アンビエント」というコンセプトでロングセットをお届けしました。
どうにか生き抜き、また来月お会いしましょう!

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渡辺和歌
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