新世代ジャズやジム・オルーク(Jim O’Rourke)周辺のエクスペリメンタル(実験音楽)好きなど、コアな音楽通が大騒ぎしている、サム・ゲンデル&サム・ウィルクス(Sam Gendel & Sam Wilkes)。
『Music for Saxofone & Bass Guitar More Songs』は2人の入り口として一般的にも聴きやすく、多彩な音楽的才能が凝縮された代表的な名盤といえるでしょう。
Contents
はじめに
https://twitter.com/turntokyo/status/1529779302895452160
- 左→右:サム・ゲンデル、サム・ウィルクス
サム・ゲンデル
サム・ゲンデル(Sam Gendel)は1986年(?)、米カリフォルニア州バイセイリア生まれ、南カリフォルニア大学(USC)ソーントン音楽学校出身(2005年入学、ジャズ専攻)、ロサンゼルスを拠点に活動する、サックス奏者(エフェクターを活用、マルチ奏者)&プロデューサーです。
https://twitter.com/turntokyo/status/1551492997606707200
- 『4444』デジタル・LP:2017年11月17日、CD:2018年3月16日、Terrible Records / Inpartmaint
- 『Double Expression』デジタル:2017年12月15日、Leaving Records
- 『Pass If Music』2018年2月23日、Leaving Records
- カルロス・ニーニョ(Carlos Niño)&『Raindiance / You’re Suspended』2018年12月29日、Anandamide
- →『Raindiance / You’re Suspended – EP』2020年12月29日、Carlos Niño
- 『Satin Doll』2020年3月13日、Nonesuch Records / WEA International
- 『DRM』2020年10月1日、Nonesuch Records
- &イーサン・ブラウン(Ethan Braun)『Rio Nilo 66』2021年1月22日、ULYSSA
- 『Fresh Bread』2021年2月26日、Leaving Records
- 『Valley Fever Original Score』2021年5月7日、Fresh Bread
- &ジョサイア・スタインブリック(Josiah Steinbrick)『Mouthfeel / Serene』2021年5月21日、Fresh Bread
- 『inga 2016』デジタル:2021年10月5日、CD:2021年10月6日、LP:2021年11月27日、Fresh Bread / rings
- &笹久保伸(Shin Sasakubo)『SAM GENDEL & SHIN SASAKUBO』2021年11月17日、カルネ音楽部
- 『AE-30』2021年12月8日、Leaving Records
- &アントニア・サイトリノウィックス(Antonia Cytrynowicz)『LIVE A LITTLE』デジタル:2022年5月13日、CD:2022年7月6日、Psychic Hotline / rings
- 『Cicada Lite (Live in Texas)』2022年7月29日、Unseen Worlds / Beyond Language (ASCAP)
- 『SUPERSTORE』デジタル:2022年6月10日、CD:2022年8月3日、Leaving Records / astrollage
- 『blueblue』デジタル:2022年10月14日、CD:2022年11月23日、Leaving Records / astrollage
サム・ウィルクス
サム・ウィルクス(Sam Wilkes)は1990年(?)、米コネチカット州生まれ、USCソーントン音楽学校出身(2009年入学、ポピュラーミュージック→ジャズ専攻)、ロサンゼルスを拠点に活動する、ベーシスト(マルチ奏者)&プロデューサーです。
【Beat Makers Lab|会員限定】
Sam Wilkes 〜LAを拠点に活動する気鋭ジャズ・ベーシスト/プロデューサーhttps://t.co/ZCJdbtPRdH
ノウワーやジェイコブ・コリアーのサポート、サム・ゲンデルとのコラボなど幅広く活躍するサム・ウィルクスのプライベート・スタジオを訪れました。#SamWilkes
— サウンド&レコーディング・マガジン (@snrec_jp) June 16, 2022
- 『WILKES』デジタル・LP・カセット:2018年10月5日、CD:2019年5月22日→2021年3月24日、Leaving Records / astrollage
- 『Live on The Green』デジタル・LP:2019年11月8日、CD:2020年1月22日、Leaving Records / astrollage
- 『“Sings” (2014-2016)』デジタル:2020年5月1日、Leaving Records
- 『One Theme & Subsequent Improvisation』2021年10月22日、CD:2021年12月15日、Leaving Records / astrollage
- &ジェイコブ・マン『Perform the Compositions of Sam Wilkes & Jacob Mann』2022年9月23日、Leaving Records
KNOWER
サム&サムの2人は、同じくUSCソーントン音楽学校出身(2009年卒業)で友人のドラマー(マルチ奏者)&SSW&プロデューサーのルイス・コール(Louis Cole、1986年生まれ?)と、ボーカルのジェネヴィーヴ・アルターディ(Genevieve Artadi)によるユニット(デュオ)、KNOWER(ノアー、ノウワー)のバンドメンバーとしても活動しています。
- 『Louis Cole and Genevieve Artadi』2010年10月1日
- 『Think Thoughts』2011年11月28日
- 『Let Go』2013年4月29日
- 『Life』2016年2月5日
Clown Core
Clown Core(クラウン・コア)は正体不明の覆面ユニット(ルイス・コール&サム・ゲンデル?)です。
サム・ゲンデル&サム・ウィルクス
さらにサム&サムの2人は、サム・ゲンデル『Double Expression』(2017年12月)、サム・ウィルクス『WILKES』(2018年10月)、『Live on The Green』(2019年11月)、『”Sings” (2014-2016)』(2020年5月)、他アーティストの参加作品などでも多数コラボしています。
- 『Music for Saxofone & Bass Guitar』デジタル:2018年6月15日、CD:2021年3月24日、Leaving Records / astrollage
Music for Saxofone & Bass Guitar More Songs
参加作品を除き、ソロ名義を中心にさらっとディスコグラフィを紹介しただけでもこの情報量(かつそれぞれ濃密)なので、2人の音楽沼がどれほど深いか、想像できるでしょう。
そのなかで何も考えずに聴いても圧倒的に心地いい名盤を選びました。
サム・ゲンデル&サム・ウィルクス『Music for Saxofone & Bass Guitar』(2018年6月)に続く、デュオ2作目『Music for Saxofone & Bass Guitar More Songs』(デジタル:2021年7月21日、カセット:2021年8月20日、LP:2021年10月15日、CD:2022年9月21日、Leaving Records / astrollage)は、先行シングル2曲を含む、全9曲・約28分。
じっくりご堪能ください。
FRUEZINHOありがとうございました。音楽と出会い直した3日間。その光景たるや。写真はSam Gendel & Sam Wilkesと。 pic.twitter.com/u74f6TYSiv
— 折坂悠太|OrisakaYuta (@madon36) June 29, 2022
【1】Theem Prototype
「Theem Prototype」は、サム・ゲンデル&サム・ウィルクス『Music for Saxofone & Bass Guitar』(2018年6月)の2曲目「Theem And Variations」、サム・ゲンデル『Satin Doll』(2020年3月)の6曲目「The Theem」、サム・ゲンデル『Fresh Bread』(2021年2月)の3曲目「Junk_Theem」の原型(プロトタイプ)です。
この1曲目のほか、4曲目「Cold Pocket」と7曲目「Flametop Green」の計3曲で、ロサンゼルスの兄弟デュオ、インク・ノー・ワールド(Inc. No World、Inc.)の弟、ダニエル・エイジド(Daniel Aged、1986年3月20日生まれ、USC出身)のベースが加わっています。
サム・ゲンデル&サム・ウィルクス「Theem And Variations」
サム・ゲンデル「The Theem」
サム・ゲンデル「Junk_Theem」
【2】Welcome Vibe
「Welcome Vibe」は、ジョン・コルトレーン(John Coltrane)「Welcome」(アルバム『Kulu Sé Mama(クル・セ・ママ)』1967年1月)のカバー。
サム・ウィルクスの1stアルバム『WILKES』(2018年10月)の1曲目「Welcome」ともつながっています。
ジョン・コルトレーン「Welcome」
サム・ウィルクス「Welcome」
【3】I Sing High
第2弾シングル「I Sing High」(2021年7月7日)。
ノスタルジックなテーマに、サックスらしからぬエフェクト音、ローファイなビートやシューゲイズなどが重なり、静謐な時間が流れます。
https://twitter.com/kalopsia___3/status/1542106981573353472
【4】Cold Pocket
第1弾シングル「Cold Pocket」(2021年6月23日)には、ダニエル・エイジドが作・ベースで加わっています。
【5】Streetlevel
「Streetlevel」は、サム・ゲンデルのデジタルアルバム『Double Expression』(2017年12月)の2曲目「StreetLevel Pt.1」(約41分)と3曲目「StreetLevel Pt.2」(約45分)の凝縮バージョン。
サム・ウィルクス『One Theme & Subsequent Improvisation』(2021年10月)の1曲目「One Theme」と3曲目「The Drums」にもつながっているようです。
サム・ウィルクス「One Theme」
サム・ウィルクス「The Drums」
【6】SG’s Prius
落ち着こうとするベースと騒ごうとするサックスの対比がおもしろい「SG’s Prius」。
緊張感がありつつ、なぜかリラックスできる即興ジャズの醍醐味が凝縮されています。
【7】Flametop Green
「Flametop Green」は、U2やボブ・ディラン(Bob Dylan)などの作品を手がけ、ブライアン・イーノ(Brian Eno)とのコラボでも知られる、カナダのプロデューサー&マルチ奏者&SSW、ダニエル・ラノワ(Daniel Lanois)のソロ「Flametop Green」(アルバム『Belladonna(ベラドンナ)』2005年7月12日、ANTI- Records)のカバーです。
原曲でも哀愁の漂うテーマがミニマルに繰り返されていますが、不思議な音色のビートに、くぐもったベース、息の入れ方までもったりレイドバックするサックスが重なるアレンジになっているところがたまりません。
ダニエル・ラノワ「Flametop Green」
【8】Caroline, No
「Caroline, No」は、ザ・ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)のシングル「Caroline, No(キャロライン・ノー)」(1966年3月7日、アルバム『Pet Sounds(ペット・サウンズ)』1966年5月16日)のカバーです。
ビーチ・ボーイズ「Caroline, No」
【9】Greetings To Idris More Songs
「Greetings To Idris More Songs」は、ジョン・コルトレーンの後継者と称され、2022年9月24日に81歳で亡くなったジャズサックス奏者、ファラオ・サンダース(Pharoah Sanders)「Greetings to Idris」(アルバム『Journey To The One(ジャーニー・トゥ・ザ・ワン)』1980年、Theresa Records)のカバー。
サム・ゲンデル&サム・ウィルクス『Music for Saxofone & Bass Guitar』(2018年6月)の4曲目「Greetings To Idris」の『More Songs』バージョンです。
ファラオ・サンダース「Greetings to Idris」
サム・ゲンデル&サム・ウィルクス「Greetings To Idris」
おわりに
穏やかで力の抜けた印象ですが、音楽的な遊び心にあふれていて、飽きずに聴いていられるのではないでしょうか。
2人とも複数の楽器を演奏し、実験的な要素がふんだんに盛り込まれた作品も多数作っているので、今回のアルバムはそれぞれのメイン楽器による集大成(ダイジェスト)のようなイメージです。
さまざまなアーティストとコラボしていて、いずれも音楽のおもしろさを更新する試みばかりなので、このアルバムを機に2人の周辺を深掘りしたくなったはず。
ロサンゼルスのLAビートやLA新世代ジャズ(フライング・ロータス、サンダーキャット、カマシ・ワシントン)の先でも、LAアンダーグラウンドシーンは盛り上がっているということ。
今後も注目していきましょう。
リンク
- Wikipedia:Sam Gendel/ドイツ語、KNOWER、Clown Core
- AllMusic:Sam Gendel、Sam Wilkes、KNOWER
- Discogs:Sam Gendel、Sam Wilkes、MFSBGMS、KNOWER、Clown Core、Scary Pockets
- Website:Sam Gendel、Leaving Records、astrollage、astrollage STORES、KNOWER/UMJ、Clown Core、Scary Pockets
- Linktree:KNOWER
- Twitter:Sam Wilkes、Leaving Records、astrollage、KNOWER、Clown Core
- Instagram:Sam Wilkes、KNOWER、Clown Core、Scary Pockets
- Facebook:Sam Gendel、Sam Wilkes、KNOWER、Clown Core、Pratley、Scary Pockets
- Link:MFSBGMS
- YouTube:Leaving Records、Sam Wilkes/Topic、MFSBGMS、KNOWER、KNOWER/Topic、Clown Core、Nonesuch Records、Marcella Cytrynowicz、Pratley、Scary Pockets
- Tower Records:Sam Gendel、Sam Wilkes、国内盤CD
- disk union:Sam Gendel & Sam Wilkes、Sam Gendel、Sam Wilkes、MFSBGMS、国内盤CD、輸入盤LP
- DIW by diskunion:国内盤CD
- PICKUP(北海道・別海町):Sam Gendel、Sam Wilkes、国内盤CD
- 芽瑠璃堂(埼玉・坂戸):Sam Gendel、Sam Wilkes、国内盤CD
- Newtone Records(大阪・西心斎橋):Sam Gendel & Sam Wilkes、Sam Gendel、Sam Wilkes、輸入盤LP、輸入盤カセット
- JET SET(京都・東京):Sam Gendel、Sam Wilkes、輸入盤LP
- Meditations(京都・河原町丸太町):Sam Gendel、Sam Wilkes、輸入盤LP
- Tobira Records(兵庫・加西):Sam Gendel、Sam Wilkes、輸入盤LP
- STEREO RECORDS(広島・中町):Sam Gendel、輸入盤LP
- Spotify:Sam Gendel、Sam Wilkes、MFSBGMS、KNOWER、Clown Core、Pratley、Scary Pockets
- Apple Music:Sam Gendel、Sam Wilkes、MFSBGMS、KNOWER、Clown Core、Scary Pockets
- SoundCloud:Sam Gendel、Sam Wilkes、KNOWER、Pratley
- Bandcamp:Sam Gendel & Sam Wilkes、MFSBGMS、Sam Gendel、Sam Wilkes、KNOWER、Clown Core、Pratley、Scary Pockets