こっちのけんとさんのヒット曲「はいよろこんで」の歌詞の意味を考察します。「誰の弟?」と話題のマルチクリエイターこっちのけんとさんの本名は菅生健人(すごうけんと)さん。俳優・歌手の菅田将暉さんが兄(長男)、俳優の菅生新樹(すごうあらき)さんが弟(三男)という三兄弟の次男です。2024年5月27日に配信リリースした6thシングル「はいよろこんで」はYouTube動画の総再生回数が1億回を突破するなど大バズり。「なぜ人気なのか?」やさまざまな「似てる?似てない?」論争にも迫ります。
Contents
こっちのけんと「はいよろこんで」歌詞の意味を考察
- 1A~1B~1C(サビ)
- 2D~2B’~2C’(ラスサビ)
東西食べ比べできる「利きどん兵衛」を
どうしても試してほしかったので、
あのギリギリな曲に乗せ、
ギリギリのスケジュールでCMを作りました。#こっちのけんと #はいよろこんで#利きどん兵衛 pic.twitter.com/r2QTRQhZs1— どん兵衛 公式 (@donbei_jp) October 14, 2024
1A:こっちのけんと「はいよろこんで」MV / PV
『はい喜んで』
『あなた方のため』
『はい謹んで』
『あなた方のために』
差し伸びてきた手
さながら正義仕立て
嫌嫌で生き延びて
わからずやに盾
『はい喜んであなた方のために』
『出来ることなら出来るとこまで』【英語】
“I’ll be so glad to”
I know I gotta do for you
”Yes, I would love to”
I know I gotta do for you guys
I know that helping hand
Is putting on the justice brand
“Yeah, yeah, whatever” saying like that
I block those who don’t understand
“I’ll be so glad to” I know I gotta do for you guys
If I can be of help then, as quickly as I canはいよろこんで/作詞:こっちのけんと 作曲:こっちのけんと・GRP
菅田将暉さんの弟とはいえ「何者?どんな人?」と気になる、こっちのけんとさん。その名前の由来は「会社員(サラリーマン)=あっちのけんと」と「アーティスト=こっちのけんと」と自分を区別していたからだそうです。経営コンサルタントの父・菅生新(すごうあらた)さんの影響を受け、コンサル会社に勤務していた時期がありました。
その就職前、兄の菅田将暉さんと同居していた駒澤大学時代、学生時代はアカペラサークルに所属。ディズニーソングを歌うアカペラグループで全国大会優勝の経験もあり、バックコーラスとして紅白にも出場しています。映像やデザインも手がける、緑色とメガネが好きなマルチアーティスト。2024年2月に結婚を発表した既婚者です。
こうした経歴を踏まえると順風満帆な人生に思えるものの、双極性障害(躁うつ病)という精神的な病気を抱えています。デビュー曲「Tiny」(2022年8月30日)に続いてTikTokなどでバズった2ndシングル「死ぬな!」(2022年12月10日)も実体験に基づいていて、その先に相当するのが「はいよろこんで」。
そのミュージックビデオのアニメやジャケットのイラストは、映像作家のかねひさ和哉さんが手がけました。サザエさん症候群(月曜日の前日、日曜日の夕方から夜にかけて憂鬱になる症例の俗称)を意識して昭和っぽくしたそうです。
MVの冒頭では「この世界に生きる すべての生きづらい人へ」というメッセージが表示され、SOSのモールス信号(トントントン ツーツーツー トントントン)と謎の言葉で始まるイントロ。この謎の言葉を逆再生すると「結局はね、優しささえあればいいとは思うんです」と聞こえると話題になっています。
1B:Kocchi no Kento「Hai Yorokonde (English Ver) 」MV / PV
後一歩を踏み出して
嫌なこと思い出して
奈落音頭奏でろ
「・・・」
もう一歩を踏み出して
嫌なこと思い出して
鳴らせ君の3〜6マス
「・・・ーーー・・・」【英語】
When I take a step forward
Bad memories make me awkward
We gotta play the beat of abyss
Boom boom boom
I take a step forward
Bad memories make me awkward
Now I say, give me your heart beat ringing like
Dit-dit-dit dah-dah-dah Dit-dit-ditはいよろこんで/作詞:こっちのけんと 作曲:こっちのけんと・GRP
「3〜6マス」(さんからろくます)は「心電図の心拍数の正常値」。こっちのけんとさん本人がYouTube動画「【1000万回記念】MVに来たコメントが鋭いから発表します。【はいよろこんで】」で「精神が壊れてしまいそうなら、体が正常なうちにSOSを出していこうよ、という気持ち」と解説しています。
こっちのけんとさん自身、喜んで何でも引き受けた結果、キャパオーバーになり倒れた経験があるため、「何でもやってくれる優しい人というイメージに押しつぶされる前に、助けを求める合図を出す必要がある」と解釈できるでしょう。
1C:こっちのけんと – はいよろこんで / THE FIRST TAKE
ギリギリダンス ギリギリダンス (踊れ)
ギリギリダンス ギリギリダンス (もっと鳴らせ)
ギリギリダンス ギリギリダンス (踊れ)
ギリギリダンス ギリギリダンス (もっと鳴らせ)
慣らせ君の病の町を
隠せ笑える他人のオピニオン
うっちゃれ正義の超人たちを
鳴らせ君の3〜6マス
・・・ーーー・・・【英語】
Get it, get it done Get it, gеt it done (Do your dance)
Get it, get it done Get it, gеt it done (Let me hear you say)
Get it, get it done Get it, gеt it done (Do your dance)
Get it, get it done Get it, gеt it done (Let me hear you say)
Adjust yourself to the city of disease we’re on
Better not care of the others’ opinion
Now you gotta leave the justice and hero
Now I say, give me your heartbeat ringing like
Dit-dit-dit dah-dah-dah Dit-dit-ditはいよろこんで/作詞:こっちのけんと 作曲:こっちのけんと・GRP
日本語バージョンの表記は「ギリギリダンス」ですが、実際には英語バージョンと同じく、「やり遂げろ」という意味の「Get it, get it done」と歌っています。
精神的な病気は日常的に向き合う必要があるため、的外れな他人の意見や何でも引き受けられるという万能感を無視して、「トントントン ツーツーツー トントントン」と救助信号を鳴らそう(ギリギリダンスを踊ろう)といったところでしょうか。
このサビに「似てる?似てない?」と物議を醸しているのが、TVアニメ「妖怪ウォッチ」の主題歌、キング・クリームソーダ「ゲラゲラポーのうた」とCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」。
ボイパ(ボイスパーカッション)あるいはビートボックス(ヒューマンビートボックス)も披露する点はヒカキンさん、顔や見た目は菅田将暉さん、とろサーモン久保田かずのぶさん、エハラマサヒロさん、Vaundyさんなど、さまざまな「似てる?似てない?」論争が起きています。
ただ、これらは「隠すべき他人のオピニオン」といえるかもしれません。
2D:【A cappella REMIX】はいよろこんで / こっちのけんと with shio
怒り抱いても
優しさが勝つあなたの
欠けたとこが希望 (Save this game, Mr. A)
救われたのは僕のうちの1人で【英語】
It is your tenderness
That would be able to just overcome the anger
It is only hope (Save this game, Mr. A)
Out of some of people in myself,
the only one just has been savedはいよろこんで/作詞:こっちのけんと 作曲:こっちのけんと・GRP
ほぼ4つ打ちビートに「裏打ちのアクセントが印象的なラップ調」と「語尾の音程が下がるK-POP調」のボーカルが乗るスタイルのなか、唯一R&Bのように歌い上げるパートです。
ネガティブな「怒り」よりポジティブな「優しさ」のほうが優位になるのは一見良さそうな気もしますが、性格が優しいばかりに「何をどれほど頼んでも大丈夫な人」と誤解されてしまうと「怒り」を抱くほど大変な状態になるという話でしょう。
本音と建前を臨機応変に使い分けることができればいいのかもしれませんが、「優しさ」も「怒り」も同時に本音の場合、「優しい自分」は救われるものの「怒りを抱いた自分」は救われないという矛盾が起きそうです。
2B’:はいよろこんで」冨岡愛×こっちのけんと
後一歩を踏み出して
嫌なこと思い出して
奈落音頭奏でろ
「・・・」
もう一歩を踏み出して
嫌なこと思い出して
鳴らせ君の3〜6マス
分かれ道思うがまま Go to Earth
任せたきりワガママな言葉
さぁ!奏でろハクナマタタな音は
「・・・ーーー・・・」【英語】
When I take a step forward
Bad memories make me awkward
We gotta play the beat of abyss
Boom boom boom
I take a step forward
Bad memories make me awkward
Now I say, give me your heartbeat ringing like
On the crossroad, on your own, go to Earth
“Let it be”, it’s the selfish words
I wanna hear your Hakuna Matata ringing aloud
Dit-dit-dit dah-dah-dah Dit-dit-ditはいよろこんで/作詞:こっちのけんと 作曲:こっちのけんと・GRP
途中までは1番Bメロと同じですが、早口ラップ調が追加される後半の畳みかけがおもしろい2番Bメロ。
過度な「ワガママ」は自己中心的と非難の対象になりがちですが、逆に苦しみを過度に我慢してしまうタイプの人はもっと「ワガママ」になる必要があるのかもしれません。
「ハクナマタタ」(Hakuna Matata)はディズニーのアニメ「ライオン・キング」にも登場するスワヒリ語で「問題ない=大丈夫」という意味です。
ところが病気のときに「大丈夫?」と言葉をかけられても、心配をかけたくないあまりに「大丈夫」としか答えようがないとこっちのけんとさんも動画で指摘しています。
つまり、こっちのけんとさんと同じようなメンタル面の病気を抱える人たちにとっては「ワガママな言葉=ハクナマタタな音=SOS」を出すことが大切と解釈できるでしょう。
2C’:【カラオケ】はいよろこんで / こっちのけんと
ギリギリダンス ギリギリダンス (踊れ)
ギリギリダンス ギリギリダンス (もっと鳴らせ)
ギリギリダンス ギリギリダンス (踊れ)
ギリギリダンス ギリギリダンス (もっと鳴らせ)
慣らせ君の病の町を
隠せ笑える他人のオピニオン
うっちゃれ正義の超人たちを
鳴らせ君の3〜6マス
・・・ーーー・・・『はい喜んであなた方のために』
『出来ることなら出来るとこまで』
『はい謹んであなた方のために』
鳴らせ君の3〜6マス
・・・ーーー・・・【英語】
Get it, get it done Get it, gеt it done (Do your dance)
Get it, get it done Get it, gеt it done (Let me hear you say)
Get it, get it done Get it, gеt it done (Do your dance)
Get it, get it done Get it, gеt it done (Let me hear you say)
Adjust yourself to the city of disease we’re on
Better not care of the others’ opinion
Now you gotta leave the justice and hero
Now I say, give me your heartbeat ringing like
Dit-dit-dit dah-dah-dah Dit-dit-dit『はい喜んであなた方のために』
『出来ることなら出来るとこまで』
『はい謹んであなた方のために』
Now I say, give me your heartbeat ringing like
Dit-dit-dit dah-dah-dah Dit-dit-ditはいよろこんで/作詞:こっちのけんと 作曲:こっちのけんと・GRP
ラスサビは「1番のサビ+アウトロ(Aメロのパンチライン+モールス信号)」という構成。最後のモールス信号が穏やかになっている点に救いが感じられると評判です。SOSを出す習慣が身につくと、メンタルが落ち着きやすくなるのかもしれません。
ただし、どのような病気でも症状は人それぞれ異なるので、必ずかかりつけの医療機関に相談するようにしましょう。
また、世界規模で混乱が生じている時代なので、心から生きやすいと感じている人はなかなかいないのではないでしょうか。大なり小なり誰もが苦労を抱えるなか、我慢しすぎることなく弱さを見せたり助けを求めたり、誰かのギリギリダンスに気づいたりするきっかけになるといいですね。
おわりに:こっちのけんと「はいよろこんで」レコーディング映像
「はいよろこんで」は「苦手」とか「良さがわからない」など好き嫌いは分かれるかもしれませんが、海外でもブレイクした人気の理由はミニマルかつ前のめりなボーカルのリズムとボカロっぽい軽妙なサウンドの組み合わせにあるかもしれません。
アカペラサークル仕込みの歌の上手さ、音域の広さを生かしたコーラスの多様性、歌いたくなる早口ラップ調、踊りたくなるキャッチーなパンチラインはもちろん、アカペラを含むブラックミュージックの要素がローファイかつノスタルジックな雰囲気で散りばめられているところが音楽的におもしろいです。
こっちのけんとさん本人は楽譜が読めず、Logic使いのDTMerとのこと。共作曲にケツメイシなども手がけるプロデューサーのGRP(通称:ごりぴー)さんが加わることで、シリアスな歌詞がおもしろい音楽へと昇華された可能性もあります。
まず「ギリギリダンス」というサビの歌が耳に入り、「こっちのけんとさんとはいったい誰?」となり、家族関係や病気の情報も目にするものの、「英語バージョンもある!コラボもしている!THE FIRST TAKEなどの歌番組、CDTVライブ!ライブ!など地上波テレビの音楽番組にも出演している!」といった流れで驚いた人も多いでしょう。
個人的な事柄をSOSとして発信することで成立した楽曲ですが、悲壮感は漂わず、むしろ大爆笑するほどおもしろい音楽に仕上がっているところが高評価。
そのSOS、モールス信号つながりで、なのるなもないさんとYAMAANさんのコラボアルバム『水月』も併せてどうぞ。
こっちのけんと「もういいよ」MV / PV
代表曲「はいよろこんで」に続く新曲「もういいよ」(2024年10月14日)もYouTubeの人気のミュージックビデオランキングやカラオケにも入っています。