Chihei Hatakeyama(畠山地平)さんのアルバム『Hachirogata Lake』は、心地よく作業を進めたいときや眠れない夜、あるいは音楽の歴史やアンビエント・ドローンの造詣を深めたい人におすすめです。
「Hachirogata Lake(八郎潟)」が鳴らす音 越境するアンビエント Chihei Hatakeyamaインタヴューhttps://t.co/532byqy1uR
— TOKION (@TOKiONjp) November 25, 2023
Contents
はじめに
1978年生まれ、神奈川・藤沢出身、東京を拠点とする電子音楽家(アンビエント・ドローン作家)&マスタリング・レコーディングエンジニア&レーベルWhite Paddy Mountain主宰者(2010年~)Chihei Hatakeyama(畠山地平)さん。
畠山地平(@Chi_hatakeyama_)さんの音楽はドローンやアンビエントと称される中でも、海外を中心に幅広いリスナーを獲得しています。
そんな畠山さんに、音楽のことからパーソナルな部分まで、様々な話を伺いました。https://t.co/V5XnoEB3kw@GearboxRecords@room40speaks @krankyltd
— オーディオテクニカ (@AudioTechnicaJP) July 26, 2023
Minima Moralia
高校時代にスラッシュメタルのコピーバンドを始め(ギター)、大学時代にテクノやドラムンベース(クラブミュージック)を聴くようになり、メインフロアのダンスミュージックより、サブフロアのチルアウト(アンビエント)に魅かれ、チルアウトDJのミックスマスター・モリス(Mixmaster Morris)に衝撃を受け、アンビエント&ポストロック&クラウトロック(ジャーマンロック)のジャム(即興演奏)バンドで活動するようになったそうです。
Sakana Hosomi + Chihei Hatakeyama『Frozen Silence』
今号のサンレコ連載はブライアン・イーノ『Discreet Music』からインスパイアされて、そこから繋がる音楽を取り上げました。先日インタビューしたChihei Hatakeyamaをはじめディスクリートな(控えめで思慮深い)音楽が日常的に鳴っていることに興味がある今日この頃です。https://t.co/YosKjbvOzf
— Masaaki Hara 原 雅明 (@masaakihara) July 28, 2023
Forgotten Hill
クラウトロック、ポストロックにつながるインプロ(即興)、アバンギャルド(前衛音楽)、エクスペリメンタル(実験音楽)、シューゲイザー系では、デレク・ベイリー(Derek Bailey)、ヴェルヴェッツことヴェルヴェット・アンダーグラウンド(The Velvet Underground)、カン(Can)、アシュ・ラ・テンペル(Ash Ra Tempel)、ノイ!(NEU!)、ローレン・コナーズ(Loren Connors)、オーレン・アンバーチ(Oren Ambarchi)、マイブラことマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(My Bloody Valentine)、ケヴィン・シールズ(Kevin Shields)、トータス(Tortoise)、ジム・オルーク(Jim O’Rourke)など。
Late Spring
アンビエント、ドローンにつながるクラシック、現代音楽、ミニマル、エレクトロニカ、グリッチの文脈では、エリック・サティ(Erik Satie)、アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg)、ラ・モンテ・ヤング(La Monte Young)、フィル・ニブロック(Phill Niblock)、ブライアン・イーノ(Brian Eno)、坂本龍一さん、ウィリアム・バシンスキー(William Basinski)、ラファエル・トラル(Rafael Toral)、スターズ・オブ・ザ・リッド(Stars of the Lid)、フェネス(Fennesz)、ボーズ・オブ・カナダ(Boards of Canada)、オヴァル(Oval)、ステファン・マシュー(Stephan Mathieu)、ティム・ヘッカー(Tim Hecker)、グルーパー(Grouper)などの影響も受けたとのこと。
Void XXV
結局バンドではなくソロ(即興演奏&編集)、ボーカルなし&ビートなしのインストがしっくりきたので追求していたら、それがアンビエントやドローンと呼ばれる音楽だったという流れだそうです。
80作を超えるリリースがあり、医師&電子音楽家のTomoyoshi Date(伊達伯欣)さんとのデュオOpitope(オピトープ)、SSW佐立努(Tsutomu Satachi)さんとのデュオLuis Nanook(ルイス・ナヌーク)、アンビエント作家、安河内秀太(Shuta Yasukochi)さんとのデュオCorner Kickersとしても活動しています。
https://twitter.com/Sko_hr/status/1713133969376747707
Life Is Climbing
中原想吉監督によるドキュメンタリー映画『ライフ・イズ・クライミング!』(2023年5月12日、シンカ)の劇伴(OST:Gearbox Records)も手がけました。
chihei hatakeyamaさんの新作「Hachirōgata Lake」も大変良い感じです!https://t.co/JmrAfbbzAn#lifeisclimbing#chiheihatakeyama
— 中原 想吉 (@SokichiNakahara) September 30, 2023
Hachirogata Lake
アルバム『Hachirogata Lake』(八郎潟、2023年9月1日、Field Records)は、全9曲・42分あまり。
【アルバム・レヴュー】なんとも清々しいフィールド・レコーディング。00年代後半以降の日本におけるドローン/アンビエントの牽引者のひとり、畠山地平の新作を紹介します。(by デンシノオト) https://t.co/3vy7KDdv7o
— ele-king (@___ele_king___) October 19, 2023
水の都オランダ・アムステルダムのレーベルField Records(2008年~)からのリリースということもあり、オランダ人技師の協力により干拓事業(1957年~1997年)が行われた秋田・八郎潟でのフィールドレコーディング素材が使われたコンセプチュアルなアンビエント・ドローン作品に仕上がっています。
CHIHEI HATAKEYAMA 『HACHIROGATA LAKE』/ REVIEW
日本のアンビエントプロデューサー、畠山地平さんの最新作をレビューとしてご紹介します。八郎潟のフィールドレコーディングを主体に制作されたアルバム。かなり聞き応えがあります。https://t.co/wBQwvVMocu
— MUSIC TRIBUNE (@MusicTribune2) September 4, 2023
【1】By The Pond
八郎潟は干拓により湖の面積が国内2位から18位に変化し、湖の約8割が陸地になりました(大潟村+八郎潟調整池+東部承水路、西部承水路)。
オープニングを飾る「By The Pond(池のほとり)」は、八郎潟(八郎潟調整池)のほとりを歩く足音から始まります。
鳥、虫、カエルの鳴き声、害獣対策の空砲、草を踏む音が2分あまり展開され、空気感まで伝わってくるというか、どのような環境にいても一気に「池のほとり」に導かれるサウンドです。
-Interview-
畠山地平(@Chi_hatakeyama_)
日本を代表するアンビエントプロデューサー、畠山地平さんのインタビューをご紹介致します。
デビュー当時のこと、アンビエントとの出会い、フットボールへの愛、昨年行われたUK、USツアーまで網羅的にお話を伺っています。https://t.co/UcEhSgFaGN
— MUSIC TRIBUNE (@MusicTribune2) June 12, 2023
【2】Water And Birds
「Water And Birds(水に鳥)」では、まさに「水に鳥」のフィールドレコーディングとシンセのドローンが溶け合います。
リスナー自身が浅瀬を歩いたり、水に触れたり、鳥のさえずる空間に身を置いたりできそうなほど臨場感があり、湖面から立ち上る蒸気霧のような光を想像したくなる美しさです。
Chihei Hatakeyama interview (English/Japanese) + guest mix! http://t.co/57S86NVeUT @Chi_hatakeyama_ pic.twitter.com/guZgrTk0Hx
— Sounds Of Tired City (@tiredcity) March 23, 2015
【3】Lakeside
フィールドレコーディングとシンセのドローンにギターも加わる「Lakeside(湖畔)」は、やはり「湖畔」を歩いている雰囲気です。
目を瞑ってリラックスするもよし、作業しながら聞き流すもよし。
日常に溶け込む環境音楽といえるでしょう。
美しいアンビエント&ドローン作品で世界から高い評価を得ているChihei Hatakeyama氏が #PreSonus #StudioOne へSWITCH!スイッチした理由やマスタリングテクニックを独占インタビューです。https://t.co/GKDGkwQhSk pic.twitter.com/iChz96Q0Y6
— MI7 (@mi7japan) April 26, 2018
【4】Distant View
シンセのドローンが無限の空間の広がりを醸し出す「Distant View(遠景)」。
リスナー自身が存在する環境と八郎潟がつながるだけでなく、異次元の宇宙に誘われるような想像がふくらみます。
Watch a short documentary about Japanese ambient master Chihei Hatakeyama: https://t.co/puuFDyjRwF
Curated by @DevendraBanhart for #LGW18 pic.twitter.com/WGkPgjbS8V
— Le Guess Who? (@LeGuessWho) July 14, 2018
【5】Pier
アナログ盤のA面ラスト「Pier(桟橋)」。
干拓前の八郎潟の南東部に調整池、北東部に東部承水路、北西部に西部承水路が残ったという構造になっていて、釣り場や漁港があるのは川状の東部承水路と西部承水路です。
恐らくそのどちらかの「桟橋」の水の音とシンセのドローンが神秘的に重なります。
【11/22新着】アンビエントというジャンルで、ワンオクや坂本龍一と並んで海外人気の高い畠山地平さんに話を伺いました/Spotify「海外で最も聴かれた日本人ランキング」で10位。Chihei Hatakeyamaが考えるクリエイティブとビジネスの両立【前編】 https://t.co/fYXj57rjr6 @FINDERS_media#FINDERS pic.twitter.com/Yzfm34rmlr
— FINDERS(ファインダーズ)|あなたのシゴトに、新たな視点を。 (@FINDERS_media) November 22, 2018
【6】Twilight
「Twilight(夕暮れ)」では、縦笛パンパイプ(パンフルート)のシンセ音が幽玄に響きます。
アルバムをとおして、空間の移動と共に、時間の移り変わりも感じられるでしょう。
「小さく勝ち続ける」ことの大切さ。 Chihei Hatakeyamaが考えるビジネスとクリエイティブの両立【後編】|(2018) https://t.co/nXN58z7iiH
— FINDERS(ファインダーズ)|あなたのシゴトに、新たな視点を。 (@FINDERS_media) October 26, 2021
【7】Fish Flying In The River
約7分半におよぶ長尺の「Fish Flying In The River(川の魚)」。
「アンビエントはノイズの一種」と考えるChihei Hatakeyamaさんらしい荘厳なシンセドローンが展開されています。
「虫や鳥の鳴き声はミニマル、魚が水面を跳ねる音はグリッチ」と捉えることもできるかもしれません。
八郎潟の干拓による変化、あるいは魚、虫、鳥、人間といった生物の進化に思いを馳せたくなります。
【インタビュー】
Chihei HatakeyamaにXTALが訊く。新作『Late Spring』をめぐる、電子音楽家2人のダイアローグ#ChiheiHatakeyama #XTALhttps://t.co/MjbsZ56tb7 pic.twitter.com/hfIygO8HMS— Mikiki タワーレコードの音楽ガイドメディア (@mikiki_tokyo_jp) April 16, 2021
【8】Lake Swaying In The Wind
「Lake Swaying In The Wind(風と水)」では水の音はもちろん、風の音までサンプリングおよびシンセやギターの残響で表現されています。
「風と水」による大気循環や浄化作用も感じられるのではないでしょうか。
[ NEW #INTERVIEW ] Chihei Hatakeyama( @Chi_hatakeyama_ ,) who released the newest work "Late Spring" from London-based label Gearbox Records, talks about his roots and the background of the new album
▶︎https://t.co/5O5X0LSQcP#LateSpring#ChiheiHatakeyama@HosodaNarushi pic.twitter.com/v2qalRM0dD— TOKION (@TOKiON_jp) June 4, 2021
【9】Insects Chirping At Night
ラストを締めくくる「Insects Chirping At Night(夜の虫)」。
6曲目「Twilight」が「夕暮れ」だったことを踏まえると、時系列的に八郎潟の朝、昼、夜が描かれていたのかもしれません。
「八郎潟への旅を終え、車に乗って帰路に就く」ように、「想像の世界から現実に戻る」ことも「うとうとした果てに眠りに就く」ことも可能でしょう。
[ INTERVIEW Pt.2 ] Chihei Hatakeyama ( @Chi_hatakeyama_ ), who released a new work "Late Spring" from Gearbox Records, talks about the improvisational music scene in Tokyo and the artists who captures his interest now.https://t.co/mTdagpYB6d#ChiheiHatakeyama@HosodaNarushi
— TOKION (@TOKiON_jp) June 8, 2021
おわりに
非常に多作で、重め・暗めのドローン作『Void』シリーズも展開するChihei Hatakeyamaさんとしては、フィールドレコーディングを軸としたコンセプトアルバム『Hachirogata Lake』は異色の部類に入るかもしれません。
ただ、時代の流れのみならず、音楽の進化・深化と共に注目を集めるアンビエント作品として親しみやすく、深淵なドローミュージックへの入り口としても適しているといえるでしょう。
音楽の歴史に精通し、コロナ前から長く深くアンビエント・ドローンを追求している音楽家が、一般的・日常的にも聴きやすく、かつコアな作品を生み出した意義は非常に大きいと考えられます。
長い付き合いの友人でもある畠山地平のショートドキュメンタリーです。彼のライブは、内面の現象もしくは、体験のようであります。音源とライブは、別々にそれぞれ心的空間を生みます。彼のレーベルのリリース作品のアートワークも制作した事があります。是非チェックしてみて下さい。 https://t.co/q2Lg6lz8tf
— nuttsponchon (@nuttsponchon) July 8, 2018
コアなリスナーは、Chihei Hatakeyamaさんがインスパイアされた音楽家たちの片鱗を読み取りつつ、独自の道を歩んでいることに感銘を受けるはず。
水の浄化作用によって、安心して眠れますように!
新たなDJ Mixを作りました。3月のBBCのものと若干似た雰囲気ですが、今回は心地よい睡眠のためのDJ mix というコンセプトで選曲しました。是非寝る前に聴きながら良い夢を…https://t.co/rxkqDbFoXg pic.twitter.com/0q8ZgLcsUX
— chihei hatakeyama (@Chi_hatakeyama_) September 11, 2023
Ambient Session with Chihei Hatakeyama
MIMINOIMI- Ambient / Week – in POLARIS tokyo
出演者:
Chihei HatakeyamaChihei Hatakeyamaとして2006年にKrankyより、ファーストアル バムをリリース。
以後Room40, Home Normal, Own Records, Under The Spire, hibernate, Students Of Decayなど世界中のレ… pic.twitter.com/5iTrnKb8GS— kentaro nagata / ngtkntr (@ngtkntr) September 10, 2023
クリストファー・ウィリッツ『Gravity』
【NEWS】Christopher Willits – Japan Live Performances – October 2023
10/07(土) 岐阜 @大禅寺
w/ Chihei Hatakeyama10/14(土) 東京 @POLARIStokyo1
w/ Chihei Hatakeyamaクリストファー・ウィリッツの2019年以来となる来日が決定致しました。昨年Ghostly… pic.twitter.com/0sLb8QCq86
— PLANCHA (@plancha_92104) September 20, 2023
ウェイン・フェニックス『soaring wayne phoenix story the earth and sky』
【NEWS】多分野にまたがる謎めいたアーティストWayne Phoenixの2020年のデビュー作(オリジナルはHalcyon Veilからリリース)を新たにChihei Hatakeyama がミックスし、SchwebungのStephan Mathieuがマスタリング、さらに6曲を追加したアルバム仕様の新装盤がブルックリンの名門RVNG… pic.twitter.com/5bc8WbLkSo
— PLANCHA (@plancha_92104) July 20, 2023
Maria W Horn & Mats Erlandsson『Celestial Shores』
エクスペリメンタル・ドローンのこちらもどうぞ。
鎌倉でliveします。
2023年10月22日(土)
the dark side of Ailleurs@CafeAilleurs 鎌倉<LIVE>
Chihei Hatakeyama会場:鎌倉 カフェ・アユー
Open 15:00 / Start 16:00
3,000 + D里帰りliveとまでは行かないかもしれませんが、生まれ故郷でliveするの初めてで、嬉しいですね。 pic.twitter.com/3KAtkHB9sf
— chihei hatakeyama (@Chi_hatakeyama_) September 29, 2023
ローレル・ヘイロー『Atlas』
米LAの電子音楽家ローレル・ヘイロー(Laurel Halo)の5年ぶりのアルバム『Atlas』(2023年9月22日、Awe)も話題です。
https://twitter.com/plancha_92104/status/1710884820975555065
リンク
- Wikipedia:Chihei Hatakeyama
- AllMusic:Chihei Hatakeyama、Hachirogata Lake、Field Records、White Paddy Mountain
- Discogs:Chihei Hatakeyama、Hachirogata Lake、Field Records、White Paddy Mountain
- Website:Chihei Hatakeyama、Mastering、Blog
- White Paddy Mountain:Shop
- X(Twitter):Chihei Hatakeyama、Field Records、White Paddy Mountain
- Instagram:Chihei Hatakeyama
- Facebook:Field Records、White Paddy Mountain
- Link:Hachirogata Lake
- YouTube:Chimei Hatakeyama/Topic、Hachirogata Lake、White Paddy Mountain
- Tower Records:Chihei Hatakeyama、Hachirogata Lake/輸入盤LP
- HMV:Chihei Hatakeyama、輸入盤LP
- disk union:Chihei Hatakeyama
- Oven Universe(北海道・札幌):Chihei Hatakeyama、輸入盤LP
- Lighthouse Records(東京・渋谷):Chihei Hatakeyama、輸入盤LP
- OBSCURO(岐阜・高山):Chihei Hatakeyama、輸入盤LP
- Newtone Records(大阪・西心斎橋):Chihei Hatakeyama、輸入盤LP
- Meditations(京都・河原町丸太町):Chihei Hatakeyama、輸入盤LP
- Spotify:Chihei Hatakeyama、Hachirogata Lake
- Apple Music:Chihei Hatakeyama、Hachirogata Lake
- Bandcamp:Chihei Hatakeyama/White Paddy Mountain、Hachirogata Lake、Field Records
- SoundCloud:Chihei Hatakeyama、Field Records、Hachirogata Lake、White Paddy Mountain
- Tumblr:Chihei Hatakeyama、White Paddy Mountain