音楽

CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN(チョコパコチョコキンキン)『tradition』細野晴臣の孫が在籍する3人組バンド

アンビエント沼にどっぷり浸ろうとしたタイミングで、遅ればせながら聴いてしまったCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN(チョコパコチョコキンキン)の1stアルバム『tradition』。
BTSのリーダーRM(キム・ナムジュン)さんがInstagramのストーリーズ(2023年10月25日)で2ndシングル「空とぶ東京」を紹介するなど、国やジャンルといったあらゆる垣根を軽々と越えて話題になっています。

はじめに


東京を拠点とする幼なじみ3人組バンドCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN(チョコパコチョコキンキン)、略称CHO CO PA(チョコパ)またはチョコパコ。

  • 【↑中央↓右】Daido(芝崎大道):作詞、作曲、ボーカル、キーボード(シンセ)、ギター、映像
  • 【左】Yuta(細野悠太):作曲、ベース、三線
  • 【↑右↓中央】So(宮本颯):DJ、マニピュレーター、ギター、サウンドエンジニア


小学4年生で結成、小学5年生で解散、2021年に再結成。
バンド名はキューバ民謡の打楽器コンガの基本的な叩き方(チョ=ヒール:H、コ=トゥ:T、パ=スラップ:S、キン=オープン:O)、トゥンバオの基本的なリズムパターン(HTSTHTOO)に由来するようです。
メンバーのDaido(芝崎大道)さんは、中高時代にドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』(2017年ギャガ)を観てキューバが好きになり、ハバナ大学に短期留学(2021年春に2か月間)。
宗教(サンテリア)やアニミズムを学びながら、キューバの路上でコンガの叩き方を教わったそうです。

ドリアン・コンセプト『What We Do For Others』


Yuta(細野悠太)さんは細野晴臣さんの孫。
ダフト・パンクDaft Punk)、エイフェックス・ツインAphex Twin)、アンダーワールドUnderworld)などのテクノやハウスを好む母の影響を受けつつ、早稲田大学の中南米研究会(中南米音楽)を経て、CHO CO PAとしてはドリアン・コンセプトDorian Concept)を参考にしているそうです。

シャッポ「ふきだし」


さらにYutaさんは2019年に結成された福原音さんとのデュオ、シャッポChappo)としても活動しています。


So(宮本颯)さんが通っていたのは美術系の大学。
メタル系のバンドでライブ活動をしていたものの、コロナ禍で休止状態になり、CHO CO PAが始まったとのこと。

細野晴臣の孫がやってるバンドがヤバいから聴こう


DAWソフトのAbletonエイブルトン)やサンプラーシーケンサーRoland SP-404SXなどを駆使したTikTok動画「都内の路上にて曲を作る」がハズり、みのさんのYouTubeチャンネルみのミュージックやTBSラジオ『金曜JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD』(2023年8月25日ED曲対決:設楽統さん)、ウェブマガジン&ストア幻冬舎plusカワムラユキさん)で紹介され、NHKのアナウンサー杉浦友紀さんがつぶやき、高野寛さんやサカナクション山口一郎さんや槇原敬之さんが注目し、朝霧JAMFRUEといったフェスに出演するなど、各所で注目を集めています。
さらに、テレビ朝日系列の音楽バラエティ番組『関ジャム 完全燃SHOW』の企画「プロが選ぶ2023年マイベスト10曲」(2024年1月14日21日)で川谷絵音さんが4位に「tradition」を選んだり、ケミカル・ブラザーズThe Chemical Brothers)の来日公演2024年2月1日~3日東京ガーデンシアター)でスペシャルゲストDJのジェームズ・ホロイドJames Holroyd)が「空とぶ東京」をかけたり、ますます盛り上がっています。

tradition


1stアルバム『tradition』(デジタル:2023年7月19日、CD・LP:2024年1月17日、CHO CO PA RECORDS)は、先行シングル2曲を含む、全12曲・36分あまり。
CDはボーナストラック「キューバ -Dub Remix-」を含む、全13曲です。
基本的に「Daidoさん:デモ、Yutaさん:アレンジ、Soさん:ミックス」という役割分担。
アレンジが完成した段階で部分的に生音(楽器演奏)に置き換える流れで制作され、4人のサポートメンバーも参加する7人編成になっています。
「電子音楽と(パーカッションを軸とした)生音、民族音楽(民俗音楽=民謡、フォルクローレ)、フェイク・シャーマニズム」の融合が絶妙な傑作です。

  • 山本直親(Naoya Yamamoto):ドラム
  • 筋野優作(Yusaku Sujino):パーカッション
  • ハールン(Ha-run):キーボード、ピアノ
  • Mao(真生):コーラス

【1】秩父


アルバムのために書き下ろされた「秩父」は、埼玉・秩父で毎年12月に開催される秩父神社の例祭、秩父夜祭動画にインスパイアされた、パーカッション中心のインスト。
伝統的な祭囃子が4つ打ちのトランスのように響き、ブレイク後は野太いベースとシンベでファンキーに盛り上がるという粋なお祭りの始まりです。

【Live】秩父@晴れたら空に豆まいて:2023年2月27日

【2】ワタツミ

ぼくを許してよ海の神
もう会えない海の姫
ちょっと貸してよ海の佐知
話を聞いてよ塩椎神

出典:ワタツミ/作詞・作曲:芝崎大道

「カーッ」というビブラスラップの多用がとぼけた雰囲気を醸し出している「ワタツミ」。
その曲名は、日本神話の「山神(ヤマツミ)」に対する「海神(ワタツミ)」のこと。
歌詞には、海幸山幸(うみさちやまさち)神話で、兄の海幸彦から借りた釣り針を失くして困り果てた弟の山幸彦に、海神(ワタツミ)の宮殿・龍宮を訪れるよう助言する「塩椎神(しおつち(の)かみ)」や、海神(ワタツミ)の娘・豊玉姫(トヨタマヒメ)と思われる「海の姫」も登場します。

もう、海坂を上り下り
汀の通り道
波が崩れたら
海に戻るだけ

出典:ワタツミ/作詞・作曲:芝崎大道

ただ、MVのループアニメでは現代的な女性が描かれていて、海神(ワタツミ)の国と人間の国の境界「海坂(うなさか)」や陸と海の境界「(みぎわ)」といった言葉でも表現されているとおり、「リアルとフェイク、伝統と現代、生音と電子音楽」などの融合を目指すメッセージも受け取れるでしょう。

【Live】ワタツミ@朝霧JAM’23

【CM】TOHOKU Relax(春)

【CM】TOHOKU Relax(春)北東北篇 

【CM】TOHOKU Relax(春)南東北篇

【3】キューバ

潮溜まりで、君を見つけたら
珊瑚の広がる、この楽園に
へその緒を沈める
程なく、波に立ち現れる

東に伸びる、島々を梯子して
ヴァイグアを抱えて、海に漕ぎ出す
君は右回りで
ぼくは左から

出典:キューバ/作詞:芝崎大道 作曲:Yuta、芝崎大道

日本の山や海から「キューバ」へ飛んだイメージでしょうか。
確かに「キューバ」(北半球)は「珊瑚(礁)の広がるカリブ(海)」に浮かぶ島国ですが、パプア・ニューギニア(南半球)の島々を円環状に巡る交易クラ(一度入ると生涯属する決まりになっている、航海カヌーのワガを用いる場合は呪術が伴う)で取引される品物「ヴァイグア」(キリヴィラ語)も歌詞に出てきます。
その「ヴァイグア」には時計回り(右回り)に動くソウラヴァ(赤い貝の首飾り)と反時計回り(左回り)に動くムワリ(白い貝の腕輪)の2種類があり、これを「君とぼく」の物語に重ねているようです。
海水から取り残され停滞する「潮溜まり」も詩的な表現で、浮遊感あふれるサウンドも相まって、不思議な想像がふくらみます。

【4】15 Eunomia


15拍子のファンキーなほぼインスト「15 Eunomia」は、秩序を司るギリシア神話の女神に由来する太陽系の小惑星エウノミアをあらわしているようです。
基本的に作詞、作曲、ボーカルはDaidoさんが担当していますが、3曲目「キューバ」はYutaさんが作曲に加わり、4曲目「15 Eunomia」はいったんお蔵入りになったものの復活させたという経緯があり、SoさんとYutaさん2人の作曲になっています。

【5】ガンダーラ

ヒマラヤ山麓、
ネパールのルンビニー
朝が崩れ、昼にもつれ、夜に絡まる

出典:ガンダーラ/作詞:芝崎大道 作曲:Yuta、芝崎大道

曲名の「ガンダーラ」はパキスタンからアフガニスタンにかけて存在した古代王国、歌詞に出てくる「ネパールのルンビニー」は仏教の開祖・釈迦ブッダ)の生誕地。
その生誕地に石柱を建てた古代インドのアショーカ王が仏教を保護、伝道したことにより仏教が普及し、仏教美術ガンダーラ美術も栄えた(歌詞で「ガンダーラ」と韻を踏んでいる「曼荼羅」も仏教美術のひとつ)といったところでしょうか。
ユーモア交じりにスピリチュアルなモチーフを散りばめつつ、音楽や精神世界の根源的な本質に迫るようなおもしろさが感じられます。

【6】空とぶ東京

今晩はうちで、
どこまでも連れてって
今晩はうちで、ぼくを否定して

出典:空とぶ東京/作詞・作曲:芝崎大道

2ndシングル「空とぶ東京」(2023年6月28日)。
YMOの1stシングル「TECHNOPOLIS」(テクノポリス、1979年10月25日、アルファレコード)、沢田研二さんの29thシングル「TOKIO」(1980年1月1日ポリドール)に対する遊び心も感じられるかもしれません、
メロディーはCHO CO PA流J-POP、「フワフワ」の合いの手は70年代ディスコ、リズムはトロピカル、野太いシンベはベースミュージックなど、おもしろい要素がたくさん詰まっています。

【7】アートマン

目を瞑り、耳を立てる
綻んだら、溶けていく
悲しいとき、肌を許す
目が覚めて、色即是空

Ātman ぼくを諦めて
Ātman ぼくを諦める

出典:アートマン/作詞・作曲:芝崎大道

古代インドのバラモン教と後身のヒンドゥー教の聖典ヴェーダにおける究極の悟り「梵我一如」は、「梵」が「ブラフマン=宇宙」、「我」が「アートマン=個人」、ざっくり「宇宙と個人が同一であると知れば自由になる」という考え方です。

数億の仏土、ひとっ飛び
雑踏になり、魔法にかかる
数億の天気を、横っ飛び
雑踏になり、魔法にかかる

出典:アートマン/作詞・作曲:芝崎大道

ただ、歌詞にある「色即是空」は『般若心経』などに出てくる仏教の根本原理、「仏土」(読み:ぶつど、意味:浄土、仏が住む土地、現実世界)も仏教用語、仏教美術のひとつでもある銅鑼も入っています。
エゴ(自我、ワガママ)を手放すと、宗教の違いも含め、さまざまな境界が溶け合うはずと言わんばかりに、ミニマル、アンビエント、4つ打ちのクラブミュージック、中南米音楽などが融合。
ファンキーな合いの手は「無」を表現しているのでしょうか。

【8】tradition

上がっておくんなまし
上がって楽にしてっておくんな

出典:tradition/作詞・作曲:芝崎大道

アルバムのために書き下ろされた表題曲「tradition」。
歌もの楽曲でありながら、伝統的なお祭りとダンスミュージックのパーティーの両方に共通する本質的なハレの世界観が体現され、根源的な音楽の真髄を極めているところが素晴らしいです。
細分化されたジャンルや好みのアーティストのみ追いかける人も多いかと思われますが、ざっくりJ-POP(邦楽)、民族音楽(洋楽)、電子音楽と大別しても、どのリスナーも取りこぼさないクォリティの高さ、おもしろさ。
基本的に踊りのための音楽ではあるものの、リスニング向きの穏やかさも兼ね備えています。
2024年2月には6曲目「空とぶ東京」と「tradition」の2曲がカラオケ(JOYSOUND)に入り、激ムズリズムの「アンミヤッパラーライ」にも各自で挑戦できるようになりました。

【9】Moon Dance

スマートフォンはシャットダウン
ナウ、ダンシングタイム
彼女振り向かせるキュートな
ステップを

出典:Moon Dance/作詞・作曲:芝崎大道

ボツにする予定だったものの、今後は作らないかもしれないタイプの楽曲のため、結局収録したという「Moon Dance」。
作詞、作曲はDaidoさんですが、ボーカルはサポートメンバーのMao(真生)さんが務めています。

月面で
スーパーナチュラルムーンダンス
デカいスピーカー担いで
木星美女とサルサ踊る
火星からレゲトンが聞こえる
コンガのリズムがクレバスに響く
レゴリスが足に絡みつく

出典:Moon Dance/作詞・作曲:芝崎大道

「スマホを閉じて、クレバス(深い割れ目)やレゴリス(堆積層)のある月面に飛び、中南米音楽のサルサレゲトン、コンガのリズムで踊ろう」という「キュート」な楽曲です。

【10】花様年華

起こさない 起こさない
夢を見てるの
フクロウだけが起きている夜
ベッドに入っても 君を想うよ
嘘をふかし恋するムービースター

少年は見た、恋するムービースター
少年が見た、恋するムービースター

出典:花様年華/作詞・作曲:芝崎大道

1stシングル「花様年華」(読み:かようねんか、意味:花のように美しく輝く歳月=青春時代、2023年6月7日)は、ウォン・カーワイ王家衛)監督の同名映画2000年)がモチーフ。
かつて香港の恋愛映画を観た少年が大人になり、「恋する惑星」ならぬ「恋するムービースター=トニー・レオン」に自らを重ね、東京で淡い恋をするようなイメージでしょうか。

2人の恋は息を呑む一瞬
2人の恋は声も出せぬほどに
2人の恋は何も知らなくて
2人の恋は火花散る幻想

出典:花様年華/作詞・作曲:芝崎大道

「J-POPらしいメロディー」と「シンセドローンエキゾチカっぽいサウンド」の恋(融合)も「火花散る幻想」なのかもしれません。

【11】Quarantine Mood

今晩はうちで
いままでのぼくを否定して欲しいよ

出典:Quarantine Mood/作詞・作曲:芝崎大道

音数の少ない(シェイカースティールパン)ギターの弾き語り「Quarantine Mood」(読み:クアランティン・ムード、意味:隔離気分)。

冗談に近く共振するふたり
今晩は家でふたりの理屈で動き出すかも

出典:Quarantine Mood/作詞・作曲:芝崎大道

歌詞は6曲目「空とぶ東京」とも「共振」しているようです。
自虐的な引きこもり男性のラブソングのようでもあり、CHO CO PAが新型コロナによる隔離生活を機に再結成された経緯を読み取ることもできるかもしれません。

【12】琉球 Boogie Woogie


沖縄民謡(琉球民謡)のカチャーシー(踊り)曲(三線の速弾き曲)「唐船ドーイとうしんドーイ)」(伝統芸能エイサーのトリの定番)や「イヤササ(ハイヤ)」の掛け声(囃子、フェーシ、ヘーシ)、スウィング(シャッフル)の跳ねるリズムのブギウギ笠置シヅ子さんの「東京ブギウギ」(1948年1月日本コロムビア)を彷彿とさせる「琉球 Boogie Woogie」。
ボツ予定だった際に9曲目「Moon Dance」の歌詞のみ転用したとのことで、2曲の歌詞は同じです。
細野晴臣さん自身がチャンキー・サウンドチャンキー・ミュージックガンボちゃんこ鍋+ファンキー=ごった煮音楽)と称したトロピカル3部作(2ndアルバム『トロピカル・ダンディー1975年6月25日PANAMCROWN、3rdアルバム『泰安洋行1976年7月25日・PANAM ⁄ CROWN、4thアルバム『はらいそ1978年4月25日・アルファレコード)の影響が感じられます。

おわりに

これほど音楽性が高いのに、徹底的にエゴが抑えられ、自己満足に陥っていないため、一般的にも聴きやすいところがCHO CO PAの魅力でしょう。
1stアルバムにして大傑作。
遊び心にあふれた職人技が世界を席巻するのは時間の問題かと思われます。

サム・ゲンデル&マルセラ・シトリノウィッツ『AUDIOBOOK』


CHO CO PAの遊び心はルイス・コールLouis Cole)やクラウン・コアClown Core)の影響もあるそうなので、その流れでサム・ゲンデルマルセラ・シトリノウィッツSam Gendel & Marcella Cytrynowicz)のアルバム『AUDIOBOOK』(2023年10月6日、Psychic Hotline / p*disInpartmaint)にもつながるでしょう。

Isabel Del Bosco『Motifs Des Prés』


どっぷり浸ろうとしているアンビエント沼はこの辺りということで、アルゼンチン・ブエノスアイレスのアンビエント作家Isabel Del Boscoのアルバム『Motifs Des Prés』(2023年10月28日、Isabel Del Bosco / Hidden Harmony Recordings)もどうぞ。

スザンヌ・チアニ&ジョナサン・フィトゥシ『Golden Apples of the Sun』


米インディアナ出身のレジェンド電子音楽家スザンヌ・チアニSuzanne Ciani)と仏パリの電子音楽家ジョナサン・フィトゥシJonathan Fitoussi)のコラボアルバム『Golden Apples of the Sun』(2023年10月6日ObliquesTransversales Disques / Atmospheric)もぜひ!

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