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Creepy Nuts「オトノケ」歌詞の意味を解説!TVアニメ『ダンダダン』主題歌、元ネタやサンプリングも考察

Creepy Nuts『オトノケ』CDジャケット

Creepy Nuts(クリーピー・ナッツ)の16thシングル『オトノケ』(Otonoke)はTVアニメ『ダンダダン』のオープニングテーマとして書き下ろされました。そのタイトル曲「オトノケ」の歌詞の意味、元ネタ、サンプリング、MVについて解説、考察します。

Creepy Nuts「オトノケ」ミュージックビデオ・MV・PV・YouTube動画


映像クリエーターMasaki Watanabeさんが手がけたMVは、フェナキストスコープ(驚き盤)という映像表現などにより、まさに「Creepy Nuts曼荼羅(マンダラ)」といった世界観に仕上がっています。

Creepy Nuts「オトノケ」 × TV アニメ『ダンダダン』Collaboration Music Video


Creepy Nuts「オトノケ」 とTV アニメ『ダンダダン』のコラボMVでは、原作・第13話(2021年6月29日配信)およびTV アニメ・第6話「ヤベー女がきた」(2024年11月7日放送)から登場した都市伝説由来の妖怪(赤いワンピースの女)アクロバティックさらさら(アクさら、CV:井上喜久子さん)の姿にも注目が集まっています。
https://twitter.com/anime_dandadan/status/1853739042594238942

TVアニメ『ダンダダン』オープニング映像|Creepy Nuts「オトノケ」


特撮TVドラマ『ウルトラマン』シリーズなど、円谷プロダクションが制作した作品へのオマージュが散りばめられた、TVアニメ『ダンダダン』のオープニング映像。円谷プロ作品の影響を受けた演出はアニメ本編にも多数盛り込まれています。

サイエンスSARU共同創設者・湯浅政明監督のTVアニメ『ケモノヅメ』(WOWOW)のオープニング映像も彷彿とさせます。

TV アニメ『ダンダダン』の概要


山代風我(やましろふうが)監督(アニメーション制作:サイエンスSARU)によるMBS/TBS系のTVアニメ『ダンダダン』(DAN DADAN、2024年10月3日〜)は、マンガ誌アプリ『少年ジャンプ+』(集英社)で連載中(2021年4月6日〜)の龍幸伸(たつゆきのぶ)さんの同名漫画を原作としたオカルティックバトル&青春物語

女子高生モモ(綾瀬桃、CV:若山詩音さん)は幽霊の存在を信じていますが、宇宙人の存在は信じていません。それにもかかわらずセルポ星人(CV:中井和哉さん)に誘拐され、超能力に目覚めます(セルポ星人:60年代アメリカの都市伝説的な極秘計画プロジェクト・セルポを元ネタとした宇宙人)。同居家族は霊媒師の祖母・星子(綾瀬星子、ドドリア三太、CV:水樹奈々さん)。

オカルトマニアの男子高校生オカルン(高倉健、CV:花江夏樹さん)は宇宙人の存在を信じていますが、幽霊の存在は信じていません。それにもかかわらず都市伝説「ターボばあちゃん」を元ネタとした妖怪ターボババア(CV:田中真弓さん)に呪われますが、その呪いの力を利用して変身し、ターボババア由来の超人的な力を発揮します。

ギャルのモモとオタクのオカルンがさまざまな怪異と対峙する怪奇バトルにラブコメ的な青春物語も加わり、オカルト、バトル、青春、笑いの融合が見どころになっています。


『ダンダダン』というタイトルについては、原作・第163話「間に合え救出!!」(2024年7月30日配信)でタイトル回収の伏線が張られました。どうやらタイトルには深い意味があり、曼荼羅(マンダラ)と関係しているようです。
https://twitter.com/shonenjump_plus/status/1818054898992501188

Creepy Nuts「オトノケ」歌詞の意味を解説

DJ松永:「この世界に無い曲作ったぞ」と思えた時が、曲作りに最も手応えを感じる瞬間なのですが、オトノケは正しくそれです!作れて良かった!

R-指定:怪異や霊が人に憑依する時“痛みや悲しみに共鳴して結び着く”というこの作品の解釈が、自分の考える音楽の作り手と聴き手の関係にすごく似ているなと思い筆を走らせました。

出典:https://anime-dandadan.com/news/149/

  • 配信リリース:2024年10月4日
  • CD発売日:2024年12月11日
  • レーベル:onenation・SMAR・Sony Music Labels
  • 1番:Aメロ(バース)~Bメロ(ブリッジ)~サビ・Cメロ(フック)
  • 2番:Aメロ(バース)~Bメロ(ブリッジ)~サビ・Cメロ(フック)

1A:ダンダダンのリズムで韻を踏みまくる

ダンダダンダンダダンダンダダンダンダダン…

諦めの悪い輩
アンタらなんかじゃ束なっても敵わん
くわばらくわばらくわばら目にも止まらん速さ
くたばらん黙らん下がらん押し通す我儘
そこどきな邪魔だ 俺はもう1人の貴方
貞ちゃん伽椰ちゃんわんさか黄泉の国wonderland
御祈祷中に何だが4時44分まわったら
四尺四寸四分様がカミナッチャbang around
呼ぶ声がしたんなら 文字通りお憑かれさまやん…

オトノケ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永

「オトノケ」という曲名の元ネタは、匿名掲示板2ちゃんねる(通称・略称:2ch、現:5ちゃんねる)のオカルト板のスレッド「洒落怖」(しゃれこわ)こと「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」に投稿された都市伝説的な怪談「ヤマノケ」。

怨霊(おんりょう)などの霊や妖怪などの怪異を意味する物の怪(もののけ)から山の怪(ヤマノケ)、音の怪(オトノケ)という造語に発展したことになります。

「霊や怪異は念(思い)に共鳴して人間に取り憑く」という『ダンダダン』の解釈と、「作り手の死後も残る念のような音楽によって、作り手は聴き手を通じて死後も再生できるかもしれない」といったR-指定さんの考え方が重なりました。

『anan web』のインタビューによると、Creepy Nutsの曲作りは基本的に曲先(作曲→作詞)ですが、「オトノケ」は珍しく詞先(作詞→作曲)だったとのこと。そのアカペラの段階で冒頭の「ダンダダン」の連呼は出来上がっていたそうです。

言語を超越した根源的なリズム(1.5拍のポリリズム)「ダンダダン」で始まり、母音「アンアアン」の韻で最後まで貫くという、まさに音の妖怪「オトノケ」と化した楽曲。このリズムと韻をルーズに崩したところ、あえて外したところを挙げるほうが早いくらいです。

アニメのタイトルと関連するかもしれない曼荼羅(マンダラ)の母音も「アンアア」なので、これもタイトルを少し崩したルーズな韻といえるかもしれません。

一方「オトノケ」の歌詞「ダンダダン」は言葉の意味を超越したリズムとのことですが、そこから派生した韻にはしっかり意味が込められているので、まずは1番Aメロに相当するバースの意味から見ていきましょう。

「諦めの悪い輩(やから)=霊や怪異」に取り憑かれたくないので「御祈祷中(ごきとうちゅう)」の人間。ところが「オトノケ=音の妖怪」と化したR-指定さんは輩(霊や怪異)をどかして音楽の聴き手(リスナー)に取り憑いたようです。

相手をディスる(批判する)というより、フレックス(Flex)やセルフボースト(Selfboast)、つまり自分を誇る、自慢する系のラップになっています。

「ダンダダン」の韻とリズムの連発だけでなく、「押し通す→御祈祷中」「黄泉(よみ)→4時(よじ)」「四分(よんぶ)→呼ぶ(よぶ)」でも韻を踏むなど、細かい仕掛けも盛りだくさん。

DJ松永さんが「Rさんのリリックは宝探しみたいなもんですよ」とポストしたとおり、リリック(歌詞)でもさまざまな作品をサンプリングしているというか、オマージュやパロディだらけで元ネタの考察が白熱しています。

2ch「洒落怖」の「ヤマノケ」のようにR-指定さんが公言したものからリスナーによる考察止まりのものまで、元ネタ・元ネタ候補をまとめました。

くわばらくわばら」は雷除け、魔除けの呪文。学問の神様・菅原道真公は死後の清涼殿落雷事件などにより、平将門公、崇徳天皇と並ぶ日本三大怨霊のひとりとされていますが、かつての領地・京都市中京区桑原町には雷が落ちなかったことに由来するという説があります。

学者・政治家の菅原道真公は、『古今和歌集』や『小倉百人一首』に収められている「此の度は 幣も取り敢へず 手向山 紅葉の錦 神の随に」(このたびは ぬさもとりあえず たむけやま もみじのにしき かみのまにまに)などの和歌や漢詩も手がけました

俺はもう1人の貴方」の対象となる「貴方」は詩人かつ怨霊の菅原道真公のほか、怪異、人間、リスナーにも当てはまる感じがします。あるいは超常現象のドッペルゲンガー(自己像幻視)的な意味合いも含まれるかもしれません。

貞(さだ)ちゃん伽椰(かや)ちゃん」はホラー小説・映画『リング』シリーズの山村貞子(やまむらさだこ)とホラービデオ・映画『呪怨』(じゅおん)シリーズの佐伯伽椰子(さえきかやこ)のこと。

いずれも架空の登場人物ですが、怪物化した死者や怨霊として描かれています。佐伯伽椰子の奇声「ア、ア、ア……」と「ダンダダン」の母音「アンアアン」の関連性については不明です。

その『リング』と『呪怨』のクロスオーバー映画『貞子vs伽椰子』の「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ!」というセリフが『ダンダダン』のオカルンの設定(呪いの力を利用して変身し、怪異と戦う)を決定づけたことは龍幸伸さんにより公言されています。

黄泉の国」(よみのくに)は歴史書『古事記』の神話などに由来する「死者の世界」の概念。横山光輝さんの漫画(連載『週刊少年チャンピオン』秋田書店)およびアニメ『バビル2世』に登場した悪の帝王・ヨミも連想できるでしょうか。

wonderland」(ワンダーランド)の意味は「不思議の国、おとぎの国」。ルイス・キャロルの児童書『不思議の国のアリス』の原題は『Alice’s Adventures in Wonderland』。ニコラス・ケイジ主演のアクション・コメディ・ホラー映画『ウィリーズ・ワンダーランド』の原題は『Willy’s Wonderland』です。

4時44分」の元ネタは都市伝説の一種「学校の怪談」の「ヨジババ」。「四尺四寸四分様」(よんしゃくよんすんよんぶさま)の意味は「身長168.2cmのR-指定様」。元ネタは2ch「洒落怖」の「八尺様」(はっしゃくさま)。

カミナッチャ」(Comi′at ya←Coming at you)はヒップホップ用語・スラングで「お前のところにやってくる、襲いかかる」という意味。「bang around」(バング・アラウンド→バンガラウン)の意味は「バンバン叩く」。

お憑かれさま」は「疲れる」と「憑かれる」のダブルミーニング、元ネタは2ch「洒落怖」。島田英次郎さんのギャグ漫画『お憑かれさん』(連載『マガジンSPECIAL』講談社)も連想できるかもしれません。

Billy Murray「I’ve Been Floating Down the Old Green River」


リリックに続いてトラックのサンプリングについても見ていきましょう。

Creepy Nuts がオープニングのピクミン風サウンドに使用したサンプル音源を見つけて、この短いビデオを作りました」とReddit(レディット)に投稿したのは『ダンダダン』ファンのDankidyDanさん(2024年11月2日)。

https://twitter.com/MomoAyasee/status/1852761015051509997
その投稿によると、サンプリングの元ネタはBilly Murray(ビリー・マレイ)「I’ve Been Floating Down the Old Green River」(1915年3月11日録音、1916年リリース、Victor Records)。ボーカルチョップ(ボーカルカットアップ)&早送り(再生速度とピッチをアップ)のサンプリング手法が用いられています。

DJ松永さん自身「オトノケのトラックってピクミンっぽいの?笑」とポストしており、DankidyDanさんの投稿によって任天堂(Nintendo)のゲーム『ピクミン』(Pikmin)の声をサンプリングしたのではないことが証明されました。

カリフォルニア大学サンタバーバラ校図書館のサイト「UCSB Cylinder Audio Archive」は、100年前の蝋管(Wax cylinder)音源を著作権フリーで公開しているので、もしかしたらこの辺りを利用したのかもしれません。

Eminem「Godzilla (feat. Juice WRLD)」


Aメロに相当するバースは、Eminem(エミネム)の11thアルバム『Music to Be Murdered By』(2020年1月17日、Shady・Aftermath・Interscope)からのシングルカット「Godzilla (feat. Juice WRLD)」(2020年1月31日)のサンプリング、早口ラップへのオマージュと考えられます。

5つ打ちビートのジャージークラブベッドのきしみ音についてはCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の記事で詳しく解説し、宇多田ヒカルさん「Gold ~また逢う日まで~」、MILLENNIUM PARADE「GOLDENWEEK」の記事でも触れているので、併せてご覧ください。

1B:人間に入れた怪異の喜びと悲しみ

ハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタ
必死で這い出た先で霧は晴れた
デコとボコが上手く噛み合ったら
痛みが重なったら

オトノケ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永

ハイレタハイレタ」は2ch「洒落怖」由来の都市伝説的な怪異「ヤマノケ」が少女に取り憑いたときにつぶやく言葉。曲名の由来になった怪談です。ここではオトノケと化したR-指定さんがリスナーに取り憑いたイメージでしょう。

一転して爽やかなメロディー、J-POPの定番コード進行、いわゆる丸サ進行(4361進行)になりますが、怪異が人間の中に入れた喜びだけでなく、思いが果たされた後は成仏するしかない悲しさや寂しさも表現されたサウンドが秀逸です。

」はスティーヴン・キングの小説『』を原作とした映画『ミスト』を連想できるでしょうか。

デコとボコ」(凸と凹)は「怪異と人間」や「音楽の作り手と聴き手」のほか、「オカルンとモモ」や「R-指定さんとDJ松永さん」、あるいは「ラップとボーカル」や「いかついバースと爽やかなサビ」なども当てはまりそうです。

オカルト好きのR-指定さんとホラーが怖いDJ松永さんの凸凹コンビだからこそ、「オトノケ」はさまざまなランキングを席巻するほど幅広いリスナーに刺さったとも考えられます。

1C:キャッチ―かつエモーショナルなサビ

ココロカラダアタマ
みなぎってゆく何だか
背中に今羽が生えたならば
暗闇からおさらば
飛び立っていく彼方
ココロカラダアタマ
懐かしい暖かさ
足元に今花が咲いたならば
暗闇からおさらば
飛び立っていく彼方
何度だって生きる
お前や君の中
瞼の裏や耳の中
胸の奥に居着いてるメロディー、リズムに
ダンダダンダンダダンダンダダンダンダダン…

オトノケ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永

便宜上、1番Bメロ(ブリッジ)としたパートからすでにサビ(フック、コーラス)のような華やかさがあり、この1番Cメロ・サビではコード進行がいわゆる小室進行(6451進行)になります。

結局「ハイレタ~、ココロ~×2、何度だって~、ダンダダン~」と何重にもサビを畳みかけるようなゴージャスぶり。

人間の痛みや悲しみに共鳴して取り憑いた怪異の念(思い)が、メロディーやリズムといった音楽と化して成仏する喜びと切なさに昇華されています。リスナーはまさに「心の穴を音楽が埋める充足感」で満たされるでしょう。

MOROHA「革命」


サビ、間奏、アウトロのギターリフは、アコギとラップのデュオ・MOROHA(モロハ)の「革命」を彷彿とさせるという声もあります。

Aメロの以外のBメロでもギターが入っていますが、このギターアレンジとギター演奏を担当したのはSANABAGUN.(サナバガン)の磯貝一樹(Kazuki Isogai)さん。

「革命」はMOROHAの2ndアルバム『MOROHA Ⅱ』(2013年11月6日、ROSE RECORDS)の収録曲、ベストアルバム『MOROHA BEST~十年再録~』(2018年6月6日、UNIVERSAL SIGMA)のリード曲です。

2A:ホラー作品やジャンプ作品のサンプリングだらけ

今日も賽の河原ど真ん中
積み上げてくtop of top
鬼とチャンバラ
the lyrical chainsaw massacre
渡る大海原
鼻歌singin’ sha-la-la
祓いたいのなら末代までの札束(okay?)
誰が開いたか禁(パン)后(ドラ) 後は何があっても知らんがな
何百年待ったか超久しぶりの娑婆だ
ガキや若葉
まだコッチ来んじゃねーよバカが
今確かに目が合ったな
こーゆーことかよ…シャマラン…

オトノケ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永

2番のリリックでは、1番の都市伝説的な怪異などに加え、多数のホラー作品やジャンプ作品がサンプリングされています。引き続き、元ネタ・元ネタ候補を見ていきましょう。

賽の河原」(さいのかわら)は民間信仰で此岸(しがん、この世)と彼岸(ひがん、あの世)の境にあるとされる「三途川(さんずのかわ)の河原」のこと。Creepy Nuts「バレる!」の歌詞にも「三途の川、積み上げては、賽の河原」が出てきます。

亡くなった子どもが親の供養のために石を積む場所ですが、必ず鬼が来て壊すので石の塔は完成せず、供養になりません。そのため「報われない努力」の意味で用いられることもあります。元ネタはジャンプ作品『シャーマンキング』と『地獄先生ぬ〜べ〜』。

積み上げてく」は和風ホラーゲーム『石積み』(Stone Stacking、ふりーむ!)、「top of top」はCreepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の歌詞「To the next, To the 1番上」から、主題歌となったTVアニメ『マッシュル-MASHLE-』(原作はジャンプ作品)を連想できます。

ヒンドゥー教や仏教の理想郷シャンバラと韻を踏みつつ、真逆の意味になる「鬼とチャンバラ」(刀での斬り合い)の元ネタはジャンプ作品『鬼滅の刃』、山田悠介さんのホラー小説『リアル鬼ごっこ』。

the lyrical chainsaw massacre」(ザ・リリカル・チェーンソー・マサカー)はアメリカのホラー映画『悪魔のいけにえ』の原題『The Texas Chain Saw Massacre』(ザ・テキサス・チェーンソー・マサカー)をもじったのでしょう。

その映画『悪魔のいけにえ』の影響を受けたという藤本タツキさんの漫画(龍幸伸さんがアシスタントを務めたジャンプ作品)『チェンソーマン』も連想できます。ただし、大虐殺のごとく斬りまくる武器は刀でもチェーンソーでもなくリリック。

渡る大海原(おおうなばら)」の元ネタはアメリカのサバイバル・スリラー映画『オープン・ウォーター』、『橋田壽賀子ドラマ 渡る世間は鬼ばかり』、ジャンプ作品『ONE PIECE』(ワンピース)。R-指定さんは鬼ばかりの三途川どころか大海原まで渡ります。しかも鼻歌を歌いながら。

その「鼻歌」の元ネタは清水崇監督のホラー映画『ミンナのウタ』。「sha-la-la」(シャララ)はスキャット(意味のない歌唱)。いきものがかり「ホタルノヒカリ」の歌詞「SHA LA LA」から、オープニングテーマとなったTVアニメ『NARUTO -ナルト- 疾風伝』(原作はジャンプ作品)を連想できます。

「リリックで斬る」と大見得を切ったので、政治や社会問題をディスるギャングスタラップのように「世相を斬る」のかと思いきや、意味のないスキャットの鼻歌を歌っています。つまり「ダンダダン」も「シャララ」のようなスキャットなのかもしれません。「歌詞の意味」ではなく「歌詞のメロディーやリズム」で斬るということ。

祓(はら)いたいのなら」の元ネタはアメリカのホラー映画『エクソシスト』(原題:The Exorcist、意味:悪魔払いの祈祷師)、ジャンプ作品『呪術廻戦』。

末代までの札束」はジャンプ作品ということで『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンド・ミラグロマンや『HUNTER×HUNTER』のアイテム・ハンターライセンスを連想するリスナーもいるようです。

禁后(パンドラ)」はギリシャ神話に登場する人類最初の女性。神々から授かった禁断の箱を開けたため、人類に災いをもたらしたといういわれがあります。「呪いを祓う」と「お金(札束)を払う」のダブルミーニングで「金→禁」とつなげたのかもしれません。元ネタはホラー系サイト(2009年)および2ch「洒落怖」、ジャンプ作品『遊☆戯☆王』の登場人物・奇術師パンドラ。

娑婆」(しゃば)は仏教用語で「この世」(此岸、現世)、仏教用語以外では「自由な世界」のこと。「何百年待ったか超久しぶりの娑婆だ」はジャンプ作品『ジョジョの奇妙な冒険』の登場人物・DIO(ディオ・ブランドー)の「100年後の目覚め」を彷彿とさせます。

1番Aメロの「貞ちゃん伽椰ちゃん」、サビの「お前や君」のように「ガキや若葉」でほぼ同じ意味の言葉を並べたのは、「若葉」から「目が合ったな(芽があったな)」につなげるためかもしれません。あるいは「ガキや若葉」の元ネタはジャンプ作品『逃げ上手の若君』という考察もあります。

シャマラン」はミステリー映画『シックス・センス』やSFホラー映画『サイン』などを手がけたインド系アメリカ人の映画監督M. Night Shyamalan(M・ナイト・シャマラン)。

「ダンダダン」や「sha-la-la」はもちろん、「賽の河原」の元ネタと思われるジャンプ作品『シャーマンキング』ともルーズに韻を踏んでいるのかもしれません。

そのM・ナイト・シャマラン監督のサスペンス映画『アンブレイカブル』(Unbreakable)から、ジャンプ作品『僕のヒーローアカデミア』の登場人物・切島鋭児郎(きりしまえいじろう)の必殺技・安無嶺過武瑠(あんぶれいかぶる)を連想できそうです。

M・ナイト・シャマラン監督作品ということで「まだコッチ来んじゃねーよバカが」の元ネタは謎の集団自殺を扱ったサスペンス映画『ハプニング』、娘のイシャナ・ナイト・シャマラン初監督作品ということで「今確かに目が合ったな」の元ネタは覗き見ホラー映画『ザ・ウォッチャーズ』。

「バカが」の語気が荒いので一瞬「怖!」と驚きますが、「賽の河原」の伏線を「ガキ」で回収し、子どもや若者に「死ぬな!」と活を入れたのでしょう。「オトノケと化したR-指定様には誰も叶わないから、こっちに来るな」というフレックス(自慢)も込めつつ、ギャップ萌え必至な優しすぎるパンチラインになっています。

2B:パンチラインの伏線も回収

ハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタ
眠り飽きた先で君が待ってた
盾と矛が肩を抱き合ったら
怒りが消え去ったら

オトノケ/作詞:R-指定 作曲:DJ松永

盾と矛」(たてとほこ)は中国の思想書『韓非子』に出てくる故事。元ネタはジャンプ作品『願いのアストロ』。1番Bメロの「デコとボコ」に呼応するだけでなく、2番Aメロの「鬼とチャンバラ」から連想される時代劇の格闘シーン「殺陣」(たて)にもかかっているかもしれません。

「眠り」と韻を踏む「怒り」が消え去るためには、いったん怒る必要があったので「バカが」の語気が荒かったのかと逆算することもできそうです。

最後に爽やかなサビが繰り返され、根源的なリズム「ダンダダン」で締めくくられます。リリックもトラックもまさに「オトノケ」という大傑作でした。

おわりに

そもそもCreepy Nutsというユニット名にはスラングで「奇妙な○○」という意味があり、その○○は『ダンダダン』のモチーフにもなっています。これは偶然の一致のはずですが、オカルトと笑いのブレンド具合が絶妙にマッチしたシンクロニシティ的タイアップといえるかもしれません。

列挙した元ネタ・元ネタ候補には、R-指定さんが意図したものが入っておらず、R-指定さんが意図しなかったものが入っている可能性もあります。そこまで含めて都市伝説的な怪異として楽しんでいただけたら幸いです

2025年2月11日には初の東京ドームライブ『Creepy Nuts LIVE at TOKYO DOME』を開催し、新作アルバムも制作中というCreepy Nuts。「Bling-Bang-Bang-Born」や「オトノケ」でYouTube動画の再生回数やカラオケ人気、歌ってみた・踊ってみたなどのダンス動画も最高潮に達したかと思われますが、まだまだのびしろしかないことでしょう

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渡辺和歌
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