多弦ギタリスト、ファビアーノ・ド・ナシメント(Fabiano do Nascimento)の静かなる傑作!
ブラジル音楽、ジャズ、フュージョン、クラシック、フォーク、アンビエント(環境音楽)、ニューエイジ、エクスペリメンタル(実験音楽)などの要素を内包する、レトロフューチャーなユニバーサル・ミュージック『Mundo Solo』を堪能しましょう。
独自進化を遂げるLA経由のブラジリアンフュージョンの最新果実。Pedro Martinsと並ぶ敏腕ギタリストが単身スタジオに籠り奏でるチルな抒情インスト掌編集。来年1月リリースのサム・ゲンデルとの共作も楽しみ。#blkswnjukebox
【#1578】Fabiano do Nascimento – Mundo Solohttps://t.co/UBG2uIRumF pic.twitter.com/jMxoP84ET4
— 黒鳥社 / blkswn (@blkswn_tokyo) November 27, 2023
Contents
はじめに
当サイトでもおなじみ、ブラジル・リオ出身、米LAの多弦ギタリスト&作曲家&プロデューサー、ファビアーノ・ド・ナシメント(Fabiano do Nascimento)。
✨ OUT NOW ✨ Brazilian guitarist and composer Fabiano Do Nascimento's new album Mundo Solo is out today!
Listen / buy ~ https://t.co/WthLBxM5U8 pic.twitter.com/mC8KNE56FK
— Far Out Recordings (@FarOutRecs) November 24, 2023
Mundo Solo
これまでに紹介した日本オリジナル企画盤『Rio Bonito』(2022年12月7日、rings)や7thアルバム『Das Nuvens』(2023年7月21日、Leaving Records / PLANCHA)に続く、8thアルバム『Mundo Solo』(2023年11月24日:Far Out Recordings、輸入盤・国内流通仕様CD、2023年12月13日:Unimusic・diskunion)は、先行シングル2曲を含む、全15曲・47分あまり。
コロナ時代に突入した2020年に、LAの自宅スタジオで録音されました。
「ソロ(一人)の世界」という意味のアルバムタイトルどおり、3人のゲストを迎え、多少のオーバーダブ(重ね録り)もありつつ、基本的には一人で複数の楽器を演奏しながらの一発録り。
「孤独な隔離生活」というニュアンスも重ねられているでしょう。
静謐なひとときが似合う控えめな作品ですが、ファビアーノ・ド・ナシメントの多才ぶりが遺憾なく発揮されています。
Reviews: Fabiano do Nascimento – Mundo Solo @FarOutRecs https://t.co/tvyYi3m9F8 pic.twitter.com/8mQjrya8v1
— Greg Fenton (@greg_fenton) November 21, 2023
- 左→右:10弦ギター、ソプラノギター、7弦ギター
クレジット
- ファビアーノ・ド・ナシメント:作曲(M1~5・8~15)、6弦ギター、7弦ギター、ソプラノギター(Oktav guitar)、10弦ギター、バリトンギター(エレキ)、ベース、電子パーカッション、シンセサイザー、ペダル
- ゲイブ・ノエル(Gabe Noel):ベース(M2)
- ジュリアン・カンテルム(Julien Cantelm):ドラム(M6)
- アジュリナン・ズヴァルギ(Ajurinã Zwarg):パーカッション(M11)
https://twitter.com/musicletter/status/1725247772402516329
【1】Abertura
ナイロン弦のクラシックギターとミニマルなシンセが絶妙に交錯し、幻想的なきらめきを生み出している「Abertura」(意味:オープニング)。
実音の1オクターブ上などの倍音を響かせるハーモニクス奏法(倍音奏法)は、大まかに自然ハーモニクス(ナチュラルハーモニクス)と人工ハーモニクス(アーティフィシャルハーモニクス)の2種類があり、人工ハーモニクスのなかでもピッチハーモニクス(ピッキングハーモニクス)やタッピングハーモニクス(タッチハーモニクス)などがあります。
さらにファビアーノ・ド・ナシメントはElectro-Harmonix Pitch Forkなどのペダルも駆使してハーモニクス(倍音)を響かせています。
【2】Curumim 2
4thアルバム『Ykytu』(2021年9月24日、Now-Again Records)収録曲「Curumim」(意味:子供、シングル:2021年8月26日)の新たなバージョン「Curumim 2」。
LAの音楽家ゲイブ・ノエルが低音ベースを響かせ、リバーブの効いたギターや遊び心のある電子パーカッションなどのエレクトロニクスを引き立てています。
Curumim
【3】Paperstrings
「Paperstrings」はギターの弦に紙を挟んでブリッジミュートする奏法をあらわしているでしょうか。
「Curumim 2」のリバーブ(残響)とは対照的に、ブンブンとミュート(消音)する響きを堪能できます。
【4】Agua de Estrellas
「シェイカーっぽいパーカッションサウンド、穏やかなシンセドローン、メロディアスなギター」の3本立てから始まる「Agua de Estrellas」(意味:星の水、輝く水)。
そのうちパーションが止み、シンセドローンがレコードの針飛びのようなループになり、ギターが荒ぶるというエクスペリメンタル(実験的)な展開ですが、心地いい違和感の範疇を超えないところにファビアーノ・ド・ナシメントらしさを感じます。
ちなみに、2023年の来日公演ではHologram Electronics MicrocosmやElectro-Harmonix 720 Stereo Looperなどのペダルやルーパーを使用していた模様です。
Fabiano do Nascimento@bluenote_place pic.twitter.com/BUtOOuAPIn
— コトノハ(OFFICIAL) (@cotonohajp) November 26, 2023
【5】Bari
「Bari」は途切れないシンセドローンとギターの組み合わせ。
消え入るまで高みに達するギターが印象的です。
【6】Etude 1
第1弾シングル「Etude 1」(意味:エチュード・練習曲、2023年10月13日)は、キューバの作曲家&指揮者&クラシックギタリスト、レオ・ブローウェル(Leo Brouwer)「Estudios Sencillos (Nos. 1)」(1972年)のカバー。
米サンディエゴのドラマー、ジュリアン・カンテルムが参加しています。
リカルド・コボ「Estudios sencillos: First Series: I」
⚡️ NEW RELEASE ⚡️ We've been a bit quiet on the new music front of late, so it feels good to come roaring back with a real beauty…
Fabiano Do Nascimento joins Far Out with a new single ”Etude 1” from the forthcoming album Mundo Solo.
Listen ~ https://t.co/Gb3kDQTt4q pic.twitter.com/EyMm3qWS36
— Far Out Recordings (@FarOutRecs) October 13, 2023
【7】Meianoite
米NY育ちのジャズピアニスト、ビバップの高僧ことセロニアス・モンク(Thelonious Monk)「‘Round Midnight」(ラウンド・ミッドナイト、アルバム『Genius of Modern Music: Volume 1』1951年、Blue Noteなど)のカバー「Meianoite」(意味:夜中)。
セロニアス・モンク「’Round Midnight」
【8】Reflections
「Reflections」(意味:反射)はドローン的な持続音でありながらもどうにか音程を見出そうとするシンセと、共鳴し合うギターの音色が印象的。
「夜中」のように孤独な隔離生活でも、「練習曲」を奏でるうちにどうにか光が見えてくるかもしれないと祈る思いが反映されているのかもしれません。
【9】Coisa
アナログ盤のA面ラスト「Coisa」(意味:物、事)。
出口の見えない闇のなかでも見失いたくない光そのもののようなサウンドです。
【10】Coisa 2
B面の始まり「Coisa 2」。
ミニマルなギターを軸にした高音と低音の対比が美しいです。
【11】CPVM
ブラジル音楽のショーロ(ジャズより歴史が古い即興音楽)やフォホーとジャズが融合した「CPVM」。
イチベレ・ズヴァルギ(Itibere Zwarg)の息子アジュリナン・ズヴァルギがパーカッションで参加しています。
【12】Txaii
「Txaii」はミニマルなギターとドローン的なシンセの前面に押し出されたドラムサウンドが印象的。
【13】Tempo
ギターのハーモニクスが心地いい「Tempo」(意味:時間)。
穏やかに盛り上がるシンセとも相性がいいです。
イイです!ブラジル人ギタリスト、ファビアーノ・ド・ナシメントの23年作!本作は、様々なギターと多数のペダルやシンセサイザーを駆使して制作された作品となります!叙情的なメロディと静けさに酔えるような没入感が心地良い傑作ですね!オススメ!https://t.co/ccsPJOehcE pic.twitter.com/ghCXAgpZee
— RECONQUISTA (@shopreconquista) November 24, 2023
【14】De Manhã
第2弾シングル「De Manhã」(意味:午前中に、2023年11月3日)。
ギターのハーモニクスとリバーブの応酬やシンセドローンで、きらめく太陽の光が表現されているかのようです。
https://twitter.com/FarOutRecs/status/1720414888386814048
【15】Dormenor
アルバムを締めくくる「Dormenor」(意味:睡眠状態の、眠っている)は8分超えの長尺。
低音、中音、高音、それぞれの展開が絶妙に絡み合い、幻想的な夢を見ているような瞑想状態に誘われます。
ギターを演奏する人やギターミュージックのファンも、ジャズやブラジル音楽を好むリスナーも、アンビエントやニューエイジなどの電子音楽ファンも、それぞれ深く心に刺さったのではないでしょうか。
Fabiano do Nascimento – Mundo Solo [LP]https://t.co/0R43WhoJyc
Fabiano do Nascimentoの魅力的なリリースが続く。Leaving Recordsからリリースされた前作「Das Nuvens (’23)」の評価は高く、当店でも人気盤。来日公演を成功させるなど彼に対する視線は熱い。母国ブラジルのルーツ・ミュージックを pic.twitter.com/rqg2Vhgfwc— 春の雨 cafe & records (@HarunoameRecord) December 22, 2023
おわりに
決して明るい音楽ではありませんが、暗闇のなかでどうにか光を見出そうとするような、静謐という言葉がよく似合うアルバムでした。
ファビアーノ・ド・ナシメントは豊かな音楽性や高い技術力を難解さに結びつけることがないので、聴くのに負荷がかからず、ストレスなく長時間聴いていられるというメリットがあります。
贅沢な話ですが、もしかしたら聴きながら眠ってしまうのが正解なのかもしれません。
Fabiano do Nascimento – Mundo Solo
Genre : ambient, jazz, expérimental…
Label : @FarOutRecs
Date de sortie : 24 novembre 2023
Ma note : 8/10
15 titres pour la plupart variés, atmosphériques et très doux. Superbe !https://t.co/51EKaAKbGV pic.twitter.com/GrsBWuAWAZ— Benoît Richard (@Benoit__Richard) November 29, 2023
Sam Gendel & Ugnė Uma『Tam tikri objektai erdvėje』
星野源さんの「Mad Hope – Short (feat. Louis Cole, Sam Gendel)」(EP『LIGHTHOUSE』2023年9月8日、SPEEDSTAR RECORDS・Victor Entertainment)でJ-POPファンにも浸透しつつあるにもかかわらず、飄々と我が道を行くサム・ゲンデル(Sam Gendel、EP『Tam tikri objektai erdvėje』2023年11月24日、meakusma)とのコラボアルバム『The Room』(ザ・ルーム、2024年1月26日、Real World / BIG NOTHING・ULTRA-VYBE)のほか、ダニエル・サンチアゴ(Daniel Santiago)やファビアーノ・ド・ナシメントのパートナーでもある音楽家、岡村さくらさんが雅楽の笙で参加したアルバムも完成しているとのこと。
大変なことが多発する世の中でも、ささやかな癒しとなる楽しみが続きます。
【新着】ブラジルとLAシーンをつなぐギタリスト、ファビアーノ・ド・ナシメントが語る「新作・ルーツ・日本」https://t.co/8Lr1mrfiiK
— TOKION (@TOKiONjp) October 12, 2023
ダニエル・サンチアゴ&ペドロ・マルチンス『MOVEMENT』
そのダニエル・サンチアゴとペドロ・マルチンス(Pedro Martins)のギターデュオ作『MOVEMENT』(2023年10月18日、Heartcore Records / MOCLOUD)も必聴です。
ディスク・レビュー『ムーブメント』 ダニエル・サンチアゴ&ペドロ・マルチンスhttps://t.co/PSsyNt45TP
— ギター・マガジン (@guitarmagazine1) December 2, 2023
小沼ようすけ『Your Smile』
ジャズギタリストのソロ作ということで、小沼ようすけさんのアルバム『Your Smile』(2023年9月20日、Flyway LABEL / MOCLOUD)もおすすめ!
小沼ようすけがキャリア初となる渾身のソロ・ギター・アルバム『Your Smile』を語る https://t.co/Zf40JVTOTA
— ギター・マガジン (@guitarmagazine1) November 24, 2023
Leo Takami『Next Door』
海外での評価も高い作曲家&ギタリスト、Leo Takami(貴水玲央)さんのアルバム『Next Door』(2023年10月6日、Unseen Worlds)もどうぞ。
At his best, the Tokyo guitarist shows how seemingly far-apart realms — East and West, the past and the present, nature and the city, the mind’s eye and the far horizon — can be, with the right twist of reality’s axis just next door. #LeoTakami https://t.co/RWoI6P0YCL pic.twitter.com/pHHt5tlNDk
— Spectrum Culture (@SpectrumCulture) October 23, 2023
リンク
- Wikipedia:Far Out Recordings
- AllMusic:Fabiano do Nascimento、Mundo Solo、Far Out Recordings、Far Out UK
- Discogs:Fabiano do Nascimento、Mundo Solo、Far Out Recordings、Unimusic
- Website:Fabiano do Nascimento、Unimusic
- Far Out Recordings:Fabiano do Nascimento、Mundo Solo
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- Tower Records:Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤・国内流通仕様CD、輸入盤CD、輸入盤LP
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- disk union:Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤・国内流通仕様CD、輸入盤CD、輸入盤LP
- Proceed Music Store(宮城・仙台):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤LP
- inception records(群馬・桐生):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤LP
- 春の雨(東京・中延):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤LP
- Jazzy Sport Shimokitazawa(東京・下北沢):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤LP
- RECONQUISTA(東京・綾瀬):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤CD
- 芽瑠璃堂(埼玉・坂戸):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤・国内流通仕様CD、輸入盤LP
- Newtone Records(大阪・西心斎橋):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤LP
- Meditations(京都・河原町丸太町):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤LP
- Banguard(和歌山・御坊):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤LP
- GREENTHINGS STORE and MUSIC DEPT.(滋賀・高島):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤LP
- STEREO RECORDS(広島・中町):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤LP
- JUNGLEEXOTICA(福岡・舞鶴):Fabiano do Nascimento、Mundo Solo/輸入盤LP
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