King Gnuの新井和輝さんも影響を受けたというベーシストのピノ・パラディーノ(Pino Palladino)と注目のギタリスト&プロデューサー、ブレイク・ミルズ(Blake Mills)による『Notes With Attachments』。
多彩なゲストを交えた「神々の戯れ」と称される極上のサウンドを堪能しましょう!
#FenderNews: American Vintage IIシリーズの発売を記念し、先日開催された体験型イベントで実施された新井和輝(King Gnu)とたかはしほのか(リーガルリリー)によるFenderNews公開取材の様子をレポート!
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— Fender (フェンダー) (@Fender_Official) November 2, 2022
Contents
はじめに
ピノ・パラディーノ
ピノ・パラディーノ(1957年10月17日、UKウェールズ出身)は、歴史的な名盤や名曲に軒並み名を連ねるセッションベーシストです。
【連載コラム】
原 雅明「THE CHOICE IS YOURS」
VOL.136:ピノ・パラディーノが追求してきた“遅らせた演奏”のグルーブhttps://t.co/M4Jt1XXlHT@masaakihara #原雅明 #TheChoiceIsYours #PinoPalladino #ピノパラディーノ #BlakeMills #ブレイクミルズ— サウンド&レコーディング・マガジン (@snrec_jp) June 21, 2021
ディアンジェロ(D’Angelo)の2ndアルバム『Voodoo(ヴードゥー)』(2000年1月25日、Virgin Records)や3rdアルバム『Black Messiah(ブラック・メサイア)』(2014年12月15日、RCA Records)。
さらに、ドン・ヘンリー、エルトン・ジョン、ジョン・メイヤー、ジェフ・ベック、ザ・フー、ポール・ヤング、ゲイリー・ニューマン、デヴィッド・ギルモア、ティアーズ・フォー・フィアーズ、フィル・コリンズ、エリック・クラプトン、ピーター・セテラ、デヴィッド・クロスビー、マイケル・マクドナルド、ブライアン・フェリー、B.B.キング、ティナ・ターナー、エリカ・バドゥ、ロッド・スチュワート、ポール・サイモン、ロビー・ロバートソン、アデル、ナイン・インチ・ネイルズ、キース・リチャーズ、ジョン・レジェンド、エド・シーラン、ジェイコブ・コリアーなどの作品にも参加しています。
改めて11月に来日するピノ・パラディーノ、ブレイク・ミルズ 、サム・ゲンデル、エイブ・ラウンズのバイオをどうぞ。ビルボードの公演はソルドアウトですので、掛川と福岡のみとなります。奇跡の来日、お見逃しなく!https://t.co/jHAlrWEuci pic.twitter.com/qBdVfuqbaH
— ᖴᖇᑌE (@FRUE_JP) October 25, 2022
ブレイク・ミルズ
ブレイク・ミルズ(1986 年9月21日、米カリフォルニア出身)は、バンド「サイモン・ドーズ(Simon Dawes)→ドーズ(Dawes)」、セッションギタリストを経て、ソロ活動しているギタリスト(マルチ奏者)&プロデューサーです。
https://twitter.com/panta_rhei0501/status/1590543923948421121
Notes With Attachments
『Notes With Attachments』(2021年3月12日、Impulse! Records / New Deal Records)は、先行シングル2曲を含む、全8曲・31分あまり。
歴史的な名ベーシストと若手ながら音楽の歴史に造詣が深いと注目を集めている鬼才ギタリスト&プロデューサーによるコラボ作で、手練れのゲストが多数集結しています。
Pino Palladino and Blake Mills featuring Sam Gendel & Abe Rounds 福岡公演ご来場いただいた皆様ありがとうございました。 pic.twitter.com/4YMuWs3nGD
— 旧八女郡役所音楽の会 (@yame_ongaku) November 11, 2022
【1】Just Wrong
- ピノ・パラディーノ:フレットレスベース(Rob Allen Guitars、セミアコ、ホロウボディ、ピエゾピックアップ搭載)、バスハーモニカ、作曲、レコーディング(アディショナル)
- ブレイク・ミルズ:ビリンバウ、アコギ(ナイロン弦)、シタール(Coral Electric Sitar)、パーカッション、作曲、ミックス、プロデュース
- クリス・デイヴ(Chris Dave):ドラム、作曲
- ラリー・ゴールディングス(Larry Goldings):メロトロン(サックス)
- サム・ゲンデル(Sam Gendel):サックス(ポリカーボネート製、プラスチックサックス)
- ロブ・ムース(Rob Moose):バイオリン、ビオラ
デューク・エリントン(Duke Ellington)のスウィングジャズ、J・ディラ(J Dilla)のディラビート、ブラジル音楽のボサノバ、インド音楽が融合したような不思議な感覚に包まれる、第1弾シングル「Just Wrong」(2021年1月27日)。
ピノ・パラディーノはまるでコントラバスのように聴こえるフレットレスベースなど、ブレイク・ミルズはアコギやエレクトリックシタール、ブラジルの民族楽器(打弦楽器)ビリンバウなどを奏でています。
ドラムは、J・ディラのレイドバックした打ち込みビートを生演奏で体現しているようだと評されるクリス・デイヴ。
- ミシェル・ンデゲオチェロ(Meshell Ndegeocello)『Comfort Woman』(2003年10月14日、Maverick)
- ロバート・グラスパー(Robert Glasper)『Black Radio』(2012年2月28日、Blue Note Records)
- ディアンジェロ『Black Messiah』(2014年12月15日、RCA Records)
- 宇多田ヒカル『初恋』(2018年6月27日、Epic Records Japan)
上記のアルバム以外でも多数活躍している名ドラマーです。
ハモンドオルガンの名手として知られるジャズ鍵盤奏者ラリー・ゴールディングスはメロトロン、サム・ゲンデルはポリサックス、ボン・イヴェール(Bon Iver)の2ndアルバム『Bon Iver』(2011年6月21日、Jagjaguwar / 4AD)などの編曲&演奏でも知られるマルチ奏者&編曲家&指揮者のロブ・ムースはバイオリンとビオラで参加。
さらっと聞き流すこともできてしまう地味で穏やかな楽曲ですが、楽器ひとつひとつやアンサンブルの妙を意識すると、途端にあまりの贅沢ぶりに耳が喜ぶのではないでしょうか。
【Live】Just Wrong
【2】Soundwalk
- ピノ・パラディーノ:ベース、シンセベース(ポリフォニック)、カラバッシュ(Calabash、ひょうたんドラム)、作曲、レコーディング(アディショナル)
- ブレイク・ミルズ:ドラム(ブラシ)、ギターシンセ(ポリフォニック)、ミックス、プロデュース
- ラリー・ゴールディングス:メロトロン(ナバホフルート)、チェレスタ、エレクトリックオルガン(ハモンドオルガン B3)
- サム・ゲンデル:ポリサックス
- ジャック・シュワルツ・バルト(Jacques Schwarz-Bart):サックス(セクション)、作曲
- ブルース・フラワーズ(Bruce Flowers):シンセ(iZotope RX 7)
ディラビートに魅せられたディアンジェロによるネオソウルの名盤『Voodoo』のツアー中に作曲されたという「Soundwalk」。
ピノ・パラディーノと同じく、『Voodoo』のツアーバンド、ザ・ソウルトロニクス(The Soultronics)のメンバーだった、ジャズサックス奏者ジャック・シュワルツ・バルトも参加しています。
クエストラブ(Questlove)もメンバーだったソウルトロニクスは、アフロビートの創始者フェラ・クティ(Fela Kuti)のトリビュートアルバム『Red Hot + Riot』(2002年10月15日、MCA Records)で、ディアンジェロ、フェミ・クティ(Femi Kuti)、メイシー・グレイ(Macy Gray)、ナイル・ロジャース(Nile Rodgers)、ロイ・ハーグローヴ(Roy Hargrove)と共に「Water No Get Enemy」(1975年)をカバーしました。
あまりにもさりげなくアフリカの民族楽器(打楽器)カラバッシュが用いられるなど、アフロビートとディラビートが年月を経て豊潤なジャズに醸造されたような味わいです。
ソウルトロニクス「Water No Get Enemy」
スラム・ヴィレッジ(J・ディラ/ジェイ・ディー)「Tell Me (feat. D’Angelo)」
J・ディラ「So Far to Go (feat. Common & D’Angelo)」
【3】Ekuté
- マーカス・ストリックランド(Marcus Strickland):バスクラリネット、サックス、作曲
- クリス・デイヴ:ドラムキット、パーカッション、クラビネット(Nord)、エレピ(ローズピアノ)、作曲
- ブレイク・ミルズ:ギター(ファズ)、ンゴニ(ンゴーニ、Ngoni)、作曲、ミックス、プロデュース
- ピノ・パラディーノ:ギター(Ovation)、ベース、作曲、レコーディング(アディショナル)
- アンドリュー・バード(Andrew Bird):バイオリン
2曲目「Soundwalk」と同じくフェラ・クティに触発され、ピノ・パラディーノとクリス・デイヴによるワンコードのアフロビートから始まったという、第2弾シングル「Ekuté」(2021年2月19日、ヨルバ語でネズミのこと)。
さらにロバート・グラスパーともコラボし、ディラビートの探究者でもあるサックス奏者&プロデューサーのマーカス・ストリックランドがバスクラリネットとサックス、ブレイク・ミルズが西アフリカ・マリの民族楽器(弦楽器)ンゴニなど、アンドリュー・バードがバイオリンを重ねるなどして、まるでネズミがあちこち走り回るような複雑なポリリズムが展開されています。
【4】Notes With Attachments
- ピノ・パラディーノ:フレットレスベース、作曲、レコーディング(アディショナル)
- ブレイク・ミルズ:フルート(e-Flute With Direct String Synthesis)、ギターシンセ(ポリフォニック)、作曲、ミックス、プロデュース
- サム・ゲンデル:ポリサックス(BOSS PS-5 Super Shifter)
- ラリー・ゴールディングス:シンセ(Prophet V)、チェレスタ(サンプル)、作曲
アルバムの表題曲でありながらむしろ穏やか、2分弱のインタールードのような「Notes With Attachments」。
ブレイク・ミルズは、ギターやベースの弦に近づけるとフルート、チェロ、ホーン、ハーモニカなどのようなサスティンを響かせることができるEBowのE-Bow Plusのようなサスティナー、つまりアタッチメント(付属品)を用いて、ギターでフルートの音色を奏でています。
歌ものポップスの場合、ボーカル以外のサウンドを付属品と捉える聴き方もあるかもしれませんが、そうした我を張らない「付属品たちのメモまたは音」こそ極上のサウンドといえそうです。
【5】Djurkel
- ピノ・パラディーノ:ベース(Magnatone Base)、ギターシンセ(ポリフォニック)、作曲、レコーディング(アディショナル)
- ブレイク・ミルズ:カラバッシュ、リゾネーターギター(National Reso-Phonic)、ンゴニ、バリトンギター(フレットレス)、作曲、ミックス、プロデュース
- クリス・デイヴ:ドラムキット、パーカッション
- テッド・プア(Ted Poor):プリペアドピアノ
- サム・ゲンデル:サックス、ポリサックス(サンプル)
- ロブ・ムース:バイオリン、ビオラ
サハラ砂漠周辺の音楽スタイル、砂漠のブルース(デザートブルース、ソンガイブルース)のパイオニアで、マリのSSW&マルチ奏者(ギタリスト)のアリ・ファルカ・トゥーレ(Ali Farka Touré)が自作した弦楽器の名前がつけられた「Djurkel」。
さらに、マリのSSWウム・サンガレ(Oumou Sangaré)のワスル音楽、マリ・ガオ(ソンガイ)発のバンド、スーパー・オンゼ(Super 11、Takamba Super Onze)のタカンバ(トゥアレグやソンガイのグリオによる伝統音楽)へのオマージュも込められています。
【Live】Djurkel
【6】Chris Dave
- ピノ・パラディーノ:ベース、ギター、作曲、レコーディング(アディショナル)
- クリス・デイヴ:ドラムキット、パーカッション、作曲
- ブレイク・ミルズ:エレキギター、作曲、ミックス、プロデュース
- ベン・アイロン(Ben Aylon):セネガルのパーカッション
- サム・ゲンデル:ポリサックス
名ドラマー、クリス・デイヴの名前がそのまま曲名になった「Chris Dave」。
さらに、セネガルのSSWユッスー・ンドゥール(Youssou N’Dour)ともコラボしたことがあり、マリのンゴニに似たセネガルの民族楽器(弦楽器)ハラム(Xalam)や同じくセネガルの民族楽器(打楽器)サバール(Sabar)などを操る、イスラエル出身のパーカッショニスト(マルチ奏者)ベン・アイロンも参加しています。
【7】Man From Molise
- サム・ゲンデル:バスサックス、サックス(リズム、ポリ)
- ブレイク・ミルズ:ドラム、スライドギター、キューバントレス、プリペアドピアノ、マリンバ(Yamaha DX7)、フレットレスベース(ガムラン)、ボーカル(言葉なし)、ミックス、プロデュース
- ラリー・ゴールディングス:ハモンドオルガン B3
- ピノ・パラディーノ:フレットレスベース(ガムラン)、作曲、レコーディング(アディショナル)
- ベン・アイロン:セネガルのパーカッション
- マット・チェンバレン(Matt Chamberlain):ティンバレス
ピノ・パラディーノの父の出身地イタリアのモリーゼにちなんだ曲名がつけられた「Man From Molise」。
マイルス・デイヴィス(Miles Davis)作品への参加でも知られる、ブラジル音楽界の鬼才エルメート・パスコアール(Hermeto Pascoal)とそのバンドのベーシスト、イチベレ・ズヴァルギ(Itibere Zwarg)の影響を受けて作られました。
さらに、ラテン音楽の一種マンボの生みの親のひとりで、甥のカチャイート(Cachaíto)がブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(Buena Vista Social Club)に参加したことでも知られる、キューバ音楽の歴史的なベーシスト、カチャオ(Cachao)にもインスパイアされているとのこと。
ボブ・ディランやデヴィッド・ボウイなど、数多くの作品に参加しているセッションドラマー、マット・チェンバレンはラテン音楽の打楽器ティンバレス、ブレイク・ミルズはキューバの民族楽器(弦楽器)トレスを奏でています。
【Live】Man From Molise
【8】Off The Cuff
- ブレイク・ミルズ:ベース、作曲、ミックス、プロデュース
- ピノ・パラディーノ:ベース、作曲、レコーディング(アディショナル)
- クリス・デイヴ:ドラム(ブラシ)、作曲
- サム・ゲンデル:ポリサックス(サンプル)
ラストを飾る「Off The Cuff」の曲名は、「事前にセリフを書いたカフ(袖口)なしでスピーチをする」ことから「(準備なしの)即興」という意味で使われる言葉です。
実際にピノ・パラディーノとクリス・デイヴのジャムセッション(即興演奏)から始まり、ピノ・パラディーノとブレイク・ミルズのツインベースで再構築され、サム・ゲンデルのサックスのサンプルが重ねられたとのこと。
濃密な引き算の美学に貫かれています。
【Live】Off The Cuff
おわりに
- 【1】Just Wrong
- 【3】Ekuté
- 【5】Djurkel
メトロノームのカチカチというジャストのタイミングより、後ろに遅らせるビートを打ち込みで提示したJ・ディラ。
ディアンジェロの『Voodoo』が画期的な名盤として音楽の歴史に刻まれたのは、J・ディラの揺れるビートを楽器で生演奏したからでしょう。
ジャストのタイミングからドラムを遅らせ、さらにそのドラムからベースを遅らせる試みを体現したのが、ドラマーのクエストラブとベーシストのピノ・パラディーノのリズム隊でした。
こうしたネオソウルがリバイバルブームとなっている昨今でも、知る人ぞ知る存在であり続けるピノ・パラディーノ。
コラボ相手に抜擢された鬼才ブレイク・ミルズも含め、セッションミュージシャン(サイドマン)として脇を固めることが多い手練れたちと、世界中で紡がれてきた音楽の歴史の旨味のみが抽出された現状を堪能することができたのではないでしょうか。
https://twitter.com/poesy100/status/1588505386944172032
リンク
- Wikipedia:ピノ・パラディーノ、ブレイク・ミルズ、Pino Palladino、Blake Mills
- AllMusic:Pino Palladino、Blake Mills、Notes With Attachments
- Discogs:Pino Palladino、Blake Mills、Notes With Attachments
- Website:Blake Mills、Blake Mills/Shop、Impulse!、New Deal
- Twitter:Pino Palladino、Blake Mills、Impulse!
- Instagram:Pino Palladino、Blake Mills
- Facebook:Pino Palladino、Blake Mills
- Link:Notes With Attachments
- YouTube:Pino Palladino、Blake Mills、Notes With Attachments
- Tower Records:Pino Palladino、Blake Mills、Notes With Attachments、輸入盤CD、輸入盤LP
- disk union:Pino Palladino & Blake Mills、Blake Mills、Notes With Attachments、輸入盤CD、輸入盤LP
- FLAKE RECORDS(大阪・南堀江):輸入盤LP
- JEUGIA Basic(京都・四条烏丸):Blake Mills、輸入盤LP
- Spotify:Pino Palladino、Blake Mills、Notes With Attachments
- Apple Music:Pino Palladino、Blake Mills、Notes With Attachments
- SoundCloud:Blake Mills