「砂漠のジミヘン」と評判のギターヒーロー、エムドゥ・モクター(Mdou Moctar)。
愛と祈りと革命がテーマのアルバム『Afrique Victime』を聴いて、斬新なギター奏法をチェックしましょう!
Contents
エムドゥ・モクターの経歴
Mdou spoke with @AilbheMairead on @ReprezentRadio, tune in today at 8PM GMT.
Listen here: https://t.co/OYgT3CImCX pic.twitter.com/dYJhUGXooy
— Mdou Moctar (@MdouMoctar) March 14, 2021
- 左→右:スレイマン、マイキー、エムドゥ、アモウド
エムドゥ・モクター(Mdou Moctar)は、国土の約8割がサハラ砂漠という西アフリカ・ニジェール共和国の遊牧民トゥアレグ族出身のギタリスト&シンガーソングライター(1986年生まれ)のアーティスト名かつ4人組のバンド名です。
- エムドゥ・モクター(本名:Mahamadou Souleymane、マハマドゥ・スレイマン):リードギター、ボーカル、ソングライティング
- アモウド・マダサネ(Ahmoudou Madassane):リズムギター、コーラス(2008年~)
- マイキー・コルトン(Michael “Mikey” Coltun):ベース、コーラス、プロデュース、レコーディング、ツアーマネージメント(2017年~)
- スレイマン・イブラヒム(Souleymane Ibrahim):ドラム、パーカッション、コーラス(2019年~)
ジャンルはサイケデリックロック、デザートロック、砂漠のブルース(デザートブルース)。
歌詞はトゥアレグ語の一種、タマシェク語(母国語)とフランス語です。
Live in Niamey, Niger
- 1stアルバム『Anar』2008年→2014年9月
- 2ndライブアルバム『Afelan』2013年7月
- OST『Akounak Tedalat Taha Tazoughai』2015年6月
- 3rdアルバム『Sousoume Tamachek』2017年9月
- 4thライブアルバム『Blue Stage Sessions』2019年1月
- 5thアルバム『Ilana: The Creator』2019年3月
エムドゥは左利きで高身長、フェンダー(Fender)のストラトキャスター(Stratocaster)を愛用し、上に6弦(低音)・下に1弦(高音)を張るところが同じなので「砂漠のジミヘン」と呼ばれています。
みのミュージック
そもそもエムドゥが影響を受けたのは、トゥアレグの伝統的な祝祭音楽タカンバ(Takamba)やティナリウェン(Tinariwen)などの砂漠のブルースでした。
とくに砂漠のブルース、デゼール・ルベル(Desert Rebel)のギタリスト、アブダラー・ウンバドゥーグー(Abdallah Oumbadougou)のライブに触発され、6弦ではなく4弦のギターを自作。
ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)やエディ・ヴァン・ヘイレン(Edward Van Halen)などのYouTube動画を参考に、独学でギターを演奏するようになりました。
ピックを使わない指弾き(フィンガーピッキング)。
人差し指の高速トレモロ奏法(トレモロピッキング)、西アフリカの弦楽器ンゴニ(テハルディン、テハルダント)のようなトリル奏法(最初にエレキに取り入れたのはアブダラーら)、エディの代名詞ともいわれるタッピング奏法が特徴的です。
カポ(カポタスト)をつけ、レギュラーチューニング(調弦)のほか、変則チューニングも活用し、曲によりエレキとアコギを使い分けています。
『パープル・レイン』のリメイク映画
エムドゥはプリンス(Prince)主演の伝記ミュージカル映画『パープル・レイン』(Purple Rain、米1984年、日本1985年)の初のトゥアレグ語によるリメイク映画『Akounak Tedalat Taha Tazoughai』(Rain the Color Blue with a Little Red In It、2015年)で主演・脚本・制作・音楽プロデュースを担当し、人気を博しました。
『Afrique Victime』の概要
2021年5月21日にリリースされた6thアルバム『Afrique Victime』(アフリーク・ヴィクティム、意味:アフリカの犠牲者)は、米ニューヨークの名門インディーズレーベル<Matador Records>(マタドール・レコード)からリリースされた世界デビュー作。
先行シングル4曲を含め、輸入盤は全9曲・41分あまり、ボーナストラックが追加された国内盤は全10曲です。
愛と祈りと革命がテーマの「砂漠のサイケロック」をギター奏法中心に聴いていきましょう。
【1】Chismiten
嫉妬や不安といったネガティブな感情を抱かないように祈る「Chismiten」は、アルバム収録1曲目のシングル(2020年10月7日)。
大自然のなか近づく足音から始まり、即興的なフレーズが掻き鳴らされるイントロ、反復性のある速弾き、6拍子とアフロポリリズムによるグルーヴ、リバーブの効いたギターソロが印象的です。
Live at the Niger River
- 4曲目「Tala Tannam」0~4:40
- 9曲目「Bismilahi Atagah」4:41~10:55
- 3曲目「Ya Habibti」10:56~15:10
- 1曲目「Chismiten」15:10~19:16
- 英訳歌詞:Genius
【2】Taliat
失恋した女性に寄り添い、傷ついた心を守るように祈る「Taliat」は、アルバム収録4曲目のシングル(2021年5月18日)。
Mdou Moctar on “Taliat”
C#(D♭)メジャーペンタトニックスケール「C#(D♭)・D#(E♭)・F・G#(A♭)・A#(B♭)」を軸としたトレモロの反復でリズムアンサンブルを明るく盛り上げた果てに、ギターソロが炸裂します。
- ギター・マガジンWEB:エムドゥ・モクターのアプローチを探る
- 英訳歌詞:Genius
【3】Ya Habibti
パートナーのレイラ(Layla)との出会いが描かれた「Ya Habibti」。
エムドゥがギターを弾くきっかけとなったアブダラーへの敬愛の念も込められています。
アコギによる6拍子のグルーヴもサイケデリック!
Tiny Desk (Home) Concert
- 3曲目「Ya Habibti」0~3:47
- 4曲目「Tala Tannam」3:48~9:09
- 8曲目「Afrique Victime」9:10~16:23
- 英訳歌詞:Genius
【4】Tala Tannam
「Tala Tannam」のMVは、ニューヨーク・ブルックリンを拠点とするアメリカ人のマイキーがニジェールを訪れたときに撮影されました。
バンドメンバーや現地の人々の絆が描かれています。
Mdou Moctar on “Tala Tannam”
このアルバム収録2曲目のシングル(2021年3月3日)はアコギによるメロウなラブソング。
Live in Niamey, Niger
ツアーに出かけ、レイラと会えなくても「あなたの涙を見たくない。心に石であなたの名前を刻んだ」とノスタルジーに浸り、愛をささやいています。
Tala Tannam feat. MC Yallah (Debmaster Remix)
MC Yallah(ウガンダのラッパー)をゲストに迎えた、Debmaster(ドイツ・ベルリン出身、フランスのプロデューサー)によるリミックスです。
- 英訳歌詞:Genius
【5】Untitled
1分半ほどのインタールード的な「Untitled」でもギターが唸ります。
【6】Asdikte Akal
故郷の自然や人々、レイラに思いを馳せるノスタルジックな「Asdikte Akal」もツアー中に書かれました。
Cマイナーペンタトニック「C・D#(E♭)・F・G・A#(B♭)」の変化形「C・D・F・G・A#(B♭)」、あるいはCを主音(トニック)としたGマイナーペンタトニック「G・A#(B♭)・C・D・F」やA#(B♭)メジャーペンタトニック「A#(B♭)・C・D・F・G」が軸になっています。
- ギター・マガジンWEB:エムドゥ・モクターのアプローチを探る
- 英訳歌詞:Genius
【7】Layla
ツアー中に出産したレイラに愛と祈りを捧げた「Layla」。
反復するアコギのフレーズでグルーヴが生まれ、時折つま弾かれるエレキの音色が切なく響きます。
- 英訳歌詞:Genius
【8】Afrique Victime
アルバム収録3曲目のシングルかつタイトル曲の「Afrique Victime」(2021年4月1日)。
Mdou Moctar on “Afrique Victime”
「アフリカはたくさんの犯罪犠牲者だ」と訴える革命ソングです。
Lyric Video (English)
反復するリズムのテンポが速くなり、炸裂するギターソロが圧巻。
Live in Niamey, Niger
速弾きやトレモロも堪能できるライブ映像です。
踊りまくる子どもたちの姿は、根源的な音楽の喜びにあふれています。
- 英訳歌詞:Genius
【9】Bismilahi Atagah
報われない愛に祈りを捧げる「Bismilahi Atagah」。
アコギの音色と反復するリズムに優しく包まれます。
足音が遠ざかるラストまで、心地いいサウンドに浸ることができたのではないでしょうか。
- 英訳歌詞:Genius
リンク
- Wikipedia:Mdou Moctar
- AllMusic:Mdou Moctar、Afrique Victime
- Discogs:Mdou Moctar、Afrique Victime
- Website:Mdou Moctar、Sahel Sounds、Matador Records、Beatink
- Linktree、Twitter、Instagram、Facebook、Bandcamp
- Link:Afrique Victime
- YouTube:Mdou Moctar、Afrique Victime
- Spotify:Mdou Moctar、Afrique Victime
- Apple Music:Mdou Moctar、Afrique Victime