音楽

カルロス・ニーニョ&フレンズ『Extra Presence』LAニューエイジ・リバイバルの代表作!

サム・ゲンデル、ヤソス、ララージも参加!
カルロス・ニーニョ&フレンズ(Carlos Niño & Friends)の『Extra Presence』は、とにかく癒されたい人におすすめです。

はじめに


カルロス・ニーニョ(1977年2月16日~)は、米ロサンゼルス(LA)を拠点に活動する音楽家(自称コミュニケーターパーカッション奏者マルチ奏者、作編曲家、DJ、プロデューサー、オーガナイザーインターネットラジオ局dublabダブラブ)共同創設者など)。
さまざまな活動と並行して、2008年にカルロス・ニーニョ&フレンズ名義のコラボプロジェクトを始動しました。

Extra Presence


アルバム『Extra Presence』(エクストラ・プレゼンス、デジタル・LP・カセット:2022年7月22日、CD:2022年8月3日、International Anthem / rings)は、先行シングル2曲を含む、全17曲・1時間31分。
カルロス・ニーニョ&フレンズ名義の7thアルバム『Actual Presence』(デジタル・LP・カセット:2020年7月23日、Anandamide、全10曲・42分40秒)のリマスタリングに、新曲7曲が追加された拡張版です。
サックス奏者サム・ゲンデルSam Gendel)ら現行LAジャズ界隈を盛り上げる面々のほか、ヤソスIasos)やララージLaraaji)といったニューエイジの大御所も参加し、「スピリチュアル、即興演奏、宇宙のコラージュ」をテーマとした、スピリチュアルジャズアンビエントニューエイジ・リバイバル実験音楽、ヒップホップ、ビートミュージックなどの要素を含む「音の旅」が展開されています。

【1】In The Moment (with Devin Daniels, Randy Gloss, Jamael Dean, and Miguel Atwood-Ferguson)

2019年2月13日に米ハリウッドにあるMr Musichead Galleryで行われたジャスト・ジャズJust Jazz Live Concert Series)のライブ演奏に、スタジオでの即興演奏をオーバーダビング(多重録音)で重ねたという「In The Moment」。
サックス、タンバリンの一種パンデイロ、ピアノ、シンセ、バイオリン、パーカッションの音色がフリージャズのような緊張感を生み出しています。

Just Jazz

【2】Explorations 7 (with Devin Daniels, Randy Gloss, Jamael Dean, and Miguel Atwood-Ferguson)

  • Devin Daniels:アルトサックス
  • Randy Gloss:パンデイロ
  • ジャメル・ディーン:ピアノ、シンセ
  • ミゲル・アトウッド・ファーガソン:5弦バイオリン、エフェクター
  • カルロス・ニーニョ:パーカッション、シンセ、サウンドコラージュ、作編曲、編集、サウンドデザイン、プロデュース、ミックス

「Explorations 7」では、1曲目「In The Moment」と同じジャスト・ジャズのライブ演奏とスタジオでの即興演奏に、カルロス・ニーニョによるポストプロダクション(再構築)が加わりました。
ヒップホップのサンプリングビートメイキングのような手法ですが、自身のライブ音源やスタジオでの即興演奏などを素材として扱い、再構築しているところが特徴的です。

【3】Actually (with Deantoni Parks, Jamael Dean, and Nate Mercereau)

「Actually」では、ジャメル・ディーンのピアノ、米テキサス発のプログレバンド、マーズ・ヴォルタThe Mars Volta)でも活躍した(2006・2010~2012年)ディアントニ・パークスのドラム、カルロス・ニーニョのパーカッションを別々の音源から抜き取り、さらに「カルロス・ニーニョ→ネイト・マーセロー→カルロス・ニーニョ」の順で演奏を重ねるという方法がとられました。

【4】Youwillgetthroughthis, I promise (with Jamael Dean)

  • ジャメル・ディーン:ピアノ、シンセ
  • カルロス・ニーニョ:カリンバ、パーカッション、シンセ、作編曲、編集、プロデュース、ミックス

カルロス・ニーニョによるラバーマレットを用いたカリンバの即興演奏のループに、パーカッションとジャメル・ディーンの鍵盤を重ねて編集し、さらに2人の演奏を重ねてミックスしたという「Youwillgetthroughthis, I promise」。
フィールドレコーディングによる波の音なども相まって、さまざまな大変な出来事にざわめく心が浄化されるようです。

【5】for the Shapalaceer (with Sam Gendel and Nate Mercereau)

  • サム・ゲンデル:アルトサックス、エフェクター
  • ネイト・マーセロー:ギターシンセ、エレキベース
  • カルロス・ニーニョ:パーカッション、作編曲、編集、プロデュース、ミックス

「for the Shapalaceer」にはサム・ゲンデルも参加。
エフェクトの効いたサックスに、ドローン的な音色が幾重にも重なり、荘厳な雰囲気が醸し出されています。

【6】Dreamsishappening (Instrumental) (with Jamael Dean and Sharada)

  • ジャメル・ディーン:ビート、シンセ、パーカッション
  • Sharada:ボーカル
  • カルロス・ニーニョ:ゴング、パーカッション、シンセ、作編曲、プロデュース、ミックス

キラキラ系のパーカッション、妖しげなボーカル、ハンドクラップのようなタイトなビートが印象的なミニマルチューン「Dreamsishappening (Instrumental)」。
ゴングが鳴ってフェードアウトするのかと思いきや盛り返す構成は、ダンスミュージックのブレイクのようでもあり、ヒップホップ由来のビートミュージックの香りも漂います。

【7】Luis’s Special Shells (with Jamael Dean and Jamire Williams)

「Luis’s Special Shells」にはジャマイア・ウィリアムスも参加。
ロバート・グラスパー・トリオRobert Glasper Trio)のライブ演奏で注目され、ジェフ・パーカーJeff Parker)率いるザ・ニュー・ブリードThe New Breed)のメンバーとしても活躍しているドラマーです。
フリージャズのような奔放なドラムと、曲名および楽器名にもなっている貝殻やパーカッションの不思議な音色が、鍵盤曲を彩ります。

【8】Jamirelandflight (with Jamire Williams, Josh Johnson, Jamael Dean, and Nate Mercereau)

  • ジャマイア・ウィリアムス:ドラム
  • ジョシュ・ジョンソンJosh Johnson):シンセ
  • ジャメル・ディーン:キーボード、シンセベース
  • Sharada:ボイス
  • ネイト・マーセロー:ギターシンセ
  • カルロス・ニーニョ:パーカッション、作曲、プロデュース、ミックス

ジャマイア・ウィリアムスと同じく、ジェフ・パーカー&ザ・ニュー・ブリードのメンバーでもあるジョシュ・ジョンソンも参加した「Jamirelandflight」。
天から降り注ぐようなドラムの乱れ打ちやパーカッションなどと、地を這うようなシンセベースの対比が印象的です。

【9】WaterWavesArrival (with Jesse Peterson)

第1弾シングル「WaterWavesArrival」(2022年5月25日)にはジェシー・ピーターソンが参加。
SSWミア・ドイ・トッドMia Doi Todd)の夫で、カルロス・ニーニョとターン・オン・ザ・サンライトTurn On The Sunlight)というユニットも組んでいるギタリスト(マルチ奏者)&作曲家&プロデューサーです。
伝説のボディボーダー、マイク・スチュワートMike Stewart)による海の映像が使われたMVとともに聴くと、偉大なる地球に抱かれる感覚を体感できるのではないしょうか。

【10】Mushroomeclipse (with Iasos)

  • ヤソス:Celestial Sounds
  • カルロス・ニーニョ:サウンドスケープ、シンセ、パーカッション、作曲、プロデュース、ミックス

アルバム『Actual Presence』のラストを飾る「Mushroomeclipse」。
ニューエイジミュージックの始祖ヤソスによるCelestial Sounds(天の音)が響きます。

【11】Youwillgetthroughthis with Koto (with Jesse Peterson)

  • ジェシー・ピーターソン:(こと)、シンセ
  • カルロス・ニーニョ:カリンバ、パーカッション、シンセ、作編曲、編集、プロデュース、ミックス

アルバム『Extra Presence』で追加されたのは7曲。
11曲目「Youwillgetthroughthis with Koto」は4曲目「Youwillgetthroughthis, I promise」のいわゆるリメイクです。
ジャメル・ディーンのピアノとシンセがジェシー・ピーターソンの箏とシンセに変わって、2分短くなり、研ぎ澄まされた印象を受けます。

【12】Dreamsishappening (featuring Shabazz Palaces, Jamael Dean and Sharada)

  • シャバズ・パレセズShabazz Palaces):作詞、ボーカル
  • Sharada:コーラス
  • ジャメル・ディーン:ビート、エフェクター、キーボード
  • カルロス・ニーニョ:ベル、チャイム、シンバル、ゴング、シェル、作編曲、プロデュース、ミックス

12曲目と13曲目は6曲目「Dreamsishappening (Instrumental)」のリメイク。
6曲目にもSharadaのボーカルは入っていましたが、歌詞のないコーラスだったのでインスト曲という位置付けでした。
12曲目には、米シアトルのヒップホップユニット、シャバズ・パレセズのMCイシュマエル・バトラーIshmael Butler)によるポエトリーリーディングスポークンワードのようなラップが入り、カルロス・ニーニョの奏でる楽器も増えています。

【13】Dreamsishappening (Reprise)

  • Sharada:ボーカル
  • ジャメル・ディーン:キーボード
  • カルロス・ニーニョ:ベル、チャイム、シンバル、ゴング、シェル、作編曲、プロデュース、ミックス

6曲目のフェードアウトしそうになりつつテーマ(主題)を繰り返す後半が、リメイクにより「リプリーズ(反復曲)」として独立。

【14】Luis’s Special Shells (with Jamael Dean) Alternate MIX

  • ジャメル・ディーン:キーボード
  • カルロス・ニーニョ:Luis’s Special Shells、パーカッション、作曲、プロデュース、ミックス

14曲目は、約2分半の7曲目「Luis’s Special Shells」からジャマイア・ウィリアムスのドラムがなくなり、約5分に拡張された別ミックスバージョンです。
曲名でもある貝殻、パーカッション、キーボードによる浮遊感に浸ることができるでしょう。

【15】AmazonianPulse (with Laraaji and Nate Mercereau)

  • ララージ:チター
  • ネイト・マーセロー:ギター
  • カルロス・ニーニョ:パーカッション、シンセ、サウンドスケープ、作編曲、プロデュース、ミックス

ララージのチターが水などの自然の音やパルスのようなノイズと共鳴する「AmazonianPulse」。
後半では、3曲目「Actually」と5曲目「for the Shapalaceer」でギターシンセとエレキベースを奏でていたネイト・マーセローのギターが盛り上がります。

【16】Thandi Piano EDIT (from 080619, with additions)

第2弾シングル「Thandi Piano EDIT (from 080619, with additions)」(2022年6月16日)。
南アフリカ(SA)の新世代ジャズシーンを盛り上げる女性ピアニスト&SSWタンディ・ントゥリのピアノが、カルロス・ニーニョのパーカッションやネイト・マーセローのホルンと溶け合います。

【17】Recurrent Reiki Dreams (with Iasos)

  • ヤソス:Celestial Sounds
  • カルロス・ニーニョ:サウンドスケープ、シンセ、パーカッション、作曲、プロデュース、ミックス

アルバム『Extra Presence』のラスト17曲目「Recurrent Reiki Dreams」は、約4分の10曲目「Mushroomeclipse」が約23分に拡張されたリメイク。
ヤソスとカルロス・ニーニョによる壮大な音楽のレイキヒーリングといえるかもしれません。

おわりに

季節にかかわらず、穏やかな太陽の光を浴びながら大海原に浮かぶような温もりに包まれたのではないでしょうか。
ニューエイジ・リバイバルというのは音楽家ではなくメディア主導の表現で、カルロス・ニーニョ自身があえてジャンル分けするならスピリチュアルジャズとのこと。
実際に耳を傾けると実験的な音楽要素が盛りだくさんですが、そこまで含めてニューエイジ・リバイバルというムーブメントとして盛り上がっているとも考えられます。
ビートメイカーのフォテーとカルロス・ニーニョ(Photay with Carlos Niño)のコラボアルバム『An Offering』(デジタル・LP・カセット:2021年10月1日→2022年10月14日、International Anthem)と『More Offering』の2枚組CD『An Offering & More Offering』(国内盤CD:2022年12月14日、International Anthem / rings)でも心地いいサウンドスケープが展開されているので、ぜひ続けてお楽しみください!

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渡辺和歌
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