「本当にデビュー作?」というほど仕上がっているH.E.R.の『Back of My Mind』。
新しすぎず古すぎない、派手すぎず地味すぎないR&B、ネオソウルの神髄に触れましょう!
Contents
- 1 H.E.R.の経歴
- 2 アルバム『Back of My Mind』の概要
- 3 【1】We Made It
- 4 【2】Back of My Mind (feat. Ty Dolla $ign)
- 5 【3】Trauma (feat. Cordae)
- 6 【4】Damage
- 7 【5】Find A Way (feat. Lil Baby)
- 8 【6】Bloody Waters
- 9 【7】Closer To Me
- 10 【8】Come Through (feat. Chris Brown)
- 11 【9】My Own
- 12 【10】Lucky
- 13 【11】Cheat Code
- 14 【12】Mean It
- 15 【13】Paradise (feat. Yung Bleu)
- 16 【14】Process
- 17 【15】Hold On
- 18 【16】Don’t
- 19 【17】Exhausted
- 20 【18】Hard To Love
- 21 【19】For Anyone
- 22 【20】I Can Have It All (feat. DJ Khaled & Bryson Tiller)
- 23 【21】Slide (feat. YG)
- 24 おわりに
H.E.R.の経歴
R&Bシンガーソングライター(以下SSW)のH.E.R.(ハー)は1997年6月27日、米カリフォルニア州ヴァレーホ生まれ。
アフリカ系アメリカ人の父とフィリピン系アメリカ人の母の間に生まれ、幼少期からギター、ピアノ、ドラムなどの楽器を演奏し、作詞・作曲も始めました。
本名はガブリエラ・サルミエント・ウィルソン(Gabriella Sarmiento Wilson)、アーティスト名は「Having Everything Revealed」(すべてをさらけ出す)の頭字語です。
2010年2月に子供向けケーブルテレビチャンネル「ニコロデオン」のテレビ映画「School Gyrls」で女優デビュー。
2014年6月にガビ・ウィルソン(Gabi Wilson)名義のシングル「Something to Prove」で歌手デビューを果たした後、2016年9月にH.E.R.名義のデビューEP『H.E.R. Volume 1』をリリースしました。
ディスコグラフィ
- 1stコンピアルバム『H.E.R.』(2017年10月20日):第61回グラミー賞(2019年)最優秀R&Bパフォーマンス賞・最優秀R&Bアルバム賞受賞
- 2ndコンピアルバム『I Used to Know Her』(2019年8月30日):第62回グラミー賞(2020年)最優秀アルバム賞など5部門ノミネート
- シングル「I Can’t Breathe」(2020年6月19日):第63回グラミー賞(2021年)最優秀楽曲賞受賞
- ロバート・グラスパー「Better Than I Imagined (feat. H.E.R. & Meshell Ndegeocello)」(2020年8月27日):第63回グラミー賞・最優秀R&Bソング賞受賞
映画『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』(米:2021年2月、日本:劇場未公開)では主題歌「Fight for You」を担当。
さらに映画『カラーパープル』(米:1985年12月、日本:1986年9月)のミュージカル映画版『The Color Purple』(米:2023年12月20日公開予定)に女優として出演し、長編映画デビューを果たす予定です。
アルバム『Back of My Mind』の概要
https://youtu.be/yw2zN1_fwKk
デビューアルバム『Back of My Mind』(バック・オブ・マイ・マインド、以下BOMM)は2021年6月18日にリリースされました。
先行シングル5曲を含む全21曲、1時間19分あまりの大作です。
第64回グラミー賞(2022年1月31日、日本時間2月1日)の最優秀アルバム賞、最優秀R&Bアルバム賞、収録シングル「Damage」(2020年10月21日)は最優秀R&Bパフォーマンス賞、最優秀R&Bソング賞にノミネートされました。
【1】We Made It
アルバム収録5曲目のシングル「ウィー・メイド・イット」(2021年6月11日)。
マイケル・ジャクソンのカバー(5thアルバム『Off The Wall』収録)でも知られるキャロル・ベイヤー・セイガー(作・歌唱)「It’s The Falling In Love」(1978年、作・編曲:デイヴィッド・フォスター)のサンプルが使われています。
- 歌詞:Genius
【2】Back of My Mind (feat. Ty Dolla $ign)
ラッパーのタイ・ダラー・サインをゲストに迎えたタイトル曲「バック・オブ・マイ・マインド」。
Live Performance
「心の中にはまだあなたがいる」と切なく歌う失恋ソングです。
- 歌詞:Genius
【3】Trauma (feat. Cordae)
ラッパーのコーデーをゲストに迎えた「トラウマ」。
プロデューサーのヒットボーイが作・プロデュースで参加しています。
- 歌詞:Genius
【4】Damage
アルバム収録2曲目のシングル「ダメージ」。
MOBO Awards 2020
SSWのアント・クレモンズがコーラスで参加、トランペット奏者ハーブ・アルパート「Making Love in the Rain (feat. Janet Jackson & Lisa Keith)」(1987年7月、作・プロデュース:ジャム&ルイス)のサンプルが使われています。
Joel Corry Remix
DJ&プロデューサーのジョエル・コリーによるリミックスです。
Justin Credible Remix
DJのジャスティン・クレディブルによるリミックスもあります。
- 歌詞:Genius
【5】Find A Way (feat. Lil Baby)
ラッパーのリル・ベイビーをゲストに迎えた「ファインド・ア・ウェイ」。
Find A Way (feat. Lil Baby & Lil Durk)
リル・ベイビーとリル・ダークをゲストに迎えたバージョンはアルバムには収録されていませんが、シングルとして2021年9月17日にリリースされました。
- 歌詞:Genius
【6】Bloody Waters
血の雨が止まない人種差別に抗議する「ブラッディ・ウォーターズ」では、プロデューサーのケイトラナダが作・プロデュース、6弦ベーシストのサンダーキャットが作・ベースを担当しています。
- 歌詞:Genius
【7】Closer To Me
そっけない態度の恋人に欲求不満を募らせる「クローサー・トゥ・ミー」。
Live Performance
ネオソウルのSSWゴアペレ「Closer」(2001年3月)のサンプルが使われています。
- 歌詞:Genius
【8】Come Through (feat. Chris Brown)
ラッパーのクリス・ブラウンをゲストに迎えた、しっとり系デュエットソング「カム・スルー」。
Live Performance
2021年4月23日にリリースされた、アルバム収録4曲目のシングルです。
- 歌詞:Genius
【9】My Own
「マイ・オウン」ではイギリスのプロデューサーGradesとスクリブズ・ライリーを作・プロデュースに迎えています。
- 歌詞:Genius
【10】Lucky
「ラッキー」では、DJキャンパーが作・プロデュース(1・2・10・11・14・16曲目)、SSWのステイシー・バルシュがソングライティングに加わっています。
- 歌詞:Genius
【11】Cheat Code
「チート・コード」では、映画『ラブ・ジョーンズ』(米:1997年3月、日本:1998年7月)のOST収録曲Refugee Camp All-Stars「The Sweetest Thing (feat. Lauryn Hill)」(1997年3月、作:ローリン・ヒル)のサンプルが使われています。
- 歌詞:Genius
【12】Mean It
嘘つきの恋人に浮気され、「本気だったの?」と嘆く「ミーン・イット」。
モルドバ共和国出身のプロデューサー、ジェフ・ギテルマンが作・プロデュース(4・6・12・14:作のみ・18曲目)を手がけています。
- 歌詞:Genius
【13】Paradise (feat. Yung Bleu)
ラッパーのヤング・ブルーをゲストに迎えた「パラダイス」。
お互いに楽園を与え合うことを想像しているラブソングです。
- 歌詞:Genius
【14】Process
「プロセス」ではSSWのプリシラ・レネイ(プリシラ・レネア)、ラッパーのランチマネー・ルイスもソングライターとして名を連ねています。
- 歌詞:Genius
【15】Hold On
アルバム収録3曲目のシングル「ホールド・オン」(2020年10月27日)。
2021 CMT Music Awards
恋人がいても依存したり、失う不安にかられたりする葛藤が描かれたラブソングです。
- 歌詞:Genius
【16】Don’t
「ドント」では「私に頼らないで」と恋人を突き放し、相互依存状態から抜け出そうともがいています。
- 歌詞:Genius
【17】Exhausted
恋人との関係に疲れ切った様子が描かれた「エグゾウステッド」。
プロデューサー&ラッパーのダークチャイルド(ロドニー・ジャーキンス)を作・プロデュースに迎えています。
- 歌詞:Genius
【18】Hard To Love
アコースティックな「ハード・トゥ・ラヴ」では愛することの難しさを吐露。
カナダのSSW&プロデューサー、ナスリ・アトウェがソングライティングに加わっています。
- 歌詞:Genius
【19】For Anyone
「フォー・エニワン」では愛に溺れていることを自覚しながらも、失恋した相手を忘れられない虚しさが描かれています。
- 歌詞:Genius
【20】I Can Have It All (feat. DJ Khaled & Bryson Tiller)
DJキャレドとR&BのSSW&ラッパー、ブライソン・ティラーをゲストに迎えた「アイ・キャン・ハヴ・イット・オール」。
DJ Khaled「I CAN HAVE IT ALL (feat. Bryson Tiller, H.E.R. & Meek Mill)」
原曲は、DJキャレドの12thアルバム『Khaled Khaled』(2021年4月)収録曲です。
アルバム『BOMM』には、ラッパーのミーク・ミルを除いたH.E.R.名義の別バージョンとして収録されています。
- 歌詞:Genius
【21】Slide (feat. YG)
ラッパーのYGをゲストに迎えた、アルバム収録1曲目のシングル「スライド」(2019年9月27日)。
ラッパー、ジャーメイン・デュプリの2ndシングル「Money Ain’t a Thang (feat. Jay-Z)」(1998年5月)のサンプルが使われています。
- 歌詞:Genius
おわりに
20代半ばの女性らしい等身大のラブソングが軸になっていますが、アフリカ系とアジア系両方のルーツをもつ彼女ならではの人間愛、R&Bに根差した音楽愛とも受け取れるでしょう。
ブラック・ライブズ・マター運動やコロナ禍に象徴される激動の時代ですが、さまざまな葛藤を表現した歌詞と、中庸を保つ穏やかなサウンドに癒されたのではないでしょうか。