耳の早い音楽ファンが注目するアーティストのおすすめ曲を紹介します。
今回ピックアップするのは群馬県桐生市を拠点に活動する、どんぐりず。
森(ラップと歌)とチョモランマ(歌とラップ、トラックメイク)による2人組ユニットです。
・ジャンルを縦横無尽にクロスオーバーしていて音楽性が多彩
・音源、映像、アートワークをセルフプロデュースしている
・ディープなサウンドとユーモラスなグルーヴのギャップがおもしろい
上記の注目ポイントを押さえつつ、唯一無二の存在、どんぐりずの世界に浸りましょう。
Contents
どんぐりず
■1st EP『4EP1』収録曲
まずは「Dance」がテーマの1st EP『4EP1』(2021年2月リリース)収録曲から紹介します。
【1】NO WAY
・どんぐりず「NO WAY」
森のラップがフィーチャーされた「NO WAY」。
tiki dang dang no way
NO WAY/作詞:どんぐりず 作曲:どんぐりず
曲名の「NO WAY」は「あり得ない」とか「マジで?」といったニュアンスです。
待つだけじゃなく好きなようにやろうぜ!
そんなメッセージが独特な言葉遣いで表現されています。
チョモランマによるドラムとベースがループするテックハウス(※注1)っぽいトラックは、聴いているうちにリズムの裏表が怪しくなるほど中毒性があります。
※注1:テクノ+ハウス
■シングル
続いてアルバムやEPなど未収録のシングルを紹介します(2021年5月時点)。
【2】マインド魂
3rdシングル「マインド魂」(2020年8月)は、テレビ朝日「関ジャム 完全燃SHOW」の企画「プロが本気で選んだ2020年のマイベスト10曲」(2021年1月放送)で川谷絵音により7位に選ばれました。
MY MIND
ゆうとりますけど
マインド魂/作詞:どんぐりず 作曲:どんぐりず
チョモランマによるグルーヴィーなボーカルとマッシヴ・アタックのトリップホップ(※注2)っぽいトラック、森のパンチライン「ゆうとりますけど」などの繰り返しによって不思議な浮遊感が漂います。
※注2:ヒップホップ+テクノ+ダブ+ブレイクビーツ
【3】jumbo
どんぐりずは1stシングル「jumbo」(2020年4月)でビクターエンタテインメント内レーベルCONNECTUNE(コネクチューン)からデビューしました。
曲名の「ジャンボ」はもともとアフリカゾウの名前でしたが、そこから一般的に「巨大」を表す言葉として使われています。
その点を踏まえると、まるで「どんぐりずは大物になる!」と宣言しているかのようです。
ただユニット名のどんぐりずにさえ意味はなく、無意味にふざけ続けるとも受け取れます。
たしかに森のオールドスクールを意識したラップ、チョモランマのR&Bシンガー然としたボーカルは(本気で)ふざけています。
■3rdアルバム『baobab』収録曲
ここからは3rdアルバム『baobab』(2020年4月)収録曲を紹介します。
【4】nadja
2ndシングル「nadja」(2020年6月)は前述の「関ジャム」企画で蔦谷好位置により10位に選ばれました。
曲名「nadja」のヒントとなるのは、フランスのシュルレアリスム作家ブルトンの自伝小説『ナジャ』。
その小説に登場する、娼婦のような女性の名前がナジャです。
俺らはyellowmen 金叩きなboy
nadja/作詞:どんぐりず 作曲:どんぐりず
まるで娼婦を演じているみたいな森(ラップ)とチョモランマ(歌)の掛け合い、トラップ(※注3)やフューチャーソウル(※注4)っぽいトラックもシュールに仕上がっています。
※注3:ダブステップ+ハードコア・ヒップホップ
※注4:ソウル+ポップ+エレクトロニカ+ダブステップ+ヒップホップ
【5】dambena
「dambena」は森の早口ラップとベースミュージック(※注5)のサブジャンル、トラップのどんぐりず流解釈が秀逸です。
曲名「dambena」の由来は群馬弁「だんべな」。
語尾につける方言で、音楽的な響きがするから取り入れたそうです。
どんぐりず自身による映像作品企画「ダンベイズム」ともリンクします。
※注5:クラブミュージック+ヒップホップ
【6】powerful passion
MV(2019年6月公開)の中毒性が高いと評判の「powerful passion」。
ポール・マッカートニー「ワンダフル・クリスマスタイム」(1979年11月)などのオマージュもキャッチーです。
■2nd アルバム『愛』収録曲
2018年1月にリリースされた2ndアルバム『愛』から4曲紹介します。
【7】like a magic
全編英語の「like a magic」は油断するとおしゃれなシティポップとメロウなラップの融合に聴こえます。
ロバ-タ・フラック「やさしく歌って」(1973年1月)やフージーズ「キリング・ミー・ソフトリー」(1996年5月)のオマージュも混ざっている感じ。
ところがMVの日本語字幕を見ると、歌詞はおしゃれとは程遠い内容です。
曲名通り「魔法みたい」にふざけていることがわかります。
【8】GAKUREKI
どんぐりずは森とチョモランマが中学生のとき、アコースティックギターの弾き語りユニットとして結成されました。
1stアルバム『世界平和』(2015年10月)をリリースした高校生の頃はバンド編成でした。
そんな「おふざけ系ハードコアバンド」時代の名残を堪能できるのが「GAKUREKI」です。
真面目に考えると重い「学歴」がテーマとして扱われていますが、サウンドが重く真剣になるほど悩みが軽くなるような不思議な感覚に襲われます。
【9】わっしょい!
群馬県桐生市を含む両毛地域の民謡「八木節」がサンプリングされた「わっしょい!」。
MV(2017年8月)では、どんぐりずの地元で毎年8月に開催される「桐生八木節まつり」の賑わいを見ることができます。
日本語、英語、中国語、レゲエ風、タガログ語、オールドスクールという多彩なラップがご機嫌なお祭りソングです。
【10】Oh Gi Mama
なぜか教育評論家、尾木直樹の愛称「尾木ママ」と絶叫する「Oh Gi Mama」。
そのオマージュ元は韓国のラッパーKeith Ape(キース・エイプ)「It G Ma」(2015年1月)です。
・Keith Ape「It G Ma」
たしかに「忘れるな」という意味の韓国語「イッジマ」と絶叫しています。
「イッジマ」が「尾木ママ」に聴こえるというか、言葉の意味ではなく音楽的な響きを重視して変換しているところがツボです。
さらにKeith Ape「It G Ma」のオマージュ元はアメリカのラッパーOG Maco(オージー・マコ)「U Guessed It」(2014年9月)。
・OG Maco「U Guessed It」
2つのオマージュ元から暗く重めなトラップビートと怒り叫ぶハードコア・ヒップホップを融合させる手法を受け継ぎつつ、どこかユーモラスな楽曲に仕上げているところがどんぐりずの醍醐味です。
■最後に
【11】「E-jan」
過去にさかのぼる流れでどんぐりずのおすすめ曲を紹介しました。
さらに過去にはバンド形態の1stアルバム『世界平和』や弾き語りによるマキシマム ザ ホルモン「ぶっ生き返す!!」のカバー(2014年4月)などもあります。
4枚組EPの第1弾『4EP1』(テーマ:Dance)は「E-jan」など6曲ともおすすめ。
2021年5月時点で今後のリリース予定は次の通りです。
・『4EP2』(Funk / Afrobeat / Dub):2021年7月
・『4EP3』(Hip Hop):2021~22年
・『4EP4』(Pop / R&B / Soul):2021~22年
ジャンルの多様性はもちろん、セルフプロデュース力が優れており、さまざまなチャレンジによって急激に成長し続けていることがわかります。
そもそも独特なセンスの塊である2人がさらに成長したら…と想像するだけで末恐ろしいです。
つかみどころのないどんぐりずが転がるままに追いかけていきましょう。
■どんぐりず
・Web:https://dongurizu.com
・Twitter:https://twitter.com/dongurizu
・Instagram:https://www.instagram.com/dongurizu/
・YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCRusZRTsF7EqCcHGJ_Cgrpw