ブレンダン・エダー・アンサンブル(Brendan Eder Ensemble)の『Therapy』は電子音楽、パンク、ダブ、ロックステディ、ヒップホップ、ブレイクビーツ、ファンクなどの影響も受けた作曲家とジャズ、クラシックのアンサンブルの融合。
希代の電子音楽家リチャード・D・ジェームス(Richard David James)ことエイフェックス・ツイン(Aphex Twin)のカバーもあり、至極の境地へと誘ってくれます。
Contents
- 1 はじめに
- 2 【1】QX 2021
- 3 【2】Pure (Ride the World)
- 4 【3】Ending (feat. Ethan Haman)
- 5 【4】Solace (feat. Nailah Hunter)
- 6 【5】Isn’t it True (feat. Henry Solomon)
- 7 【6】#3 (Rhubarb) – Aphex Twin cover
- 8 【7】Interlude
- 9 【8】aaaaaa (no more)
- 10 【9】#17 – Aphex Twin Cover
- 11 【10】137 Riddle
- 12 【11】#20 (Lichen) – Aphex Twin cover
- 13 おわりに
はじめに
米ロサンゼルス(LA)出身、旧カレッジ・オブ・サンタフェ(College of Santa Fe)で音楽を学んだ作曲家&プロデューサー&マルチ奏者(ドラム、ピアノ)、ブレンダン・エダー(Brendan Eder)。
Brendan Eder Ensemble – THERAPY. Out today. Recorded primarily in a church outside of Los Angeles, the album bridges classical, jazz, and ambient sounds with meditative and sometimes evocative acoustic compositions. #AmbientMusic #jazz #BandcampFriday https://t.co/B6ezbhvs65 pic.twitter.com/BqXqedcOqq
— Brendan Eder (Ensemble) (@Brendan_Eder) March 3, 2023
Brendan Eder Ensemble
- 『Brendan Eder Ensemble』2015年8月24日、Brendan Eder Ensemble
- 1st AL『To Mix With Time』2020年4月24日、Brendan Eder Ensemble
- 2nd AL『Cape Cod Cottage』2021年9月10日、Jazz Dad Records / astrollage
「作品の構想を練っていた時期に、ちょうど僕にとって大切な人が亡くなったからなんだ。」悲しみを乗り越えるために創られた『Cape Cod Cottage』の制作秘話、ブレンダン・エダーの音楽的バックグラウンドを解き明かす。
— Brendan Eder 『Cape Cod Cottage』インタビュー https://t.co/72jzxGpwGH
— astrollage (@astrollage_JP) February 20, 2023
Therapy
ブレンダン・エダー・アンサンブル名義の3rdアルバム『Therapy』(2023年3月3日、Brendan Eder Ensemble)は、先行シングル&EP4曲を含む、全10曲・41分あまり。
国内盤CD(2023年5月24日、astrollage)は、ボーナストラック「#20 (Lichen) – Aphex Twin cover」を含む、全11曲です。
作・プロデュース・ミックスを務め、キーボードとパーカッションを奏でるブレンダン・エダーを含め、総勢12人によるアンビエント&ニューエイジ、クラシック&ジャズのサウンドが融合した室内楽。
「エイフェックス・ツインによる室内アンサンブル&教会オルガンチャレンジ」をイメージして制作され、主にカリフォルニア州アルカディアにある教会(Church of the Good Shepherd)で演奏&録音されました。
THERAPY, limited edition CDs and shirts available in Japan via @astrollage_JP + @diskunion_jazz #ambient #classicalcrossover #woodwinds #Jazz #music https://t.co/ezHbLovxbM
— Brendan Eder (Ensemble) (@Brendan_Eder) March 20, 2023
クレジット:M1~10
- クリスティーン・タヴォラッチ(Christine Tavolacci):フルート、ピッコロ
- ヘンリー・ソロモン(Henry Solomon):アルトサックス
- アンバー・ワイマン(Amber Wyman):バスーン(ファゴット)
- アンドリュー・コンラッド(Andrew Conrad):B♭クラリネット、バスクラリネット(M2・4~7)
- セルジオ・コエーリョ(Sérgio Coelho):B♭クラリネット、バスクラリネット(M1・3・8~9)
- エリック・マッキャン(Eric McCann):エレキベース(M1~3・6・8)、アシスタントエンジニア
- ブレンダン・エダー:キーボード、パーカッション(M2・4~6・8~10)、作曲(M1~5・7・8・10)、プロデュース、ミックス
- リア・ポール(Leah Paul):フルート(M1・9)
- イーサン・ハマン(Ethan Haman):オルガン(M3)
- ナイラ・ハンター(Nailah Hunter):ハープ(M4)
- ローガン・ケイン(Logan Kane):アップライトベース(M10)
- マリッサ・ホンダ(Marissa Honda):イングリッシュホルン(M10)
営業職をしながら映画『ミッドサマー』『ヘレディタリー』のアリ・アスター監督などの制作に関わってきたという異色の経歴を持つドラマー/作曲家の”Brendan Eder”による2023年待望の3rdアルバムが到着。大推薦盤。 pic.twitter.com/VJEtQtwtkS
— Kankyōrecords (@kankyorecords) April 1, 2023
【1】QX 2021
第1弾シングル「QX 2021」(2022年10月7日)はフルート2人、クラリネット、アルトサックス、ファゴット、エレキベースのセクステット。
ミニマルなフレーズの繰り返しは電子音楽の手法ですが、ドラマーでもあるブレンダン・エダーがドラムを演奏せず(ビートレス)、木管楽器とエレキベースによる温かみのあるサウンドが多層的に織りなされています。
抜け感のある空間の響きが極上です。
Happy to see Classical Music is trending, @AppleClassical has been launched, and the pushback against BBC's cutting classical funds. So here's my crossover-classical ensemble performing in a church outside of Los Angeles. #ClassicalMusic #appleclassical #composer #woodwinds pic.twitter.com/J3hVH4XGvt
— Brendan Eder (Ensemble) (@Brendan_Eder) March 31, 2023
【2】Pure (Ride the World)
先行リリース第4弾のEP表題曲「Pure (Ride the World)」(2023年2月4日)。
ブレンダン・エダーの演奏も加わり、穏やかながらも徐々に盛り上がった後、静謐に締めくくられる流れが心地いいでしょう。
【3】Ending (feat. Ethan Haman)
第3弾シングル「Ending」(2023年1月13日)でフィーチャーされているのは、オルガン奏者イーサン・ハマン。
イェール大学(コネチカット州ニューヘイブン)のウールジー・ホールにあるニューベリー・メモリアル・オルガンの演奏が荘厳に響きます。
【4】Solace (feat. Nailah Hunter)
2020年のパンデミック時にリモートでEPを制作した女性4人組ニューエイジグループGaldre Visionsのメンバーでもある、LAのハープ奏者&作曲家ナイラ・ハンターを迎えた「Solace」。
曲名どおり、ネガティブな感情が浄化される癒しの音楽になっています。
【5】Isn’t it True (feat. Henry Solomon)
「Isn’t it True」でフィーチャーされているのは、LAのサックス奏者&作曲家&プロデューサーのヘンリー・ソロモン。
同じくLAのベーシスト&作曲家ローガン・ケインらと共に5人組ファンクパンクバンド、サンパザウルス(Thumpasaurus)のメンバーで、ルイス・コール(Louis Cole)やハイム(HAIM)ともコラボしています。
これほど穏やかなジャズも吹けるのかと、バンドとのギャップに驚く人もいるのではないでしょうか。
ブレンダン・エダーはスタインウェイのコンサートグランドピアノ、1930年製モデルDを奏でているようです。
【6】#3 (Rhubarb) – Aphex Twin cover
第2弾シングル(2022年11月4日)は、エイフェックス・ツインの2ndアルバム『Selected Ambient Works Volume II』(1994年3月7日、Warp / Sire)の3曲目「#3 (Rhubarb)」のカバー。
エイフェックス・ツインといえばドリルンベースの激しいサウンド、およびエッジの効いたジャケットやMVの印象が強いものの、そもそもアンビエントから始まっている点を踏まえると、ブレンダン・エダーが作曲家を志すきっかけとなったのもうなずけるでしょう。
アナログ盤ではこの6曲目からB面で、カバーをB面にまとめたと考えられますが、A面のオリジナル5曲とカバーが違和感なくつながる構成も秀逸です。
エイフェックス・ツイン「#3 (Rhubarb)」
【7】Interlude
カバーとオリジナルをつなぐためのインタールードといったところでしょうか。
【8】aaaaaa (no more)
オリジナルの「aaaaaa (no more)」もエイフェックス・ツインのカバーに溶け込んでいます。
【9】#17 – Aphex Twin Cover
エイフェックス・ツインの2ndアルバム17曲目「#17 (Z Twig)」のカバー。
ピッコロ、フルート、クラリネット、アルトサックス、ブレンダン・エダーのオルガンという編成で演奏されています。
まるで天使が飛び跳ねるかのような美しい残響が印象的。
映像の最初と最後でひょっこり顔をのぞかせるブレンダン・エダーもお茶目です。
エイフェックス・ツイン「#17 (Z Twig)」
【10】137 Riddle
まず、制作中の楽曲のテンポが137BPMだったので、仮タイトルを「137 Riddle」(137 謎)にしたそうです。
ざっくりスローテンポ(~80BPM)、ミドルテンポ(80~120BPM)、アップテンポ(120BPM~)とすると、アップテンポになるでしょう。
次に、137という数字が気になって調べてみると、理論物理学者ヴォルフガング・パウリ、錬金術、数秘術、ユング心理学などとつながりがあることに気づいたようです。
しかも、アルバム制作中にインスパイアされたテーマ「物理的な次元と精神的な次元、臨死体験(NDE)、神智学とアートの境界」と合致したとのこと。
ブレンダン・エダー自身、突然恋人が亡くなる経験をしているので、こうした研究の果てに音楽へと昇華する必要があったのかもしれません。
そう考えるとなおさら魂に響くのではないでしょうか。
【11】#20 (Lichen) – Aphex Twin cover
- アンバー・ワイマン:ファゴット
- ヘンリー・ソロモン:アルトサックス
- サラ・ロビンソン(Sarah Robinson):フルート
- Vincent Camuglia:クラリネット
- ローガン・ケイン:エレキベース
- ブレンダン・エダー:ドラム、プロデュース、アレンジ
ボーナストラックはエイフェックス・ツインの2ndアルバム20曲目「#20 (Lichen)」のカバー。
LAのジャズベーシスト、サム・ウィルクス(Sam Wilkes)も2曲参加した、ブレンダン・エダー・アンサンブルの1stアルバム『To Mix With Time』の収録曲で、その第4弾シングルとして先行リリースされました(2020年3月6日)。
「#20 (Lichen)」のカバーが最初で、アルバム『Therapy』の制作へとつながったという流れです。
そもそもリチャード・D・ジェームスという本名にも、エイフェックス・ツインというアーティスト名にも、生後間もなく亡くなった双子の兄への追悼の意が込められていることまで深読みすると、さらに染みるかもしれません。
#20 (Lichen) (Yorkshire Modular Society Remix)
エイフェックス・ツイン「#20 (Lichen)」
おわりに
ブレンダン・エダー・アンサンブルの2ndアルバム『Cape Cod Cottage』には、LAのサックス&キーボード奏者・作曲家ジョシュ・ジョンソン(Josh Johnson)も1曲参加しています。
ジャンルで分断されることなく、おもしろい音楽が融合するLAシーン。
とくに『Therapy』のアンビエント、クラシカル、ジャズの絶妙なブレンド具合は、コロナ後の時代感と非常に合っている気がします。
「今こそ生の温もりのある優しいエイフェックス・ツインが聴きたい」を実現してくれた功績は計り知れないのではないでしょうか。
アルバムごとにコンセプトやテーマが異なっているので、今後の展開も楽しみです。
@astrollage_JP から、ブレンダン・エダー・アンサンブルの新作『THERAPY』をCDリリースしました。
カリフォルニアの教会で録音された、Aphex Twinのカバーも含めた彼らしいコンセプチャルなアンビエント作品。ライナーノーツは、山本勇樹さん。Tシャツセットもありますよ。https://t.co/Tjw9XeERDT pic.twitter.com/cn9r4z1qPa— dj funnel(astrollage) (@FuN_NeL) May 24, 2023
リンク
- AllMusic:Brendan Eder、Brendan Eder Ensemble
- Discogs:Brendan Eder、Brendan Eder Ensemble、Therapy
- astrollage/STORES:Therapy/国内盤CD、CD&Tシャツ
- Link in Bio:Brendan Eder
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- Link:Therapy、QX 2021、#3 (Rhubarb)、Ending
- YouTube:Brendan Eder、Topic、Topic、Therapy
- Tower Records:Brendan Eder、Brendan Eder Ensemble、Therapy、国内盤CD、輸入盤LP
- HMV:Brendan Eder、国内盤CD
- disk union:Brendan Eder、Therapy、国内盤CD、輸入盤LP
- DIW PRODUCTS:Brendan Eder、Brendan Eder Ensemble、国内盤CD
- OTOTSU:Brendan Eder、Brendan Eder Ensemble
- Kankyō Records(東京・三軒茶屋):Brendan Eder、Brendan Eder Ensemble、輸入盤CD、輸入盤LP、Green Vinyl
- 芽瑠璃堂(埼玉・坂戸):Brendan Eder、国内盤CD、輸入盤LP
- Hachi Record Shop and Bar(京都・河原町五条):輸入盤LP
- Spotify:Brendan Eder、Brendan Eder Ensemble、Therapy
- Apple Music:Brendan Eder、Brendan Eder Ensemble、Therapy
- Bandcamp:Brendan Eder、Therapy
- SoundCloud:Brendan Eder