愛知のインストバンドOavette(オーベット)による結成10周年の集大成『Oavette LP』は、ポストロックやマスロックのファンはもちろん、ダンスミュージック、電子音楽、アンビエントのリスナーにも刺さる名盤です。
はじめに
2012年結成、愛知・名古屋発の4人組インストバンド、Oavette(オーベット)。
メンバー
- Yuto Tamei(為井悠男):ギター
- Genki Nishikawa:ギター
- Takuma Mori:ベース
- Hayato Ota(太田隼人):ドラム
ミニマルポリリズムミュージックバンド Oavette(オーベット)、Shellacのボブ・ウェストンがマスタリングを務めた1stアルバムをLPとしてリリース!- ニュース | Rooftop https://t.co/bx1GYiXbrm pic.twitter.com/4UMoFsbnyL
— Rooftop|ライブハウス連動型webマガジン (@rooftop1976) September 6, 2023
- 前列、後列:左→右:Hayato Ota、Genki Nishikawa、Yuto Tamei、Takuma Mori
Oavette「Atlas / Nix (Dawn of Midi)」
ポリリズムを駆使したミニマルなポストロック、マスロックを展開するバンドサウンドは、まさに人力テクノ、人力ダンスミュージック。
ドーン・オブ・ミディ『Dysnomia』
カバーを披露している、米NYのジャズトリオ、ドーン・オブ・ミディ(Dawn of Midi)のほか、モグワイ(Mogwai)、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ(Explosions In The Sky)、メイビーシーウィル(Maybeshewill)、ゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラー(Godspeed You! Black Emperor)、バトルス(Battles)、ファラケット(Faraquet)、トータス(Tortoise)、マセラティ(Maserati)、チューリング・マシン(Turing Machine)、テクノ系ではベン・クロック(Ben Klock)、ブリアル(Burial)、アクフェン(Akufen)、ジャズ系ではニック ・ベルチュ(Nik Bärtsch)、ポストクラシカル系ではニルス・フラーム(Nils Frahm)、オーラヴル・アルナルズ(Ólafur Arnalds)、国内勢ではdowny(ダウニー)、MONO(モノ)、envy(エンヴィー)、LITE(ライト)、BALLOONS(バルーンズ)、OVUM(オーヴァム)、kacica(カシカ)などの影響を受けているそうです。
イベント当日Rupurizuしか見れなかったが、コロナ禍以降バンド界隈で、ある種のレギュレーションチェンジが起きている中、KAWAII JAZZの微弱な発音、ミニマルなパフォーマンスとアンサンブルはかなりの問題提起だ。Dawn of Midi直系のOavetteはこれからより飛躍し新ジャンルとなり得るだろう。 pic.twitter.com/dfaH3nwQy4
— Akira Kawasaki (mouseonthekeys) (@akiramouse) September 28, 2023
Oavette LP
1st アルバム『Oavette LP』(2023年9月13日、TOKEI RECORDS)は、全8曲・約38分。
既発の1st EP『Oavette』(2019年3月6日、TOKEI RECORDS)、および石川・金沢発の5人組ポストハードコアバンドRole(ギター&作曲のJunki Morimoto(森本順喜)さんとOavetteのYuto Tameiさん&Hayato Otaさんは元emi)との2枚組スプリットアルバム『28|29』(2021年8月11日、TOKEI RECORDS)の1枚に相当するスプリットEP『Oavette 2』収録の全8曲が再録音&リマスタリングされました。
Yuto Tameiさんの出身地でもある富山のレーベルTOKEI RECORDS(主宰:山内コウイチ(山内晃一)さん / interior palette toeshoes)からリリースされた、Oavette結成10周年を記念する傑作です。
クレジット
- Naohiro Asakura(朝倉直浩)、middle cow creek falls / vivarta(nostos):レコーディング、ミックス
- ボブ・ウェストン(Bob Weston) / シェラック(Shella) / シカゴ・マスタリング・サービス(Chicago Mastering Service):マスタリング(フィジカルのみ、デジタルとは異なる)
【New Release】
Oavette LPが発売になりました!活動の集大成として拘り抜いた1枚を是非フィジカルで手に入れて下さい!
We are very excited to announce that our first album, Oavette LP, is out today on both physical and digital formats from @TOKEIRECORDS!https://t.co/IQYdJjipTl https://t.co/FhembPmEQn pic.twitter.com/GHRNWvOw35— Oavette (@oavette) September 12, 2023
【1】SUA
オープニングを飾る「SUA」。
電子音楽のミニマルテクノのようなサウンドにもかかわらず、ギター2本とベース、ドラムで演奏しているという人力スタイルに衝撃を受けます。
ポストロックやマスロックを大まかにハードコア寄りの轟音系と音響系の2種類に分類すると、変則的なリズムのドラムにミニマルなギターフレーズとストイックなベースを組み合わせる手法は音響系の極みといえるでしょう。
ところが「カンッ」と刺すようなスタブ(Stab)音が入ることによって少しずつ展開が変わるところは、EDMやベースミュージックなどの電子音楽の常套手段です。
楽器演奏による微妙な揺らぎをバンドサウンドの醍醐味として堪能しつつ、全員が全体を俯瞰していなければ成立しない緻密な構成に驚かされます。
【Live】octo presents@LIVE SPACE CONPASS
- 00:05【1】SUA
- 02:45【2】TROODON
- 09:37【6】NEUS
- 15:07【4】ANIG
Oavetteリハからキレキレちゃん pic.twitter.com/arQyix3ojj
— 山本淳平 (@jpdrms) January 20, 2024
【2】TROODON
ハイハットのシャカシャカ音とキレキレのスネアの組み合わせが心地いい「TROODON」。
光の粒が舞うようなギター、大地をうごめくようなベース、それぞれのリズムが淡々と積み重ねられ、独特のグルーヴが生み出されます。
ダンスミュージックのブレイクみたいにスネアが引き算され、リムショットで締めくくる後半の展開も圧巻です。
【新入荷】
Oavette : Oavette LP [LP]
愛知県の4人組ポスト・ロック・バンドOavetteの1stフルアルバム。これまでの2作のCDEPの音源を再録音、ShellacのBob Westonによるマスタリングにてアナログ盤でリリース。盤はTransparent Green Vinyl。ダウンロード・コード付き。https://t.co/wQm4Yqg6Wi— Linus Records (@linusrecords) September 15, 2023
【3】GREETING
ポリリズムの嵐「GREETING」は、踊らないダンスミュージックIDMを想起させながらもグルーヴィー。
瞑想的なアンビエントとして没入感に浸ることもできます。
https://twitter.com/1020distro/status/1701777050368156024
【4】ANIG
空関系エフェクターを活用したギターが、シンセのドローンのように響く「ANIG」。
リズムギター、低音ベース、タイトなドラムと相まって、バンドサウンドなのに電子音楽のアンビエント・ドローンを聴いているような不思議な感覚に誘われます。
【Live】ANIG@Studio246
【5】ZF
引き続き、2本のギターが空間系とリズムに振り分けられている「ZF」。
演奏形態は音響系ポストロックに分類されますが、奏でられているサウンドはダブステップや2ステップと不穏なドローンを掛け合わせた、ブリアル(Burial)を彷彿とさせる電子音楽のようです。
SSオープンしました!https://t.co/JsnRRslUW6 pic.twitter.com/qbpqieae5r
— stiffslack (@stiffslack) October 30, 2023
【6】NEUS
一糸乱れぬアンサンブルに度肝を抜かれる「NEUS」。
ギター、ベース、ドラムの音をきっちり合わせたり微妙にずらしたりしながら畳みかけられるグルーヴに酔いしれます。
富山の独立系音楽レーベル「TOKEI RECORDS」が、8月11日に「Role(ロール)」と「Oavette(オーベット)」の2枚組スプリットアルバム「28|29」を発売しました。オーベットのギター・作曲担当の為井悠男(ゆうと)さんは富山市出身です。https://t.co/kLvtNKuxBD
— 富山経済新聞 (@tymkeizai) August 12, 2021
【7】QUET
ゆらゆら揺れながらのチルアウトに適したダンスミュージックのような「QUET」。
箏(こと)、三味線、和太鼓、銅鑼などの和楽器のようにも響いたり、ブレイクやドロップ(サビ)のあるクラブミュージックのような構成だったり、シンセによる電子音楽のようでもあり、いったい何を聴いているのか、とまどう感覚がクセになります。
【Live】QUET@stiffslack Venue
【8】JAVV
ラストを締めくくる「JAVV」。
空関系のギターが存在感を増し、音響系ポストロックバンドならではのアンサンブルだったことに気づかされる着地点です。
【インタビュー】
Role × Oavette『28|29』北陸ルーツ、〈ただのバンドサウンドではない〉2組がスプリットEPを語る#Role #Oavette #TOKEIRECORDShttps://t.co/jIxgKiBvh9 pic.twitter.com/KkZRxyT1zR— Mikiki タワーレコードの音楽ガイドメディア (@mikiki_tokyo_jp) October 12, 2021
おわりに
筆者個人としては、ご時世的にも音楽の進化&深化の流れ的にもアンビエントに注目するなかで、ジャズ、R&B、フォークだけでなく、ヒップホップのほか、ポストロック、マスロック、クラウトロックまで、音響派やエクスペリメンタル(実験音楽)などを経由してアンビエントに接近しているという驚きがありました。
トータス(Tortoise)のギタリスト、ジェフ・パーカー(Jeff Parker)の次なる展開といえるかもしれません。
Oavetteがストイックに追求している音楽は、ジャンルや国を超越した最先端のサウンドではないでしょうか。
無事、台湾公演終了しました。RupurizuもUS:WEも最高でした!次回は2/2(金)下北沢ERAです、よろしくお願いします!
Thank you, Taiwan! Up next: Oavette hits Tokyo again. The show will be the last performance of the Oavette LP release tour! pic.twitter.com/wrWUbeNyc6
— Oavette (@oavette) January 21, 2024
Rupurizu『binarius-ab』
Oavetteと対バン公演もしている3人組バンドRupurizu(ルプリズ:中川暁生さん、番長さん、山本淳平さん、サポートメンバー松崎幹雄さん)のアルバム『binarius』(2023年7月14日、SAY HELLO TO NEVER RECODINGS、EP『binarius-ab』&EP『binarius-ad』)にも、これまでのポストロックバンドによる人力ダンスミュージックを刷新する先鋭さが感じられます。
明日、今年最初のライブをOavetteと共に、台北REVOLVERにて行います。
"Rupurizu x Oavette TOUR 2024"
2024/1/20(sat)@REVOLVER,TAIPEI-ACT-
US:WE
Oavette
RupurizuOPEN 19:00 / START 19:30
DOOR 800TWD pic.twitter.com/QptS7I3YXV— Rupurizu (@Rupurizu_) January 19, 2024
エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ『End』
Oavetteのメンバーも影響を受けている、米テキサスのポストロックバンド、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ(Explosions In The Sky)は、7年ぶりにアルバム『End』(2023年9月15日、Temporary Residence Ltd.)をリリースしました。
[PRE-ORDER] Explosions in the Sky – End
7年ぶりの新作が登場!最も壮大なアルバムであり、初期のレコーディングの静かな抑制と破砕感を後期作品のオーラルな探求と華麗な実験性とを融合させた作品。https://t.co/C5eQ2ZeNS0
— Inpartmaint Inc. (@inpartmaint) August 25, 2023
空間現代『Tracks』
2006年結成、早稲田大学出身、京都でライブハウス外を運営する3人組エクスペリメンタルロックバンド空間現代(Kukangendai)のアルバム『Tracks』(2023年4月26日、Leftbrain / HEADZ)も、Oavetteと通じるところがあるでしょうか。
新作アルバム『Tracks』をHEADZ内のレーベルLeft Brainよりリリースします。
4/26に配信、5/31にCD発売。録音/ミックス/マスタリングは益子樹、ジャケットデザインは石塚俊。
本日より先行曲『Beacons』を公開しています。https://t.co/ZUmKeZ78n4https://t.co/qmkL2GE1Rjhttps://t.co/0P5uV3dxS7 pic.twitter.com/cmYWvGGM8i— 空間現代 (@kukangendai) April 13, 2023
ネイト・スミス『Pocket Change 2: Mad Currency』
米NYのジャズドラマー&作曲家&プロデューサー、ネイト・スミス(Nate Smith)のドラムソロアルバム第2弾『Pocket Change 2: Mad Currency』(2023年12月14日、Waterbaby Music)も、人力のドラムによるリズムやグルーヴが超絶です。
Please join me in wishing the great @natesmithdrums a very happy b-day! Celebrate by streaming his brand new release, Pocket Change 2: Mad Currency on all platforms and download his loop pack here: https://t.co/LgIq0pas3z #brushes #birthday #natesmith #pocketchange pic.twitter.com/0IbBMfOxyn
— Yurt Rock (@YurtRock) December 15, 2023
シャルルマーニュ・パレスタイン『DINGGGDONGGGDINGGGzzzzzzz ferrrr SSSOFTTT DIVINI TIESSSSS!!!!!!!!!』
ラ・モンテ・ヤング(La Monte Young)、テリー・ライリー(Terry Riley)、フィリップ・グラス(Philip Glass)、スティーヴ・ライヒ(Steve Reich)と並ぶミニマルミュージックの大御所シャルルマーニュ・パレスタイン(Charlemagne Palestine)のアルバム『DINGGGDONGGGDINGGGzzzzzzz ferrrr SSSOFTTT DIVINI TIESSSSS!!!!!!!!!』(2023年12月1日、Blank Forms Editions)もどうぞ。
https://twitter.com/tobirarecords/status/1734768621992411267
ディスコグラフィ
- VA『LOOKS』2018年1月10日、TOKEI RECORDS
- 1st EP『Oavette』2019年3月6日、TOKEI RECORDS
- VA『LIVE: I. Japan』2021年6月30日、Fecking Bahamas
- Role / Oavette『28|29』(ZOHAR / Oavette 2)2021年8月11日、TOKEI RECORDS
リンク
- Discogs:Oavette、Oavette LP、TOKEI RECORDS
- Website:Oavette
- TOKEI RECORDS:Oavette、Oavette LP、Shop/Oavette LP/LP
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- Linus Records(東京・谷中):Oavette、Oavette LP/LP
- Bridge(東京・学芸大学):Oavette、Oavette LP/LP
- 芽瑠璃堂(埼玉・坂戸):Oavette、Oavette LP/LP
- TEN-TWENTY DISTRO(新潟・ディストロ):Oavette、Oavette LP/LP
- stiffslack(愛知・名古屋):Oavette LP/LP
- FLAKE RECORDS(大阪・南堀江):Oavette、Oavette LP/LP
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