音楽

BREIMEN「あんたがたどこさ」歌詞を考察!多様性が詰まった超絶ファンク!

5人組ミクスチャーファンクバンドBREIMEN(ブレイメン)の「あんたがたどこさ」は、実機にこだわった超絶演奏が話題!
童歌(わらべうた)を引用した歌詞にも注目してみましょう。

はじめに


BREIMENは2014年の終わり頃、6人組オラオラポップバンドの無礼メンとして活動を開始し、2018年2月にドラム田中”グルーヴ”航さん、2018年7月にボーカルSEIさん脱退

https://twitter.com/ototoy_info/status/1488436964667711489

  • 高木祥太(中央):ボーカル&ベース、1995年2月20日、神奈川
  • サトウカツシロ(左端):ギター、1993年11月30日
  • いけだゆうた(右端):キーボード、1991年11月9日、宮城・千葉
  • ジョージ林(左中):サックス、1987年7月22日、神奈川
  • So Kanno(右中):ドラム、1997年9月11日、北海道

2018年7月にドラムのSo Kannoさんが加入し、ベースの高木祥太さんがボーカルを兼任する現体制の5人組ファンクバンドになり、2020年1月、BREIMENに改名しました。

みのミュージック:BREIMEN大解剖


ボーカル&ベースの高木祥太さんは父がフラメンコギタリスト、母がフルート奏者の音楽一家育ちで、プロデューサー&東京事変ベーシスト亀田誠治さん主催のベースコンテスト「第一回亀田杯ベース選手権大会」(2012年)のファイナリスト(17歳のとき)。
King Gnuの常田大希さん、新井和輝さん、勢喜遊さんも常連だった、東京・六本木のジャズセッションバーElectrik神社で、RHファクター(The RH Factor)などを率いるジャズトランペット奏者ロイ・ハーグローヴRoy Hargrove)ともセッションしたことがあるそうです(ただしロイはボーカル)。

ギターのサトウカツシロさんは東京音楽大学中退、2018年頃からNulbarichナルバリッチ)のメンバーとしても活躍しています。
キーボードのいけだゆうたさんはヤマハ音楽教室でエレクトーンを習い(5歳~20歳)、幕張総合高校時代にオーケストラ(打楽器担当)で全国優勝を経験、早稲田大学のサークルでさまざまなジャンルのバンド音楽に触れました。

サックスのジョージ林さんは東海大学ジャズ研究会、昭和音楽大学短期大学部を経て、サックス・マガジン主催「歌モノ・サックス・コンテスト2015/アルト編」で準グランプリを獲得。
ドラムのSo Kannoさんはヤマハ音楽教室でピアノを習い(幼少期から6年間)、中学時代に吹奏楽部でドラムを始め、尚美ミュージックカレッジ専門学校を経るなど、5人とも音楽三昧の経歴です。

SPACE SHOWER TV:「あんたがたどこさ」大解剖


デジタルシングル「あんたがたどこさ」(2022年1月26日)は、熊本県熊本市または埼玉県川越市が舞台の童歌(手毬歌)の肥後手まり唄」(あんたがたどこさ)が引用された超絶ファンクナンバー
ミノタウロスことみのさんのYouTubeチャンネル「みのミュージック」と「SPACE SHOWER TV」チャンネルのコラボによる対談動画では、「あんたがたどこさ」の貴重なステムデータパラデータが公開され、音の積み方(トラックの重ね方)などが解説されています。
「かっこよすぎるサウンドがどのように作られたのか?」という極意が明かされているので、ぜひご覧ください。

「B Side🏠SESSIOONe」Vol.7:MV撮影の裏側


MV撮影の裏側も公開されています。
極限まで抽象化された歌詞だからこそ、ぜいたくすぎるサウンドや映像に没入できるところが醍醐味の楽曲を取り上げつつ、歌詞について考察するのは相当シュールな話ですが、本題に移りましょう。

サビの歌詞

あんたがたどこさ どこさどこどこさ
あんたがただれさ だれさだれだれさ
あんたがたどこさ どこさどこどこさ
あんたがただれさ だれさだれだれ

出典:あんたがたどこさ/作詞:高木祥太 作曲:高木祥太

イントロはなく、いきなりサビの繰り返しから始まります。
あなたはどこの生まれ?あなたは誰?」という意味はあるものの、すべてひらがな、言葉遊びに振りきった歌詞です。

高木祥太さんはそもそも「肥後手まり唄」をアレンジしようと考えたわけではなく、日常で「お前誰やねん」と感じたときに「あんたがたどこさ」のメロディーが降りてきたとのこと。
タイトルと同じ、冒頭の歌詞のみ原曲どおりですが、音程は最初から異なり、「肥後さ 肥後どこさ」と続くこともありません。
むしろ原曲をもじった「あんたがただれさ」のほうが、楽曲制作のきっかけとなった感情に近そうです。

神奈川県出身の高木祥太さんが大阪弁で「お前誰やねん」と思ったエピソードにも、さまざまな民族が入り混じる「あんたがたどこさ」の世界観が感じられます。
上方漫才は全国的に流通しているので、生まれ育った場所にかかわらず、ツッコミを入れたくなることもあるでしょう。
もしかしたら立場をわきまえずに発言する人がいたのかもしれませんし、親しくもないのに過剰に干渉されたとか、正体がわからない人から嫌がらせを受けたなど、あらゆるケースが考えられます。
おそらく怒りや呆れなど負の感情が沸いたはずですが、即座にツッコミに変換している時点で俯瞰的な笑いに昇華されていて、さらに童歌をひねったメロディーに直結するところが音楽家的。
両親の影響で日本の民謡も聴いて育った高木祥太さんにとっては、わざわざ意識しなくても自然に出てくるルーツなのかもしれません。

スペインの民族音楽舞踊フラメンコのパルマ(手拍子)を彷彿とさせるハンドクラップ、2000年代にアメリカで広まったトラップっぽいビート、雅楽(しょう)をイメージしたジョージ林さんのサックス(複雑な倍音を含む「ぴぇ~」という音色で、ドローンっぽく持続する)など、歌詞で表現されている民族の多様性がサウンドにも反映されています

1番Aメロの歌詞

あっちとこっち あいつらこいつら
そいつはどいつ そっちはどっち
こいつらあっち あいつらこっちで
そいつはどっち そっちはどいつ

出典:あんたがたどこさ/作詞:高木祥太 作曲:高木祥太

高木祥太さんのボーカルはK-POP風(「こいつら」「こっちで」の語尾の音程が下がる)、5弦ベースは現代的、キーボードのいけだゆうたさんによるマリンバはアフリカが起源でラテンアメリカやアメリカに広まった楽器、ビートはアフロというAメロです。
「あっち、あいつら=敵」「こっち、こいつら=味方」「そっち、そいつ=中立」という仲間意識や対立構造が描かれています。
敵と味方が入れ替わり、立場がはっきりしない場合もあるなど、身近な人間関係から世界情勢まであらゆる事象が当てはまるでしょう。
愛にあふれた仲間意識がいつのまにか排他的な憎しみに反転することもあり、「争い続ける人間の愚かさを露呈している」とも考えられます。
意味性の希薄な言葉遊びだからこそ、かえって深いところまで想像できる余白が残されているのではないでしょうか。

1番Bメロの歌詞

ああもうどうでもいい
ああどうもうでもいいかい

出典:あんたがたどこさ/作詞:高木祥太 作曲:高木祥太

考えすぎて疲れたときは、何もかも「どうでもいい」と投げやりな気分になりがち。
そんなときにうってつけなのが、「あんたがたどこさ」のような意味性の希薄なサウンド重視の楽曲です。
すぐさま「もうどう」を「どうもう」と裏返し、ネガティブな感情に浸ることさえなく、ふざけています
「いっそ獰猛になってもいいかい?」と思い詰めるほど切羽詰まった状況だとしても、「もういいかい?」とかくれんぼして遊ぶくらいの明るさを持ち合わせていたいものです。

2番Aメロの歌詞

あんなことや こんなことで
おまえはこれらだ おれはそれらか?
それらこれら がんじがらめ
おまえはおまえ おれはおれです

出典:あんたがたどこさ/作詞:高木祥太 作曲:高木祥太

レッテルを貼る・貼られる、差別する・される、マウントを取る・取られるなど、何かとややこしくなりがちな人間関係。
それでもお互いの違いを認め合いながら、楽しく生きていきたいですね。

おわりに

ファンクの一言では片づけられないほど、多彩な要素が詰まった「あんたがたどこさ」。
混乱した時代だからこそ、考えすぎなくてすむ言葉遊び満載の歌詞がありがたいと感じる人も多いのではないでしょうか。
旧体制のコミカル要素が強めだったときも高木祥太さんが作詞をしていたためか、ふざけ具合の見極め方が絶妙です。
サトウカツシロさんのギターとジョージ林さんのサックスという2本柱のソロも含め、実機にこだわった演奏が最高なので、繰り返し聴きたくなりますね。

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渡辺和歌
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