音楽

Friday Night Plans『Visitors』実験的な音響と映像に彩られた1stアルバム

竹内まりやさん「プラスティック・ラブ」(1984年4月25日)のカバーやHonda「VEZEL」のCMソングなどで知られるFriday Night Plans(フライデーナイトプランズ)。
シティポップ路線の女性SSWかと思っているリスナーは、1stアルバム『Visitors』を聴くとかなり驚くはず!

はじめに


1996年1月、東京生まれ(父:日本人、母:フィリピン人)、東京を拠点とするSSW、MasumiさんによるプロジェクトFriday Night Plans。

starRo & AmPm「Maybe feat. Friday Night Plans」

【Live】Friday Night Plans「Plastic Love」

Friday Night Plans「HONDA」

millennium parade「Trepanation」

【Live】Friday Night Plans「Arigatou」

【Audio Visual】Visitors


1stアルバム『Visitors』(2023年6月30日、Friday Night Plans)は、全14曲・26分あまり。
東京出身、東京を拠点とするプロデューサーEna(本名:Yu Asaeda)さんとの共作は、3rd EP『Embers』(2021年4月30日、Friday Night Plans)から続いています。
Friday Night Plansは竹内まりやさんや細野晴臣さんのカバー、Honda「VEZEL」のCMソング、millennium paradeとのコラボなどで注目を集めているので、おしゃれなシティポップのイメージを抱いている人も多いかもしれません。
ところがFriday Night PlansことMasumiさんは、フィンランドのインダストリアルエクスペリメンタルなどの電子音楽ユニット、パン・ソニック(Pan Sonic、1993年~2010年)の影響も受けているそうです。
さらにEnaさんは職業音楽家としてJ-POPシーンにも携わる反面、パン・ソニックのミカ・ヴァイニオMika Vainio、1963年~2017年)とも交流があったとのこと。
「大衆的な歌もの楽曲」と「実験映画のノイズ音響的なサウンド」は対極にある気もしますが、永遠に交わりそうにない両者の融合に驚かされる快作です。

【1】intro: visitor


全14曲のアルバム『Visitors』は、イントロ(序奏)1曲(M1)、スキット(間奏)2曲(M4・11)、インタールード(間奏)3曲(M6・8・13)を含む構成。
30秒あまりの1曲目「intro: visitor」は、アルヴァ・ノト(Alva Noto)やブリアル(Burial)を彷彿とさせるグリッチから始まります。
あるいは焚き火のはぜる音、足を引きずりながら歩く音のようにも聴こえます。
オーディオビジュアルでは、横たわる何か、SF的なロボット(もしくは未来人や宇宙人)、夜に光り輝く家、ノスタルジックなメキシコの結婚式の映像が散りばめられています。

【2】What if we


Masumiさんのボーカルも加わり、いよいよ物語が始まったと考えられる「What if we」。
リバーブのかかったボーカルは、浮遊感たっぷりの音響的な作用をもたらします。
鳥もさえずるアンビエントドローン。
オーディオビジュアルでは、胎児のポーズの未来人、電車、メキシコの古代都市テオティワカンや結婚式、自転車、日本のカップル、海中、雪山、空と太陽などの映像が交錯します。

【3】Lost in the woods


インダストリアルな雰囲気も漂う「Lost in the woods」。
煙草を吸いながらドライブする男性、海中、部屋でグラスの水を飲む女性、2つのグラスを選ぶ手、花火、夜に光り輝く家といった映像の断片は、男女が火と水に分かれて迷子になるようなイメージなのかもしれません。

【4】skit: recollection


2曲あるスキットの1曲目「skit: recollection」。
ギター、ノイズ、ボーカルによる「回想」のようですが、映像を踏まえると、イントロの足を引きずりながら歩く音は雪山で迷子になった男性の足音だったのでしょうか。

【5】Incomplete


「Incomplete」はボーカルや不穏なドローンのほか、水流、鼓動、爆発のような音響が印象的。
オーディオビジュアルでは、路肩の雪堤をよじ登って進む女性に、トンネル、海中、車、空、ビルなどの映像が重なり、雪山で迷子になった男性がうつ伏せで倒れているところにたどり着きます。

【6】interlude: connection


3曲あるインタールードの1曲目「interlude: connection」は、水中のくぐもった音とノイズがチューニングするような印象です。
オーディオビジュアルはメキシコ旅行記のほか、「Home」や「Snow Mountain」などのタイトルがついた8つの短編が交ざっていて、登場人物や展開はそれぞれ異なりますが、船上で意識を失ったふりをする男性も誰かと何かがつながっているのかもしれません。

【7】I’m a bee you’re a flower


リバーブの心地いいボーカルとミニマルな不協和音が「蜂と花」のように戯れる「I’m a bee you’re a flower」。
オーディオビジュアルでは、Masumiさんがライブで歌ったり、草むらや岩場を歩いたりするシーンに、雨降る道、映画を観るカップル、大道芸のシャボン玉など、時代も場所も登場人物もさまざまな日常が散りばめられています。

【8】interlude: fragment


2曲目のインタールード「interlude: fragment」。
イントロの焚き火のような音と夜に光り輝く家の映像が重なります。

【9】Our place


「Our place」では、それぞれ独自のサウンドを奏でるギター、ボーカル、ノイズが奇妙にも混然一体となっています。
海に潜っているのか、溺れているかのような人物と、時空を超越したさまざまな日常も、どこかでつながっているのでしょうか。

【10】Sit on a sofa, we talk


浮遊感の漂う神秘的なサウンドとボーカルに、古いレコードのような微かなグリッチが入った「Sit on a sofa, we talk」。
オーディオビジュアルでは、雪堤をよじ登って進んでいた女性が、うつ伏せで倒れた男性を発見し、助け起こしました。
水中に潜っては浮かぶ女性の映像も重なります。

【11】skit: relief


2曲目のスキット「skit: relief」。
かつて海で溺れかけた女性が、雪山で倒れた男性を助けたような安心感が漂います。

【12】The boat


ミニマルなフレーズとゆったりとしたボーカルが厳かに響く「The boat」。
オーディオビジュアルでは、風呂敷に包まれた骨箱、骨壺を運び、散骨する4人組、お葬式、車や自転車での移動、家の映像もあり、時代や場所(時空)のみならず、生死すらも超越した「訪問者たちの船出」が描かれているのかもしれないと想像したくなります。

【13】interlude: answer me


3曲目のインタールード「interlude: answer me」。
近くで宇宙と交信するような不思議なサウンドとリバーブの深いボーカルが響き、遠くでギターが鳴っている感じがします。
夜に光り輝く家、雪山の男女、未来人は結局どうなるのでしょうか。

【14】On my way


遠くで聴こえていた13曲目「interlude: answer me」のギターが前面に出てくる「On my way」。
オーディオビジュアルでは、雪山で助けてくれた女性の肩に寄りかかり、足を引きずりながら歩いていた男性が、1人で先に進み始めました。
夜に光り輝く家を去る女性と訪れる女性がすれ違い、焚き火や海の映像も挟まりつつ、胎児のようなポーズで回転する未来人が白い光と化す結末でした。

おわりに


便宜上、未来人という呼び方で統一しましたが、オーディオビジュアルに登場した全身グレーの存在は何者なのか、結局わからないままでした。
アルバムタイトルも、夜に光り輝く家やその家に飾ってあった額縁のなかの家を訪ねる人だったのかもしれませんし、地球を訪れた宇宙人、未来からやってきた現代人など、想像がふくらみます。
縁もゆかりもないと思い込んでいる他人とも、時空や生死を超越して何かがつながっている可能性がありそうです。
その根源的な何かを揺さぶる、かろうじてポップな音響。
MasumiさんとEnaさんによる前衛的になりすぎない実験音楽の今後も気になります。

クレジット

ディスコグラフィ:Friday Night Plans

ディスコグラフィ:Ena

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渡辺和歌
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