竹内まりやさん「プラスティック・ラブ」(1984年4月25日)のカバーやHonda「VEZEL」のCMソングなどで知られるFriday Night Plans(フライデーナイトプランズ)。
シティポップ路線の女性SSWかと思っているリスナーは、1stアルバム『Visitors』を聴くとかなり驚くはず!
Contents
- 1 はじめに
- 2 【1】intro: visitor
- 3 【2】What if we
- 4 【3】Lost in the woods
- 5 【4】skit: recollection
- 6 【5】Incomplete
- 7 【6】interlude: connection
- 8 【7】I’m a bee you’re a flower
- 9 【8】interlude: fragment
- 10 【9】Our place
- 11 【10】Sit on a sofa, we talk
- 12 【11】skit: relief
- 13 【12】The boat
- 14 【13】interlude: answer me
- 15 【14】On my way
- 16 おわりに
はじめに
1996年1月、東京生まれ(父:日本人、母:フィリピン人)、東京を拠点とするSSW、MasumiさんによるプロジェクトFriday Night Plans。
担当したFriday Night Plansのオフィシャル・インタビューが公開されました。Masumiさんとenaさんのお二人にWax Alchemyのスタジオでじっくりと伺った話は、Pan Sonicのことからスタートします。とても興味深いインタビューでした。https://t.co/GqSWiLCeLz https://t.co/2EqKLSmmzD
— Masaaki Hara 原 雅明 (@masaakihara) June 30, 2023
starRo & AmPm「Maybe feat. Friday Night Plans」
【Live】Friday Night Plans「Plastic Love」
Friday Night Plans「HONDA」
millennium parade「Trepanation」
【Live】Friday Night Plans「Arigatou」
【Audio Visual】Visitors
1stアルバム『Visitors』(2023年6月30日、Friday Night Plans)は、全14曲・26分あまり。
東京出身、東京を拠点とするプロデューサーEna(本名:Yu Asaeda)さんとの共作は、3rd EP『Embers』(2021年4月30日、Friday Night Plans)から続いています。
Friday Night Plansは竹内まりやさんや細野晴臣さんのカバー、Honda「VEZEL」のCMソング、millennium paradeとのコラボなどで注目を集めているので、おしゃれなシティポップのイメージを抱いている人も多いかもしれません。
ところがFriday Night PlansことMasumiさんは、フィンランドのインダストリアルやエクスペリメンタルなどの電子音楽ユニット、パン・ソニック(Pan Sonic、1993年~2010年)の影響も受けているそうです。
さらにEnaさんは職業音楽家としてJ-POPシーンにも携わる反面、パン・ソニックのミカ・ヴァイニオ(Mika Vainio、1963年~2017年)とも交流があったとのこと。
「大衆的な歌もの楽曲」と「実験映画のノイズ音響的なサウンド」は対極にある気もしますが、永遠に交わりそうにない両者の融合に驚かされる快作です。
今号のサンレコ連載はブライアン・イーノ『Discreet Music』からインスパイアされて、そこから繋がる音楽を取り上げました。先日インタビューしたChihei Hatakeyamaをはじめディスクリートな(控えめで思慮深い)音楽が日常的に鳴っていることに興味がある今日この頃です。https://t.co/YosKjbvOzf
— Masaaki Hara 原 雅明 (@masaakihara) July 28, 2023
【1】intro: visitor
全14曲のアルバム『Visitors』は、イントロ(序奏)1曲(M1)、スキット(間奏)2曲(M4・11)、インタールード(間奏)3曲(M6・8・13)を含む構成。
30秒あまりの1曲目「intro: visitor」は、アルヴァ・ノト(Alva Noto)やブリアル(Burial)を彷彿とさせるグリッチから始まります。
あるいは焚き火のはぜる音、足を引きずりながら歩く音のようにも聴こえます。
オーディオビジュアルでは、横たわる何か、SF的なロボット(もしくは未来人や宇宙人)、夜に光り輝く家、ノスタルジックなメキシコの結婚式の映像が散りばめられています。
【2】What if we
Masumiさんのボーカルも加わり、いよいよ物語が始まったと考えられる「What if we」。
リバーブのかかったボーカルは、浮遊感たっぷりの音響的な作用をもたらします。
鳥もさえずるアンビエントドローン。
オーディオビジュアルでは、胎児のポーズの未来人、電車、メキシコの古代都市テオティワカンや結婚式、自転車、日本のカップル、海中、雪山、空と太陽などの映像が交錯します。
【3】Lost in the woods
インダストリアルな雰囲気も漂う「Lost in the woods」。
煙草を吸いながらドライブする男性、海中、部屋でグラスの水を飲む女性、2つのグラスを選ぶ手、花火、夜に光り輝く家といった映像の断片は、男女が火と水に分かれて迷子になるようなイメージなのかもしれません。
【4】skit: recollection
2曲あるスキットの1曲目「skit: recollection」。
ギター、ノイズ、ボーカルによる「回想」のようですが、映像を踏まえると、イントロの足を引きずりながら歩く音は雪山で迷子になった男性の足音だったのでしょうか。
【5】Incomplete
「Incomplete」はボーカルや不穏なドローンのほか、水流、鼓動、爆発のような音響が印象的。
オーディオビジュアルでは、路肩の雪堤をよじ登って進む女性に、トンネル、海中、車、空、ビルなどの映像が重なり、雪山で迷子になった男性がうつ伏せで倒れているところにたどり着きます。
【6】interlude: connection
3曲あるインタールードの1曲目「interlude: connection」は、水中のくぐもった音とノイズがチューニングするような印象です。
オーディオビジュアルはメキシコ旅行記のほか、「Home」や「Snow Mountain」などのタイトルがついた8つの短編が交ざっていて、登場人物や展開はそれぞれ異なりますが、船上で意識を失ったふりをする男性も誰かと何かがつながっているのかもしれません。
【7】I’m a bee you’re a flower
リバーブの心地いいボーカルとミニマルな不協和音が「蜂と花」のように戯れる「I’m a bee you’re a flower」。
オーディオビジュアルでは、Masumiさんがライブで歌ったり、草むらや岩場を歩いたりするシーンに、雨降る道、映画を観るカップル、大道芸のシャボン玉など、時代も場所も登場人物もさまざまな日常が散りばめられています。
【8】interlude: fragment
2曲目のインタールード「interlude: fragment」。
イントロの焚き火のような音と夜に光り輝く家の映像が重なります。
【9】Our place
「Our place」では、それぞれ独自のサウンドを奏でるギター、ボーカル、ノイズが奇妙にも混然一体となっています。
海に潜っているのか、溺れているかのような人物と、時空を超越したさまざまな日常も、どこかでつながっているのでしょうか。
【10】Sit on a sofa, we talk
浮遊感の漂う神秘的なサウンドとボーカルに、古いレコードのような微かなグリッチが入った「Sit on a sofa, we talk」。
オーディオビジュアルでは、雪堤をよじ登って進んでいた女性が、うつ伏せで倒れた男性を発見し、助け起こしました。
水中に潜っては浮かぶ女性の映像も重なります。
【11】skit: relief
2曲目のスキット「skit: relief」。
かつて海で溺れかけた女性が、雪山で倒れた男性を助けたような安心感が漂います。
【12】The boat
ミニマルなフレーズとゆったりとしたボーカルが厳かに響く「The boat」。
オーディオビジュアルでは、風呂敷に包まれた骨箱、骨壺を運び、散骨する4人組、お葬式、車や自転車での移動、家の映像もあり、時代や場所(時空)のみならず、生死すらも超越した「訪問者たちの船出」が描かれているのかもしれないと想像したくなります。
【13】interlude: answer me
3曲目のインタールード「interlude: answer me」。
近くで宇宙と交信するような不思議なサウンドとリバーブの深いボーカルが響き、遠くでギターが鳴っている感じがします。
夜に光り輝く家、雪山の男女、未来人は結局どうなるのでしょうか。
【14】On my way
遠くで聴こえていた13曲目「interlude: answer me」のギターが前面に出てくる「On my way」。
オーディオビジュアルでは、雪山で助けてくれた女性の肩に寄りかかり、足を引きずりながら歩いていた男性が、1人で先に進み始めました。
夜に光り輝く家を去る女性と訪れる女性がすれ違い、焚き火や海の映像も挟まりつつ、胎児のようなポーズで回転する未来人が白い光と化す結末でした。
昨日スクリーニング来てくれた人たち本当にありがとう。
映像には言葉に出来ない感覚を「体験させてしまう」ことが出来るパワーがあるなと思った。
いつか誰も無視できないほど巨大な作品を作りたい。これはその第一歩。 pic.twitter.com/CuVm5XYCa8
— le (@leoyoulagi) July 22, 2023
おわりに
便宜上、未来人という呼び方で統一しましたが、オーディオビジュアルに登場した全身グレーの存在は何者なのか、結局わからないままでした。
アルバムタイトルも、夜に光り輝く家やその家に飾ってあった額縁のなかの家を訪ねる人だったのかもしれませんし、地球を訪れた宇宙人、未来からやってきた現代人など、想像がふくらみます。
縁もゆかりもないと思い込んでいる他人とも、時空や生死を超越して何かがつながっている可能性がありそうです。
その根源的な何かを揺さぶる、かろうじてポップな音響。
MasumiさんとEnaさんによる前衛的になりすぎない実験音楽の今後も気になります。
【NEWS】Friday Night Plans最新オーディオ・ビジュアルをフィーチャーしたパーティが開催
starRo、Changsie、Miru Shinoda、鯱ら出演 https://t.co/yaMdNOVUTe@hithisisfnp @leoyoulagi @starRo75 @h4na807 @shachi1111info pic.twitter.com/EuRnVIJnbv
— Spincoaster/スピンコースター (@Spincoaster_2nd) July 11, 2023
クレジット
- Friday Night Plans:作詞、作曲
- Ena:作曲
- Wax Alchemy:マスタリング
- Shotaro Ito(Skid):カバー・編集、オーディオビジュアル・プロデュース
- 小池桂一:カバー・アートワーク
- Leo Iizuka:オーディオビジュアル・監督
- 上原晴也:オーディオビジュアル・撮影監督
- Isao Sato:オーディオビジュアル・ドキュメンタリー
ディスコグラフィ:Friday Night Plans
- 1st EP『LOCATION – Los Angels』2018年8月31日、Friday Night Plans
- 2nd EP『Complex』2019年11月15日、Friday Night Plans
- 3rd EP『Embers』2021年4月30日、Friday Night Plans
- 4th EP『When I Get My Playground Back』2021年8月27日、Friday Night Plans
- 5th EP『In The Rearview』2022年1月28日、Friday Night Plans
- 6th EP『Come and Go』2022年7月1日、Friday Night Plans
ディスコグラフィ:Ena
- 『Bilateral』2013年4月29日、7even Recordings
- 『Binaural』2014年11月10日、Samurai Horo
- 『Binaural, Pt. 2』2014年11月10日、Samurai Horo
- 『Søil』2016年3月18日、Niløs
- 『Divided: Mind』2017年3月24日、Horo
- 『Bridge』2018年6月18日、Field Records
- 『One Draw』2021年1月15日、Nullpunkt
リンク
- Wikipedia:Friday Night Plans、英語
- AllMusic:Ena
- Discogs:Friday Night Plans、Ena、Visitors
- Website:Friday Night Plans/Store
- Linktree:Friday Night Plans
- X(Twitter):Friday Night Plans、Ena
- Instagram:Friday Night Plans、Ena
- Facebook:Friday Night Plans、Ena
- Link:Visitors
- YouTube:Friday Night Plans、Visitors、Ena/Topic、Ena/Topic
- Tower Records:Friday Night Plans
- disk union:Friday Night Plans、Ena
- Spotify:Friday Night Plans、Ena、Visitors
- Apple Music:Friday Night Plans、Ena、Visitors
- Bandcamp:Ena
- SoundCloud:Friday Night Plans、Ena
- Tumblr:Ena