エレクトロニカの才人、ボノボ(Bonobo)の『Fragments』は気分を上げたいときにおすすめ!
電子音楽(シンセ、モジュラーシンセ、フェンダー・ローズ)と生楽器(ハープや弦楽器など)&ボーカルの絶妙な融合に触れ、心身のバランスを整えましょう。
Contents
はじめに
ボノボは音楽家・プロデューサー・DJのサイモン・グリーン(Simon Green)によるソロプロジェクト(1976年3月30日生まれ、イギリス・ブライトン出身)。
1999年から音楽活動を始め、コールドカット(Coldcut)主宰のダンスミュージックレーベル<Ninja Tune>(ニンジャ・チューン)と契約。
エレクトロニカを軸に、初期はブレイクビーツ、トリップホップ、ダウンテンポの要素が強めでしたが、次第にニュージャズ、ワールドミュージック、アンビエントの要素を盛り込むなど、進化を続けています。
- 1stアルバム『Animal Magic』2000年7月25日<Tru Thoughts→Ninja Tune>:ブレイクビーツ、トリップホップ、ダウンテンポ、エレクトロニカ
- 2ndアルバム『Dial ‘M’ for Monkey』2003年6月9日<Ninja Tune>:ニュージャズ、ワールドミュージック、エレクトロニカ
- 3rdアルバム『Days to Come』2006年10月2日:エレクトロニカ、ニュージャズ
- 4thアルバム『Black Sands』2010年3月29日:エレクトロニカ、ニュージャズ、ニューエイジ、トリップホップ
- 5thアルバム『The North Borders』2013年3月21日:エレクトロニカ
- 6thアルバム『Migration』2017年1月13日:エレクトロニカ、アンビエント、ダウンテンポ、実験音楽→第60回グラミー賞(2018年)最優秀ダンス・レコーディング賞(Bambro Koyo Ganda)・最優秀ダンス/エレクトロニック・アルバム賞ノミネート
- シングル「Linked」2019年7月1日:第62回グラミー賞(2020年)最優秀ダンス・レコーディング賞ノミネート
- コラボシングル「Loom」2020年10月15日、「Heartbreak」2020年11月13日:第64回グラミー賞(2022年)最優秀ダンス/エレクトロニック・レコーディング賞ノミネート
7thアルバム『Fragments』(読み:フラグメンツ、意味:断片、2022年1月14日)は、先行シングル5曲を含む、51分あまりの全12曲(国内盤CDはボーナストラック入り全13曲)。
ボノボ史上最もエモーショナルと評判のダンスフロア向きの最高傑作です。
多彩なゲストを迎えた、電子音楽と生楽器&ボーカルの融合を堪能しましょう!
【1】Polyghost (feat. Miguel Atwood-Ferguson)
- ボノボ:作曲、プロデュース、モジュラーシンセ、ミックス
- ミゲル・アトウッド・ファーガソン(Miguel Atwood-Ferguson):作曲、バイオリン、ビオラ、チェロ、レコーディング
- ララ・ソモギ(Lara Somogyi):ハープ
アルバム全体のイントロのような「Polyghost」のゲストは、米LAを拠点に活動するマルチ奏者&作・編曲家&プロデューサーのミゲル・アトウッド・ファーガソン。
5曲目「Tides」、12曲目「Day by Day」でも作曲・弦楽器演奏・レコーディングを担当しています。
LAのハープ奏者ララ・ソモギは5曲目「Tides」、6曲目「Elysian」にも参加。
ボノボのモジュラーシンセとともに幽玄に響きます。
【2】Shadows (feat. Jordan Rakei)
- ボノボ:作曲、プロデュース、フェンダー・ローズ、シンセ、ミックス
- ジョーダン・ラカイ(Jordan Rakei):作詞、作曲、ボーカル、レコーディング
アルバム収録4曲目のシングル「Shadows」(2021年12月1日)では、オーストラリア出身、ロンドンを拠点に活動するソウル・R&BのSSWジョーダン・ラカイをフィーチャー。
愁いを帯びたR&Bの美声、軽快なビート、繊細な鍵盤の掛け合いによるディープハウスに魂を揺さぶられます。
- 歌詞:Genius
【3】Rosewood
アルバム収録1曲目のシングル「Rosewood」(2021年10月6日)。
ピッチフォークによると、「I won’t leave you」の部分は米ニューヨーク・ブルックリン出身のR&B・ネオソウルSSWマックスウェル「Lifetime」のサンプルのようです。
神秘的なUKガラージにまとめられていて、体が小躍りし始めます。
- 歌詞:Genius
【4】Otomo (feat. O’Flynn)
- ボノボ:作曲、プロデュース、ミックス、マスタリング
- オフリン(O’Flynn):作曲、追加プロデュース
- サンプル:100 Kaba Gaidi(100 каба гайди)「Subrali Sa」(Събрали Са)
Official Audio
アルバム収録3曲目のシングル「Otomo」(2021年11月10日)では、ロンドンを拠点に活動するプロデューサー・DJのオフリンをゲストに迎えています。
タイトルの由来は、『AKIRA』の漫画家・映画監督の大友克洋さん。
ブルガリアのバグパイプオーケストラ、100 Kaba Gaidi(意味:100個のカバガイダ、ブルガリアの民族楽器ガイダの大型のもの)「Subrali Sa」(意味:彼らは集まった)のサンプルが使われています。
透き通るようなブルガリアのクワイアと、重々しい金属音のブレイクビーツやUKベースミュージックの対比がアニメ映画『AKIRA』のサウンドトラックのようです。
レイヴ風の盛り上がりも刺激的!
【5】Tides (feat. Jamila Woods)
- ボノボ:作曲、プロデュース、ギター、ベース、モジュラーシンセ、ミックス
- ジャミーラ・ウッズ(Jamila Woods):作詞、作曲、ボーカル
- ミゲル・アトウッド・ファーガソン:作曲、バイオリン、ビオラ、チェロ、レコーディング
- ララ・ソモギ:ハープ
米シカゴを拠点に活動するR&B・ネオソウルのSSWジャミーラ・ウッズをフィーチャーした、アルバム収録2曲目のシングル「Tides」(2021年10月20日)。
タイトルどおり潮の満ち引きっぽいグルーヴの優しい歌声、多層的に重なる弦楽器、ハープ、モジュラーシンセが醸し出すダウンテンポにより、胎内でゆらゆら揺れるような浮遊感を味わえるでしょう。
- 歌詞:Genius
【6】Elysian
- ボノボ:作曲、プロデュース、ベース、アップライトベース、モジュラーシンセ、パーカッション、ミックス
- トーマス・リー(Thomas Lea):作曲、ストリングスアレンジ、ビオラ、バイオリン
- ララ・ソモギ:ハープ
米カリフォルニア出身のビオラ&バイオリン奏者トーマス・リーが参加した「Elysian」。
ボノボ自身、モジュラーシンセのほかウッドベースやベース、パーカッションも演奏しており、ハープも相まって、タイトルどおり理想郷に導かれるチルアウトです。
【7】Closer
- ボノボ::作曲、プロデュース、モジュラーシンセ、ミックス、マスタリング
- サンプル:アンドレヤ・トリアーナ(Andreya Triana)「Far Closer」(2011年2月7日、1stアルバム『Lost Where I Belong』2010年9月6日)
「Closer」は、ロンドン出身のソウルSSWアンドレヤ・トリアーナ「Far Closer」のサンプルが印象的に使われたUKガラージ、ダウンテンポ。
「あなたに近づく」と繰り返しささやかれることで、ソーシャルディスタンスのストレスから解放される気分を味わえます。
- 歌詞:Genius
【8】Age of Phase
- ボノボ:作曲、プロデュース、モジュラーシンセ、リミックス、ミックス
- サンプル:ノスタルジア77(Nostalgia 77)「Quiet Dawn」(2008年1月27日、アルバム『Everything Under The Sun』2007年3月19日、ベストアルバム『Fifteen』2018年2月16日)
「Age of Phase」ではロンドン出身のプロデューサー、ベン・ラムディン(Ben Lamdin)によるジャズプロジェクト、ノスタルジア77の「Quiet Dawn」が大胆にリミックスされています。
【9】From You (feat. Joji)
アルバム収録5曲目のシングル「From You」(2022年1月3日)では大阪出身、神戸育ち、ニューヨークを拠点に活動するR&BのSSWジョージさんをゲストに迎えています。
恋に落ちた後、季節の移り変わりのような変化があり、「あなたから落ちる」というひねりの効いた言葉ですれ違いが描かれたR&Bのバラードです。
- 歌詞:Genius
【10】Counterpart
- ボノボ:作曲、プロデュース、カリンバ、モジュラーシンセ、シンセ、ミックス
ボノボの奏でるカリンバがかわいらしく響く「Counterpart」。
モジュラーシンセのグニョグニョ音も堪能できる爽やかなダンスチューンです。
【11】Sapien
- ボノボ:作曲、プロデュース、フェンダー・ローズ、モジュラーシンセ、ミックス
UKガラージ、ダウンテンポのビートがミニマルに繰り返される「Sapien」。
ブレイクを挟みながら、フェンダー・ローズとモジュラーシンセの音色が徐々に変化していくところがレイヴ的です。
【12】Day by Day (feat. Kadhja Bonet)
- ボノボ:作曲、プロデュース、ギター、ベース、モジュラーシンセ、ミックス
- カディア・ボネイ(Kadhja Bonet):作詞、作曲、ボーカル
- ミゲル・アトウッド・ファーガソン:作曲、バイオリン、ビオラ、チェロ、レコーディング
国内盤CD以外のラストを締めくくるのは、米LAを拠点に活動するマルチ奏者・SSWのカディア・ボネイをフィーチャーした「Day by Day」。
ボノボはモジュラーシンセのほかギターとベースも弾いていて、ミゲル・アトウッド・ファーガソンの弦楽器も冴え渡るバラードです。
エモーショナルで悲しい気分を共有した果てのハッピーエンド。
悪夢のような暗闇にも感じられる新型コロナのパンデミックも、少しずつ(Day by Day)大丈夫になっていくことでしょう。
フェードアウトするサックスもカディア・ボネイの演奏。
ニュージャズ的な余韻を残すことで、また始まりに戻るような循環性が表現されています。
- 歌詞:Genius
おわりに
『Fragments』は前半にキャッチーなシングルがまとめられていて、後半はアンビエント、チルアウトの要素が強くなる構成。
ざっくりとハウスやエレクトロニカに分類されるアルバムですが、打ち込みだけでなく、オーガニックなサウンドも混ざっているので、温もりも感じられたでしょう。
作業用BGMとしてずっと聴いていられるだけでなく、できればダンスフロアで踊りたい気分になったのではないでしょうか。
新型コロナのパンデミックが長引き、イライラしたり落ち込んだりしたときのリフレッシュ用にも最適です。
リンク
- Wikipedia:Bonobo、Fragments
- AllMusic:Bonobo、Fragments
- Discogs:Bonobo、Fragments
- Website:Bonobo、Ninja Tune、Beatink/Beat Records
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- YouTube:Bonobo、Fragments
- Tower Records:Bonobo、Fragments
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