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星街すいせい「もうどうなってもいいや」歌詞の意味を考察!TVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』ED『Beginning』挿入歌

星街すいせいさんの「もうどうなってもいいや」はガンダムシリーズの劇場先行版『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス) -Beginning-』(2025年1月17日公開)の挿入歌として書き下ろされました。TVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』(2025年4月8日深夜・9日放送開始)のエンディングテーマにも起用された「もうどうなってもいいや」の歌詞の意味を考察、解説します。

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星街すいせい「もうどうなってもいいや – Movie edition -」

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星街すいせい「もうどうなってもいいや」歌詞の意味を考察

曲の構成

  • 1番:Bメロ(イントロ)~Aメロ~Bメロ~サビ(Cメロ)
  • 2番:Dメロ~Bメロ~Eメロ~サビ(Cメロ)~サビ(Cメロ)~Bメロ(アウトロ)

1番Bメロ(イントロ):アニメも曲も堂々巡り

堂々巡りのファンタジー
アンソロジー混ざる有象無象
本能のままに行動不能に
高まる衝動 (Ooh)
もう どうなってもいいや

もうどうなってもいいや/作詞:Yuki Tsujimura 作曲:Naoki Itai・Yuki Tsujimura

ガンダムシリーズのサンライズとエヴァンゲリオンシリーズのスタジオカラーによる共同制作が話題のジークアクス。ガンダムに乗ったのはアムロではなくシャア、一年戦争で勝利したのは地球防衛軍ではなくジオン公国軍というファーストガンダムの架空戦記が描かれています。

ニュータイプの効果音のようなイントロに続くのはサビではなく、キャッチーなBメロ。つまり、頭サビではなく、この曲の軸となるBメロから始まる構成です。

曲名かつセリフみたいな歌詞「もうどうなってもいいや」は、マチュ(アマテ・ユズリハ)、ニャアン、シュウジというジークアクスの登場人物3人のうち、マチュの心情を表していると考えられます。

アンソロジーとはコンピレーションやオムニバス的な作品集のこと。有象無象(うぞうむぞう)の語源は仏教用語・有相無相(読み方:うそうむそう、意味:形あるもの、ないものすべて)。転じて、ろくでもない連中、数は多いがくだらない人や物を意味します。

基本的にマチュ目線の歌詞ですが、ガンダムシリーズにおけるジークアクスの位置づけ、1番がMovie editionかつTVアニメ尺、2番込みでフル尺という「もうどうなってもいいや」の曲の構成についても「堂々巡りのファンタジー」と冒頭のBメロで解説している模様です。

その「堂々(どうどう)巡り」から「有象無象(うぞうむぞう)、本能(ほんのう)、行動不能(こうどうふのう)、衝動(しょうどう)」を経て「もうどう(なってもいいや)」へとつながる韻が、実際に「堂々巡り感」や「もうどうなってもいいほどの投げやり感、もしくは諦念(ていねん)」を醸し出しています。

また「ファンタジー」と「アンソロジー」の脚韻が「(もうどうなっても)いい(や)」に結びつく流れも秀逸。結局、冒頭の「堂々巡りのファンタジー」が曲名かつパンチラインの「もうどうなってもいい(や)」と韻を踏んでいたのかと気づかされる展開です。

1番Aメロ:鳥籠(コロニー)育ちの3人の出会い

当たり前のことが知りたいだけ
星に願う本当の気持ち
苦し紛れの言い訳は
いらない 意味ない
君はどう思う?(Oh)
行き場を失ったみたいだ
心は棘の類で eh-eh (Foo)
おんなじことばっかり繰り返して
鳥籠の中で (踊る)

もうどうなってもいいや/作詞:Yuki Tsujimura 作曲:Naoki Itai・Yuki Tsujimura

ガンダムとエヴァの出現により、ロボットアニメの常識は一変しました。とくにガンダムは勧善懲悪の物語ではなく、人間同士の争い。生まれ育った場所が地球か、スペースコロニー(宇宙都市)かの違いで敵対します。

その一年戦争でコロニー(宇宙)側のジオンが勝利した世界線の5年後、宇宙世紀(U.C.)0085年。コロニーという鳥籠(とりかご)育ちの女子高生マチュ、戦争難民の少女ニャアン、落書き少年シュウジの3人が出会うのは必然だったのかもしれません。

1番Bメロ:魔法みたいなキラキラの正体

ふわっと 浮かんで 取り繕うまで
描いて 泣き叫んで 消えないように
魔法みたいな都合いいもの
主人公なら起承転結
最後はどうなっても happy ending
それなら好きにさせてよ
もう どうなってもいいや

もうどうなってもいいや/作詞:Yuki Tsujimura 作曲:Naoki Itai・Yuki Tsujimura

地球の「当たり前」を知らずにコロニーで生まれ育ったマチュは、さらに「行き場を失った」戦争難民のニャアンと出会い、非合法なモビルスーツ決闘競技クランバトル(クラバ)に巻き込まれます。

人型ロボット・モビルスーツ(MS)のなかでも、ガンダムやジークアクスはサイコミュ搭載のニュータイプ専用機。ニュータイプ(NT)とは超能力が開花した新しい人類のことで、独特の脳波・感応波(サイコウェーブ)を発します。

感応波の増幅器がサイコミュ、感応波が伝わるためにはミノフスキー粒子が必要。ミノフスキー粒子とはモビルスーツ同士の接近戦を可能にするために設定された、レーダーを無効化する架空の物質です。

米津玄師さんが「Plazma」、マチュが「キラキラ」、モチーフとしてグラフィティを「描いて」いるシュウジが「向こう側」、シャアがサイコミュ暴走事故による現象ゼクノヴァで「刻(とき)が見える」と表現した「謎の発光現象」こそ「魔法みたいな都合いいもの」の正体かもしれません。

クラバでの絶体絶命のピンチにハッピーエンドを思い、「もう どうなってもいいや」と諦めるのは、執着を手放し、運命を受け入れる前向きな感情とも解釈できます。

1番サビ:「月が綺麗」と愛を謳う

真っ逆さまに落ちていった
無重力 midnight 逃避行
秘密の裏から交わって虜 (虜)
一切合切もっていって
余すことなく人生謳歌
混じり合う
星に想い馳せて (Ooh, yeah)
月が綺麗だなんて
この世はすべて
ワンダー 愛を謳う

もうどうなってもいいや/作詞:Yuki Tsujimura 作曲:Naoki Itai・Yuki Tsujimura

人生謳歌」(じんせいおうか)とは人生を楽しむこと。「1番Aメロ」の「鳥籠」(とりかご)から「1番Bメロ」の「取り繕う」(とりつくろう)を経て「1番サビ」の「虜」(とりこ)へとつながる「とり三段オチ」的な韻が秀逸です。

さらに「1番Bメロ(イントロ)」の「有象無象、行動不能」、「1番Bメロ」の「起承転結」、「1番サビ」の「一切合切」が四字熟語、「1番Bメロ」の「主人公」、「1番サビ」の「無重力、 逃避行」が三字熟語という言葉遊びでも「アンソロジー混ざる有象無象感」を体現したのかもしれません。

英語の「I Love You」を「月が綺麗ですね」と和訳したのは夏目漱石さん。そのエピソードを踏まえて「月が綺麗」と「愛を謳う」流れです。

ジークアクスに乗り込み、「真っ逆さまに落ちる」ように宇宙に投げ出され、ニュータイプとして目覚めるマチュ。赤いガンダムに乗るシュウジとのM.A.V.(マヴ、2機1組の戦術、相棒)が表現されています。

2番Dメロ:誰の触れたこともない真実とは?

もうどうなってもいいや

曖昧な顔にうれてる君の瞳の (Ooh)
奥へとピント
合わしてフォーカス (Aw)
誰の触れたこともない
真実のその雨に濡れた体
ざわつくひらつく簡単じゃないから
もっともっともっともっと盲目に

もうどうなってもいいや/作詞:Yuki Tsujimura 作曲:Naoki Itai・Yuki Tsujimura

劇場版の挿入歌「Movie edition」でもTVアニメ尺でもない、フル尺のみの2番に入ったからでしょうか。さらに「もうどうなってもいいや(好きにさせてよ)」とばかりに、曲の構成も歌い方も複雑になります。

基本的には、ジークアクスに乗ってクラバで戦うマチュがシュウジの「瞳の奥へとピント合わしてフォーカス」するイメージです。おそらく「誰の触れたこともない真実」は「ニュータイプのみ知覚できるキラキラ」のことでしょう。

さらに、後半のラップや語りのような歌い方こそ、「誰の触れたこともない真実=星街すいせいさんの歌い手としての真骨頂」とも考えられます。

2番Bメロ:投げやりなバッドエンドも想定

グッとふわっと曝け出すように
いちにのさんで心ライフル
魔法みたいな都合いいもの
そんなもんだって縋りつきたい
諦めちゃってはもう bad ending
なけなしの勇気を
もうどうなってもいいや
(Oh, woah)

もうどうなってもいいや/作詞:Yuki Tsujimura 作曲:Naoki Itai・Yuki Tsujimura

「1番Bメロ」ではハッピーエンドを想定して前向きに執着を手放す印象でしたが、「2番Bメロ」ではバッドエンドを想定して投げやりに諦める感じがします。ポジティブにもネガティブにも解釈できる「もうどうなってもいいや」は結局どちらに転ぶのでしょうか。

2番Eメロ:栞みたいに挟まれた特別なパート

火花みたいに燃えた証
いつの日か忘れちゃった
儚いねなんて感情の栞挟んで
特別になるんだろう

もうどうなってもいいや/作詞:Yuki Tsujimura 作曲:Naoki Itai・Yuki Tsujimura

火花みたいに燃えた儚(はかな)い感情」が栞(しおり)のように挟(はさ)まれた特別なパートです。その儚い存在はファーストガンダムにおけるアムロとシャアにとってのララァのことかもしれませんし、ジークアクスの物語が進むと連想されるシーンが出てくる可能性も考えられます。

2番サビ:「月の涙」の謎はTVアニメ次第か

全うだけ流されて
静寂 twilight 逃避行
温もり感じる距離まで引き寄せて
月の涙が降ったこの世は
まるで stranger
愛を叫ぶ (Ooh, woah)

もうどうなってもいいや/作詞:Yuki Tsujimura 作曲:Naoki Itai・Yuki Tsujimura

オルゴールみたいなアレンジの「2番サビ」。サウンドそのものがまさにトワイライト(黄昏時)の静かな逃避行のようです。

月の涙」は「1番サビ」の「月が綺麗」、「2番Dメロ」の「君の瞳」や「盲目」と呼応しているのでしょうか。クラバの戦いでマチュの目がくらんだり、シュウジが近寄ったり、ニュータイプに目覚めて見えたキラキラを表現しているのかもしれません。

あるいはコロニーを爆弾として地球や月に投下する「コロニー落とし」ならぬ「月落とし」的なことが起きるのかどうかはTVアニメの展開次第なのでストレンジャー(見知らぬ人)という推察もあり得そうです。

劇場版ビギニングでは、キシリア・ザビが占拠した月面基地グラナダに、地球連邦軍がジオン軍から奪取した宇宙要塞ソロモンを落とそうとしていました。

ところが、ジオン創始者の父を暗殺したザビ家打倒を誓い、月面基地グラナダへの宇宙要塞ソロモン落としを企んだシャアは、脳波増幅器サイコミュの暴走事故かつ謎の発光現象ゼクノヴァにより、赤いガンダムと共に行方不明になります。

その結果「連邦が負け、ジオンが勝つ」というファーストガンダムとは真逆のパラレルワールドが展開されるジークアクス。「月の涙=キラキラ=ゼクノヴァ」なのか、さらなる「月落とし」が起きるのか、考察は一旦ステイ(保留)としておきましょう。

最後に「1番サビ」と同じ「2番サビ」、「1番Bメロ(イントロ)」のラストが「Ha, もう どうなってもいいや」とため息交じりになる「2番Bメロ(アウトロ)」が「堂々巡り」のように繰り返され、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか謎を残したまま幕を閉じます。

おわりに


代表曲「ビビデバ」(2024年8月7日、MASTERSIX FOUNDATION・Sony Music Records)など全11曲収録の3rdアルバム『新星目録』(2025年1月22日、COVER)をリリースし、日本武道館ライブ「SuperNova」(2025年2月1日)も開催したホロライブ所属のバーチャルアイドル・星街すいせいさん。

「VTuberのどこがすごいの?」と半信半疑だったアニメファンも「もうどうなってもいいや」を聴いて、いつのまにか星詠み(読み方:ほしよみ、愛称:すいちゃんのファン)になっているのではないでしょうか。

米津玄師「Plazma」


ジークアクス第2話(2025年4月15日深夜・16日放送)では、ビギニングのゼクノヴァのくだりは丸々カットされました。ただ、CM前にはファーストガンダムのアイキャッチ3種盛りオマージュがありました。

デデデン、デデデデン、シャウ!(由来:シャウト)などのSE(効果音)に「やりやがった」と盛り上がったガンダムの強火ファンも、ファーストガンダムで連邦vsジオンの最終決戦地だった宇宙要塞ア・バオア・クーとか言いたくなるリアルタイム世代も、すいちゃんの東京ドームライブという次の目標にも期待したいですね。

星街すいせい「夜に咲く」


ジークアクス第3話(2025年4月22日深夜・23日放送)で突如、挿入歌として解禁された「夜に咲く」は2025年4月24日デジタルリリースです。

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