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TM NETWORK「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-」歌詞の意味を考察!TVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』第11話挿入歌

小室哲哉(Tetsuya Komuro)さん、宇都宮隆(Takashi Utsunomiya)さん、木根尚登(Naoto Kine)さんによる3人組ユニットTM NETWORK(ティーエム・ネットワーク)の13thシングル「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」(ビヨンド・ザ・タイム メビウスのそらをこえて、1988年3月5日リリース)は、もともとアニメ映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年3月12日公開、配給:松竹)の主題歌でした。
37年の時を越えて、2025年6月18日、TVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』第11話「アルファ殺したち」の挿入歌として突然エンディングで流れ、翌6月19日に「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Short Edit-」と共にリリースされた「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-」の歌詞の意味を考察、解説します。

Contents

TM NETWORK「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-」ミュージックビデオ・Music Video・MV・PV・YouTube動画

BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-

BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Short Edit-

TM NETWORK / BEYOND THE TIME(TM NETWORK CONCERT -Incubation Period-)

TVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』

特別番組「『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』放送記念 ガンダムがもっともっと好きになる!」

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』ダイジェスト映像

TM NETWORK「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-」歌詞の意味を考察

曲の構成

  • 1番:Aメロ~Bメロ~サビ(Cメロ)
  • 2番:Aメロ~Bメロ~サビ(Cメロ)~ラスサビ(Bメロ)

1番Aメロ:ジークアクスの元ネタ

You belong to me サヨナラ言えなくて
いつまでも 抱き締めたかった
I belong to you 張り裂けそうになる
この胸を 君に差し出して

We belong to Earth 遥かな宇宙のもと
コバルトに 光る地球がある
悲しみは そこから始まって
愛しさが そこに帰るのさ

BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-/作詞:小室みつ子 作曲:小室哲哉

※TVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』などガンダムシリーズのネタバレを含むのでご注意ください※

「もしガンダムに搭乗したのがアムロではなくシャアだったら、一年戦争で勝利したのが地球連邦ではなくジオンだったら」という、TVアニメ『機動戦士ガンダム』(以下、ファースト)の仮想戦記(架空戦記、IF戦記)が描かれたTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(以下、ジークアクス)。

その『ジークアクス』の元ネタ(の少なくともひとつ)はTM NETWORK「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」の歌詞ではないかという考察があります。

『ジークアクス』は第12話「だから僕は… 」(2025年6月25日放送)が最終回でしたが、TM NETWORK「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) 」はその前週・第11話「アルファ殺したち」(2025年6月18日)の挿入歌として、本来のエンディングテーマ・星街すいせいさん「もうどうなってもいいや」の代わりに流れました。

地球環境を回復するための太陽光増幅装置(実はゼクノヴァ発生兵器)イオマグヌッソの中枢部「シャロンの薔薇」の正体は、サイコミュ搭載モビルアーマー・エルメス。

『ジークアクス』は『ファースト』などのガンダム正史でエルメスに搭乗するニュータイプ・ララァが、シャアを生き返らせるために作り出したパラレルワールド(世界線)だったのです。SNSでは「ララァが作った同人誌」というワードがトレンド入りしました。

シュウジはララァを守るために、向こう側(≠正史)からこっち側(=ジークアクス)にやってきた?正史の三角関係「アムロ(男性)・シャア(男性)・ララァ(女性)」がジークアクスの三角関係「マチュ(女性)・ニャアン(女性)・シュウジ(男性)」に反映されたラブストーリーだった?などの考察が白熱しました。

  • 正史:シャア(MS:ジオング)をかばったララァ(MA:エルメス)がアムロ(MS:ガンダム)に殺される@『ファースト』第41話「光る宇宙」
  • 向こう側:『ファースト』の世界観だが、シャアが殺される点は異なる@ゼクノヴァの先にある世界
  • こっち側:シャアが殺されない(ララァがシャアを死なせない)、アムロがララァを殺さない(アムロがララァを死なせない)@『ジークアクス』

米津玄師「Plazma」×『機動戦士Gundam GQuuuuuuX 』閲覧注意:最終話の映像を含む


たしかに米津玄師さんによるオープニングテーマ「Plazma」には「これが愛だと知った」という歌詞があります。

星街すいせい「もうどうなってもいいや」


星街すいせいさんによるエンディングテーマ「もうどうなってもいいや」にも「最後はどうなってもHappy Ending」や「愛を歌う」というラブソングらしい歌詞がありました。

井上大輔「ビギニング」

そして 時が
すこやかに あたためる 愛
そして 時が
すこやかに そだてる 愛

ビギニング/作詞:井荻麟 作曲:井上大輔

また『ジークアクス』第12話(最終回)「だから僕は… 」では、挿入歌のひとつとして井上大輔さんの「ビギニング」も流れました。この曲はもともと『ファースト』第31話後半〜第43話を再編集した劇場版『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙(そら)編』(1982年3月13日公開)の挿入歌でした。

さらに『ジークアクス』の「カラー×サンライズ 夢が、交わる。」というキャッチコピーは「エヴァ×ガンダム」だけでなく、「ララァとアムロ、あるいはシュウジとマチュの夢が交わる」といった意味も込められていたようです。

SF戦記(SF作品、戦争もの)なのにラブストーリー(恋愛もの)としてあまりにも丸く収まったというか、最初からOPやED曲でネタバレされていたにも関わらず、これほど「最後はどうなってもハッピーエンディング」な愛の物語になるとは想定外だった人も多いのではないでしょうか。

Shania Yan「Far Beyond the Stars」

1番Bメロ:メビウスの輪から抜け出したジークアクス

ああ メビウスの輪から抜け出せなくて
いくつもの罪を繰り返す

BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-/作詞:小室みつ子 作曲:小室哲哉

「メビウスの輪」とは、ドイツの数学者アウグスト・フェルディナント・メビウスが1865年に「多面体の体積の決定について」という論文内で発表した、向き付け不可能な図形のこと。

「人や動物などの命が何度も生まれ変わる苦しみ」を意味する、インド哲学・仏教用語の輪廻(輪廻転生:りんねてんしょう、りんねてんせい)と重なります。ヒンドゥー教や仏教などでは輪廻からの解放や悟り、自由を手に入れた状態が最高目標の解脱(げだつ)です。

ララァは『ファースト』ではシャアに見出され、ジオンのニュータイプ研究所・フラナガン機関で育てられた、インド系のニュータイプの少女、ジオン軍少尉。小説『密会〜アムロとララァ』では、インド・ガンジス川のほとりにある高級士官向けの売春宿カバスにいて、接待で連れてこられたシャアと出会います。

『ジークアクス』では地球の娼館「カバスの館」で「会ったことのないシャアらしきジオンの将校が身請けしにくるものの、白いモビルスーツに殺される夢」を繰り返し見ているほか、ゼクノヴァ(キラキラ)の先の「向こう側の世界」では「シャロンの薔薇」の正体・エルメスのパイロットとして時間凍結されていました。

もともと「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」は、自らをかばって亡くなったララァ(君)にサヨナラが言えなかったと嘆くシャア目線の歌物語。

主題歌となった『逆シャア』こと映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』では、『ファースト』の一年戦争(宇宙世紀0079年1月3日~0080年1月1日)から14年後の宇宙世紀0093年、アムロとシャアの最後の戦いが描かれ、アムロとシャアは行方不明(死亡扱い)になります。

『ジークアクス』ではMSジークアクスの覚醒した思念体・霊体(『逆シャア』の世界からゼクノヴァされてきた残留思念=エンディミオン・ユニット)がアムロ(CV:古谷徹さん)など「堂々巡りのファンタジー」を展開しつつ、メビウスの輪から抜け出したようなハッピーエンドを迎えます。

1番サビ:大義名分より身近な愛を守るララァ

平和より自由より正しさより
君だけが望む全てだから
離れても変わっても見失っても
輝きを消さないで

You can change your destiny 時の向こう
You can change your future 闇の向こう
We can share the happiness 捜してゆく
許し合えるその日を

BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-/作詞:小室みつ子 作曲:小室哲哉

『ファースト』の一年戦争や『逆シャア』のアムロとシャアの最後の戦いで描かれたのは、アースノイド(地球居住者)の連邦とスペースノイド(宇宙居住者)のジオンの対立。それぞれに平和や自由といった大義名分があるものの、ララァ(君)が望んだのはシャアが死なないこと、つまり身近な愛だけでした。

その結果、運命や未来を変えた「BEYOND THE TIME=時の向こう=向こう側の世界」やハッピーエンドの『ジークアクス』が作られたと考えられます。

2番Aメロ:夢が交わる

夢という 風に導かれて
あやまちの 船に揺られてく
We belong to Earth 生きてゆけるのなら
いつかまた 戻れる日がある

BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-/作詞:小室みつ子 作曲:小室哲哉

そもそも『ファースト』の一年戦争で命を落としたのはララァ自身でしたが、『ジークアクス』の向こう側の世界ではシャアが亡くなったことになっていて(=あやまちの船に揺られてく)、あれこれ試した挙句「シャアがガンダムに乗ることによって、シャアが死なない世界線を成立させる」夢を見るララァ。

さらに「(シャアをかばった)ララァを殺したアムロ」は「ララァを殺さない」夢を見ます。こうして「夢という風に導かれて、いつかまた戻れる日=ジークアクス」が描かれたのでしょう。

ただ「1番Aメロ」と「2番Aメロ」の「You belong to me」と「夢という」、「I belong to you」と「あやまちの」で頭韻を踏んでいて、1番のような英語かと思いきや2番では日本語になるというおもしろさがあります。

もしかしたら「You(ユー)」に続く「夢」、「I(アイ)」に続く「あやまち」と言葉の響き先行で、言葉の意味は後づけだったのかもしれません。そう考えると「メビウス」だけでなく「夢」や「あやまち」も重要なモチーフとなった『ジークアクス』の感想は、米津玄師さんの「そら笑うだろ」という爆笑コメントが正解のような気もします。

2番Bメロ:メビウスの輪から引き寄せられた出会い

ああ メビウスの輪から引き寄せられて
いくつもの出会い繰り返す
Beyond the time

BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-/作詞:小室みつ子 作曲:小室哲哉

『ジークアクス』のシュウジはララァを守るために向こう側からこちら側に来ましたが、マチュに対して「きっとこの世界は君と僕が出会うために作られたのかもしれない」と告白します。

あるいは米津玄師さんの「Plazma」では「もしもあの改札の前で立ち止まらず歩いていれば」というマチュとニャアンの出会いが描かれました。まさに「メビウスの輪から引き寄せられ、いくつも繰り返す出会い」といえるでしょう。

2番サビ:小室サウンドの特徴

希望より理想より憧れより
君だけが真実 つかんでいた
はかなくて激しくて偽りない
まなざしを閉じないで

You can change your destiny 時の向こう
You can change your future 闇の向こう
We can share the happiness 捜してゆく
愛し合ったあの日を

You can change your destiny 時の向こう
You can change your future 闇の向こう

BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-/作詞:小室みつ子 作曲:小室哲哉

「胸が張り裂けそうになるほど激しい愛」にも関わらず叫ぶことはなく、感情を排し淡々と歌ったうえで(シャアの話し方にも通じるところがある)、最後だけ透きとおるような高音ボーカルになります。その淡々と繰り返すミニマルなボーカルのおかげで、小室哲哉さんらによる電子音や楽器音が際立つのも小室サウンドの特徴のひとつ

80年代から90年代にかけてのガンダムと小室ファミリーのブーム、人気ぶりはすさまじく、とくにアニメや小室サウンドのファンではない人まで「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」なら歌えたようです。

『ジークアクス』11話のエンディングであのイントロが流れたとき、まさに時空を超越するような感覚に陥った人も多かったのではないでしょうか。

2番ラスサビ:間奏などのサックスは中村哲

ああ もう一度君に
巡り会えるなら
メビウスの宇宙を
越えて Beyond the time

BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて) -2025 Version-/作詞:小室みつ子 作曲:小室哲哉

TM NETWORKの「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」はさまざまなバージョンがあり、シングル版は打ち込み、6thアルバム『CAROL 〜A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991〜』(1988年12月9日、EPIC/SONY RECORDS・Sony Music Entertainment)に収録された「Expanded Version」は青山純(Jun Aoyama)さんがドラムを演奏しているという違いがあります。

そのアルバム版「Expanded Version」はPenguin Cafe Orchestra(ペンギン・カフェ・オーケストラ)の元メンバー(1976年〜1988年)としても知られるUKイングランドのプロデューサーSteve Nye(スティーヴ・ナイ)がミックス・マスタリングを手がけました。

「2025 Version」はYouTubeなどのクレジットを踏まえると鈴江真智子(Machiko Suzue)さんによってリマスタリングされたと思われます。その他を「Expanded Version」に準じると「2025 Version」は下記のようなクレジットになりそうです。

クレジット(?)

  • 小室みつ子(Mitsuko Komuro):作詞
  • 小室哲哉(Tetsuya Komuro):作曲、編曲、キーボード、シンセベース
  • 宇都宮隆(Takashi Utsunomiya):ボーカル
  • 迫田到(Itaru Sakota):マニピュレーター
  • 鳥山雄司(Yuji Toriyama):エレキギター
  • 青山純(Jun Aoyama):ドラム
  • 中村哲(Satoshi Nakamura):サックス
  • TM NETWORK:コーラス
  • 伊東俊郎(Toshiro Ito):レコーディング
  • Steve Nye(スティーヴ・ナイ):ミックス
  • 鈴江真智子(Machiko Suzue):マスタリング

MINGUSS『The Farthest Desert』


ここで注目したいのは間奏やアウトロなどでサックスを吹いている中村哲(Satoshi Nakamura)さん

Ash Ra Tempel(アシュ・ラ・テンペル)のManuel Göttsching(マニュエル・ゲッチング)も参加した、MINGUSS(ミンガス)ことMami Konishi(小西麻美)さんの傑作アルバム『The Farthest Desert』(2018年12月12日、IZIDOA)でも深淵な音色を響かせています。

おわりに


「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」はLUNA SEA(ルナシー)やT.M.Revolution(ティー・エム・レボリューション)こと西川貴教さん、SawanoHiroyuki[nZk](サワノヒロユキ ヌジーク)こと澤野弘之さん(澤野弘之 feat. SennaRin名義)らもカバーしています。

森口博子「BEYOND THE TIME ~メビウスの宇宙を越えて~ / with TM NETWORK」アニメーションMV

玉置成実「BEYOND THE TIME (メビウスの宇宙を越えて)」

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