Metome(メトメ)さん、5年ぶりのアルバム『HORA』には電子音楽の楽しさが詰まっています。
Contents
- 1 はじめに
- 2 【1】Curly
- 3 【2】Plastic Umbrella
- 4 【3】Sand River
- 5 【4】Dive
- 6 【5】Equivalent
- 7 【6】Caries Prevention
- 8 【7】Weather Vane
- 9 【8】Blue Crayfish
- 10 【9】Distant Waves
- 11 【10】Gravel
- 12 【11】Melody in Motion
- 13 【12】Tombola
- 14 【13】Sample Chair
- 15 【14】Salamander
- 16 【15】Observation of Dragonfly
- 17 【16】Ancient
- 18 【17】GOML
- 19 【18】Ghost of Love
- 20 【19】Tico Tico
- 21 【20】Duplicate
- 22 【21】Twofold Purpose
- 23 【22】Fire Script
- 24 【23】Assembly Line
- 25 おわりに
はじめに
大阪を拠点とするプロデューサーTakahiro UchiboriさんによるソロプロジェクトMetome(メトメ)。
https://twitter.com/_Met0me_/status/1428610311242674177
HORA
4thアルバム『HORA』(2023年9月13日、Metome)は、先行シングル6曲を含む、全23曲・1時間46分。
カバーアートはデザイナーの黒崎厚志(Kurosaki Atsushi)さん、TシャツはイラストレーターのSatoshi Kurosakiさんが手がけました。
3rdアルバム『Dialect』(2018年8月8日、Metome / Dialect)以来、5年ぶり。
その後のEP『Trail』(2022年3月11日、Stólar)やディスコグラフィを踏まえると、電子音楽(エレクトロニックミュージック)のなかでも、ざっくりと(系統立てるのは難しく、4つ打ち系も含みつつ、基本的に)非4つ打ち系のIDMやエレクトロニカから、ヒップホップやノイズやエクスペリメンタル系のウィッチハウスを経て、4つ打ち系のハウスにたどり着いたようです。
この独特な流れと共に、安易にジャンル分けできない多様性を堪能しましょう。
metome 4th Album「HORA」リリースしました!
是非聞いて下さい!https://t.co/PLk5A1s9B2— Metome (@_Met0me_) September 13, 2023
【1】Curly
ボーカルサンプルのカットアップ(ボーカルチョップ)が冴える「Curly」。
ギター、ベース、鍵盤のサウンドやビートも心地よく、R&Bやネオソウルの雰囲気が漂うハウスに仕上がっています。
串打ち三年、裂き八年、ボーカルチョップ一生
— Metome (@_Met0me_) December 10, 2020
【2】Plastic Umbrella
音数の少ない的確なミニマルフレーズの展開が楽しい「Plastic Umbrella」。
跳ねる雨音と戯れるMetomeさん流シティポップでしょうか。
ミニマルはセルフのうどん屋でかけうどんだけ頼んでおでんとか天ぷらとかおにぎりとか全無視するようなヤバさがある
— Metome (@_Met0me_) October 31, 2020
【3】Sand River
第2弾シングル「Sand River」(2020年5月4日)もカットアップの手腕が光る、ミニマルなネオソウル系ハウス。
哀愁の漂うギターや鍵盤のサウンドはブルースのようでもあり、全体的にはダウンテンポ、アンビエントハウス、チルウェイヴに接近しています。
【4】Dive
第1弾シングル「Dive」(2020年3月20日・30日)。
「ドローンのようなシンセ、インダストリアルな雰囲気も漂う金属音的なビート、ドラムンベースのビート(ブレイクビーツ)、ネオソウルっぽいボーカル」の足し引きが絶妙です。
【5】Equivalent
ボーカルとシンベのサウンドがキャッチーな「Equivalent」(意味:同等)。
写真家、伊丹豪(Go Itami)監督によるMVには、SSW沖ちづるさんやギター森飛鳥(Asuka Mori)さんらがメンバーの東京発4人組インディーロックバンドTocago(1st EP『Wonder』2023年8月9日、FRIENDSHIP.)、現代美術家の善養寺歩由(Zenyoji Ayu)さんらが出演しています。
https://twitter.com/_Met0me_/status/1711966431557169163
Asuka Mori「Fragment of a mindscape」
アーティストページ等はまだ反映されていませんが1st Single “Fragment of a mindscape”が各種サブスクにて配信開始となりました。
一筆書きのように制作したとても個人的で内省的なアンビエント作品となりました。聴いた後に何かを予感して頂けたら幸いです。https://t.co/k9sS1jNdW2— Asuka Mori (@asuka_mori0323) October 18, 2023
【6】Caries Prevention
「Caries Prevention」は「虫歯予防」という意味。
もし歯科クリニックで流れていたら、安心して治療を受けられそうなアンビエント(環境音楽)といえるかもしれません。
【7】Weather Vane
第6弾シングル「Weather Vane」(2023年5月8日、意味:風向計)。
軽快なボーカルカットアップや風音のようなシンセサウンドが溶け合う4つ打ちハウスです。
四つ打ち、やっと自分が納得できる音が作れるようになってきた。
Tilmanさん、Philippさんのリミックスも最高なんで聞いてみて下さいー!来年3月リリースです。https://t.co/Nc1kEVEkcx #junodownload @junodownloadより— Metome (@_Met0me_) December 24, 2021
フィリップ・プリーベ「Beau Rivage (Metome Remix)」
Philipp Priebeはハウスミュージックのプロデューサーです。stólarってレーベルのオーナーもやってます。https://t.co/lZEsxURu6O
— Metome (@_Met0me_) July 14, 2020
【8】Blue Crayfish
第5弾シングル「Blue Crayfish」(2023年5月7日、意味:青いザリガニ、フロリダブルー)。
トライバルなボイスが印象的に響く、ゆったりミニマルなドラムンベース(ブレイクビーツ)で、これまでの心地いいハウス寄りの流れを壊し始めたでしょうか。
【9】Distant Waves
BPM速めのドラムンベースのビートに、シンセによる「遠くの波」のようなアンビエント・ドローンが重ねられた「Distant Waves」。
ストイックに電子音楽を追求している印象を受けます。
【10】Gravel
「Gravel」(意味:砂利)もストイックさが際立つミニマルテクノ。
粒立ちのいい音のみ浴びる没入感が醍醐味でしょう。
【11】Melody in Motion
30秒あまりのインタールード的な「Melody in Motion」。
ボーカル(メロディ)カットアップの流れ(進行)に戻る布石のようです。
【12】Tombola
「Tombola」はイタリアのビンゴゲーム「トンボラ」のことで、「当たり」という意味もあります。
ストイックにビート(トラック)メイクを追求しつつ、Metomeさんの代名詞的なボーカルチョップに戻った流れがしっくりくるというか、「当たり」なのかもしれません。
【13】Sample Chair
サンプルのカットアップがエクスペリメンタルな「Sample Chair」。
非4つ打ち、ビートなしの実験性も発揮されています。
オウテカ『SIGN』
オウテカ聞いて反省中。
— Metome (@_Met0me_) September 23, 2020
【14】Salamander
「Salamander」(読み:サラマンダー)は両生類>有尾類の「ファイアサラマンダー」、あるいは「火の精霊」でしょうか。
延々と繰り返されるスクラッチはイモリの仲間のファイアサラマンダーがドタバタ歩くようでもあり、その後の解放感は炎を吐く火の精霊サラマンダーを想像できるかもしれません。
【15】Observation of Dragonfly
「Observation of Dragonfly」(意味:トンボの観察)は、緊迫感の漂うシンセドローン。
ミムラシンゴ『Sprouting Life』
【New Release】
5th アルバム "Sprouting Life" 本日リリース!「極微と宇宙、その狭間で生きる全ての生命、植物、物質、事象に捧げる音世界」
・Streaming:https://t.co/b2x3w6QCfk
・Label Shop:https://t.co/ex9nPIZxxx
・Bandcamp:https://t.co/zgeARZqi9Q pic.twitter.com/jfm9YLjmSk— Shingo Mimura – ミムラシンゴ (@fatbottoms) October 11, 2023
【16】Ancient
第3弾シングル「Ancient」(2021年12月26日、意味:古代)はグリッチ全開。
基本的に「陽気なダンスミュージックのハウス」と「不気味な非ダンスミュージックのノイズ(グリッチ)」はそれぞれ細分化が進み、すみ分けられていますが、1枚のアルバムに両方の要素を取り入れ、なおかつ違和感のない流れを生み出せるところがMetomeさんの手腕といえるでしょう。
京都を拠点とするプログラマー、サガー・パテル(Sagar Patel)によるMVも制作されています。
京都を拠点に活動するプログラマーsagar patelさんにMVを制作して頂きました!https://t.co/2oS9mpcnPu pic.twitter.com/lwyZ0xAp4r
— Metome (@_Met0me_) September 28, 2023
アルヴァ・ノト『HYbr:ID II』
New Release from NOTON
10/13発売
Alva Noto “HYbr:ID II”(CD / 2LP)ドイツ人アーティストAlva Notoの多彩な作曲技法を探求するシリーズ『HYbr:ID』第2弾!ダンス作品『Ectopia』の為に制作。4次元時空理論に触発された無限の世界を探求する壮大なサウンド。 https://t.co/bbFmHKFEET pic.twitter.com/TPWWo1UIJF
— p*dis / Inpartmaint (@pdis) September 15, 2023
【17】GOML
「GOML」は「Get On My Level」(意味:俺のレベルに追いつけ)の略でしょうか。
格ゲーの大会やヒップホップの曲名を連想できそうですが、真相はわかりません。
ジャジーなドラムンベース、浮遊感の漂うシンセドローンやミニマルな展開が粋です。
ウィッチハウス経由でトラップに行かんかった人達の存在感が増して欲しい
— Metome (@_Met0me_) October 6, 2020
【18】Ghost of Love
かわいらしいミニマルなアンビエント「Ghost of Love」。
この路線でアルバムを作ってほしくなるほど、ずっと聴いていられます。
【19】Tico Tico
実験音楽のようなミニマルテクノ「Tico Tico」。
ボイスが加わる後半にかけて、じっくり積み重ねる流れがストイックです。
【20】Duplicate
20秒足らずの「Duplicate」(意味:複製、コピー)は、11曲目「Melody in Motion」のようなインタールードです。
【21】Twofold Purpose
第4弾シングル「Twofold Purpose」(2023年5月7日、意味:2つの目的)。
ボーカルカットアップとシンセドローンの2つが美しく重なります。
【22】Fire Script
「Fire Script」は「炎文字」という意味でしょうか。
ギター、バイオリン、ベース、シンセ、ボーカル共にR&Bのラブソングのようですが、独自のスクリプト言語にカットアップされているらしく、燃え盛る愛が語られているかどうかはわかりません。
【23】Assembly Line
ジャジーかつミニマルな「Assembly Line」(意味:組み立てライン)で締めくくられました。
おわりに
さまざまな要素がありつつ、全体的に穏やかで温かい雰囲気に満ちたアルバムでした。
ウィッチハウスやグリッチなどの不気味な実験性を適度に抑えてハウスを基調にしつつ、フロアライクなゴリゴリのダンスミュージックには走らないところがMetomeさんらしいセンス。
時代に合った心地よさを堪能できたのではないでしょうか。
【SHIPS MAG VOL.14】音SHIPS
−注目アーティストの友だち巡り・Metome編http://t.co/pgXj22Z3Ni pic.twitter.com/b6gTxUsCfU— SHIPS (@SHIPS_LTD) October 31, 2014
speedometer.『afterglow -残照-』
Metomeさんともコラボし、古本と古物を展示・販売するプロジェクト、アサノヤブックス(ASANOYA BOOKS、大阪・藤井寺)を主宰するspeedometer.(高山純)さんのアルバム『afterglow -残照-』(2023年8月25日、JUN RECORDS)は、ダビーかつエクスペリメンタルなアンビエントでクセになります。
<NEWS>大阪を拠点に活動するミュージシャン・高山純 @spdmtr のソロユニット、speedometer.が、フルアルバム「afterglow -残照-」をリリース。同名のフォトブックも同時発売。https://t.co/zHqIigHMmz pic.twitter.com/O0XfdzwKqN
— paperC_osaka (@osaka_paperC) September 5, 2023
kafuka「Sneaky」
metome&kafuka(略称:メトカフ)名義でEPもリリースしたkafuka(Eshima Kazuomi)さんのシングルもどうぞ。
リリース✨今年3枚目のシングルです〜#bandcamp
kafuka – Intricacyhttps://t.co/dsywVixLVo pic.twitter.com/eLaAgulGpC
— kafuka (@kazuomi_e) October 5, 2023
Tomotsugu Nakamura『Antenna』
東京を拠点とするサウンドアーティストのTomotsugu Nakamura(中村友胤)さんが、アルバム『Antenna』(2023年10月6日、Audiobulb Records)でフォーカスしたのはグリッチ。
Metomeさんとは逆の試みのようですが、やはり穏やかで温かみがあります。
New glitching sound compositions have been just released from audiobulb.
英audiobulbから、グリッチサウンドにフォーカスした新しいデジタルアルバムがリリースされました。#BandcampFriday #glitch https://t.co/6XxLsvriHg
— tomotsugu nakamura (@tomotsugu) October 6, 2023
地球『ジャングル』
再発とのことで、オランダのヴェイパーウェイヴ作家、猫 シ Corp.(Cat System Corporation)の別名義、地球のアンビエント・アルバム『ジャングル』(2014年11月14日、Hiraeth Records)もぜひ!
https://twitter.com/tobirarecords/status/1714935259878629805
ディスコグラフィ
- EP『Wonderwall』2012年3月21日、+MUS
- EP『Cloud』2012年12月24日、Metome
- 1st AL『Opus Cloud』2013年3月21日、moph reocrds / Schist
- EP『Phreatic Surface』2013年5月27日、King Deluxe
- 2nd AL『Objet』2013年12月22日、Metome / Schist
- EP『Angel』2015年1月18日、Metome
- EP『Feather』2016年7月12日、postgeography
- EP『Palm』2016年11月19日、Metome
- EP『50 min』2016年12月15日、Metome
- EP『Shibboleth』2018年3月22日、Metome / supərpawərz
- 3rd AL『Dialect』2018年8月8日、Metome / Dialect
- AL『Dark, tropical.』(w/ uratomoe、speedometer.)2020年3月4日、P-VINE
- EP『Trail』2022年3月11日、Stólar
- EP『Soar』(metome&kafuka)2023年8月24日