音楽

XG「HOWLING」歌詞&和訳の意味を考察!コーチェラ出演決定の日本人7人組ガールズグループ

XG(読み方:エックスジー)は日本人7人組ガールズグループ。アメリカ・カリフォルニアの砂漠で開催される野外音楽フェス・コーチェラ(Coachella)への出演が決定しました(現地時間:2025年4月11〜13日・18〜20日)。2ndミニアルバム『AWE』(アウー)のテーマは畏敬(いけい、崇高なものや偉大な人を恐れ敬うこと)。そのリード曲「HOWLING」(ハウリング)の歌詞&和訳の意味を考察、解説します。

Contents

XG(エックスジー)とは?


韓国を拠点に活動する、HIPHOP(ヒップホップ)とR&Bのガールズグループ、XG(エックスジー)。メンバーはハーフ2人を含む、日本人7人です。

グループ名のXGはXtraordinary Girls(エクストラオーディナリー・ガールズ、意味:非凡で特別な少女たち)の略。「常識にとらわれない規格外の音楽スタイルやパフォーマンスで世界中の人々をエンパワー(鼓舞)する」といった意味が込められています。

ファンダム(熱心なファン、およびそのコミュニティ)名はALPHAZ(アルファズ)。オオカミの群れ(パック)のリーダー、アルファ(オスとメスのカップル)に由来します。


XGは日本の芸能事務所avex(エイベックス)と韓国の芸能事務所XGALX(エックスギャラックス)が共同で実施したX-Galaxy(エックスギャラクシー)プロジェクトにより誕生。

X-Galaxyは2017年から5年間の練習期間を経てグローバルに活躍するグループを育成するプロジェクトで、プロデュース全般(発掘、育成、制作など)をJAKOPS(SIMON、サイモン)が手がけました。

XGは2022年3月に1stシングル「Tippy Toes」でXGALXからデビュー。日本人ガールズグループとしては初めてアメリカの音楽雑誌『Billboard』(ビルボード、No.14・2023年10月21日号)の表紙を飾るなど、J-POPでもK-POPでもないX-POPを展開し、グローバルに活躍しています。

メンバー

  • 左→右:HARVEY、HINATA、JURIA、JURIN、CHISA、COCONA、MAYA

  • JURIN(ジュリン、浅谷珠琳):生年月日・誕生日:2002年6月19日、神奈川出身、メンバーカラー:シルバー、リーダー

  • CHISA(チサ、本名:近藤千彩):2002年1月17日、大阪出身、ゴールド、副リーダー

  • HINATA(ヒナタ、宗原ひなた):2002年6月11日、愛知出身、スカイブルー、韓国と日本のハーフ

  • HARVEY(ハーヴィー、ハーヴィー 瑛美・Amy Jannet Harvey):2002年12月18日、東京出身、パープル、オーストラリアと日本のハーフ

  • JURIA(ジュリア、上田純利亜):2004年11月28日、大阪出身、オレンジ

  • MAYA(マヤ、河地マヤ):2005年8月10日、東京都、レッド

  • COCONA(ココナ、秋山心響):2005年12月6日、東京出身、グリーン

ディスコグラフィ

  • 1st SG「Tippy Toes」2022年3月18日、XGALX
  • 2nd SG「MASCARA」2022年6月29日、XGALX
  • 3rd SG『SHOOTING STAR』2023年1月25日、XGALX
  • Digital SG『SHOOTING STAR REMIXX (PROD BY JAKOPS)』2023年4月7日、XGALX
  • Digital SG「LEFT RIGHT REMIXX (FEAT. CIARA X JACKSON WANG // PROD BY JAKOPS)」2023年5月5日、XGALX
  • 「GRL GVNG」2023年6月30日、XGALX
  • 「TGIF」2023年8月4日、XGALX
  • 「NEW DANCE」2023年8月23日、XGALX
  • 1st Mini AL『NEW DNA』2023年9月27日、XGALX
  • 4th SG「WINTER WITHOUT YOU」2023年12月8日、XGALX
  • XG & VALORANT「UNDEFEATED」2024年4月12日、XGALX
  • 5th SG『WOKE UP』2024年5月21日、XGALX
  • 「SOMETHING AIN’T RIGHT」2024年7月26日、XGALX
  • Digital SG『WOKE UP REMIXX (PROD BY JAKOPS)』2024年9月20日、XGALX
  • 「IYKYK」2024年10月11日、XGALX
  • 2nd Mini AL『AWE』2024年11月8日、XGALX

XG 2ndミニアルバム『AWE』

  • リリース(デジタル・CD・LP):2024年11月8日
  • レーベル:XGALX

HOWLING」(ハウリング)がリード曲の2ndミニアルバム『AWE』(アウー)は全8曲・23分あまり。

  1. HOWL
  2. HOWLING
  3. SPACE MEETING Skit
  4. IYKYK
  5. SOMETHING AIN’T RIGHT
  6. IN THE RAIN
  7. WOKE UP REMIXX (FEAT. Jay Park, OZworld, AKLO, Paloalto, VERBAL, Awich, Tak, Dok2)
  8. IS THIS LOVE

m-flo「prism」


先行配信曲「SOMETHING AIN’T RIGHT」、m-floの11thシングル「prism」(2001年5月9日、2ndアルバム『EXPO EXPO』2001年3月28日、rhythm zone)をサンプリングした「IYKYK」、5thシングル『WOKE UP』のリミックスとしてリリースされたデジタルシングル『WOKE UP REMIXX (PROD BY JAKOPS)』のタイトル曲などが収録されています。
https://twitter.com/SpotifyJP/status/1854826206199529731

XG「HOWLING」ミュージックビデオ・Official Music Video・MV・PV・YouTube動画

「HOWLING」のMVは「宇宙から来たXGが、オオカミの群れのように結束して勢力を拡大する」というコンセプト。「画一化された都市や既存の秩序を自分たちのやり方で変化させようとする強い意志」が表現されています。

https://twitter.com/XGOfficial_/status/1864701267307614211

XG「HOWLING」MV Teaser #1


坊主ヘアがかっこかわいいCOCONA(ココナ)さん。顔につけた仮面のQRコード(QR code)を画像処理して読み込むと「PIG」(意味:豚、王座に座った男性のこと?)と書いてあるなど、考察が白熱しています。

XG「HOWLING」MV Teaser #2


MVでオマージュされている元ネタとしては、大友克洋さん製作総指揮&総監督のオムニバスアニメ映画『MEMORIES』(1995年)、スタジオジブリのアニメ映画『もののけ姫』(1997年)、漫画やアニメの『攻殻機動隊』、SFアクション映画『マトリックス』(The Matrix、1999年)などが考えられます。
https://twitter.com/XGOfficial_/status/1854812353700708826

XG「HOWLING」Choreography

  • 振付師(Choreographyer、コレオグラファー):Sienna Lalau(シエナ・ララゥ / The Lab)

https://twitter.com/sienna_lalau/status/1855201030474015001

https://twitter.com/XGOfficial_/status/1861696716979749255

XG「HOWLING」MV & Photoshoot | Behind The Scenes


https://twitter.com/XGOfficial_/status/1858797613211910483

XRA XG #52 (‘HOWLING’ MV Behind)


https://twitter.com/XGOfficial_/status/1866407758339465226

XG「HOWLING」歌詞の意味を考察

  • 1番:Aメロ前半(バース)~Aメロ後半(バース)~Bメロ(プレコーラス)~サビ・Cメロ(コーラス)
  • 2番:Aメロ前半(バース)~Aメロ後半(バース)~Bメロ(プレコーラス)~サビ・Cメロ(コーラス)
  • 3番:Dメロ(ブリッジ)~ラスサビ・Cメロ(コーラス)
  • Genius(歌詞・歌割り・パート分け):XG「HOWLING」
  • カラオケDAM:XG「HOWLING」
  • カラオケJOYSOUND:XG「HOWLING」

1番Aメロ前半:頂点を目指すXGの進み方

【歌詞 / 歌割り・パート分け】
COCONA:First we rock and that’s how we roll
Block is hot cuz X took that throne
Tough as diamonds no sticks and stones
(HARVEY:Dots connecting like tic-tac-toe)

JURIN:Lights go out and my pack just grow
Opposition my prey my foes
Game of hunger I bring that smoke
(MAYA:You don’t want no smoke)

【和訳】
まず揺り動かす それが私たちの進み方
街角が熱気に満ちているのは Xが玉座を奪ったから
ダイヤモンドみたいにタフ 棒や石ではない
(○×ゲームみたいに 点がつながる)

明かりが消えたら 群れは大きくなる
対立しているのは 私の獲物 私の敵
ハングリーなゲーム 私はその戦いに挑む
(あなたは戦いを望まない)

HOWLING/作詞・作曲:CHANCELLOR・JAKOPS・Knave・JAEYOUNG・LYRICKS

「HOWLING」(ハウリング)という曲名の意味は「遠吠え」。とくにXGを象徴する動物「オオカミの遠吠え」として描かれています。楽曲全体で表現されているのは「頂点を目指して進み続けるXGの洗練された本能的なカリスマ性」です。

ShotGunDandy:XG – HOWLING徹底解説


考察記事としてはいきなりネタバレになりますが、沖縄在住のHipHop翻訳家(ビートメイカー・YouTuber)ShotGunDandyさんのYouTube動画、解説動画がすごいので、まずはそちらをご覧ください。
https://twitter.com/ShotGunDandymk3/status/1854886858532295062
XGのメンバー7人はリリック(歌詞、作詞)やトラック(作曲、編曲)といった楽曲制作をせず、ラップ・ボーカル・ダンスに専念するスタイルなので、その点はアイドル的手法と考えられます。

ただ、その分業スタイルを含め、オオカミのリーダー、アルファのようなつわものばかりが集まっているので、一般的なJ-POP・K-POPリスナーが引くほど本格的すぎる楽曲もあるほどです。そのなかで「HOWLING」は音楽的なおもしろさとわかりやすさのバランスがほどよいといえるでしょう。

本格的なラップのバース(Aメロ)がたっぷりあり、キャッチーなボーカルのプレコーラス・ブリッジ(Bメロ・Dメロ)とコーラス(サビ)につながる構成です。とくにラップのリリックおよびXGメンバーのフロウ(歌い方)はヒップホップラバーも興奮する仕上がり。そのためShotGunDandyさんの解説は不可欠と言い訳しつつ考察に入ります。

XG「HOWLING」SBS人気歌謡(INKIGAYO)2024/11/10


J Dilla(J・ディラ)ばりにヨレた(シャッフル、スウィングした)ダブルベース(コントラバス、アップライトベース)、オオカミの遠吠え、タイトかつ不気味なビートの3本立てのイントロで既に優勝

ダブルベースのイントロ「タタタ〜タ・タタタ〜タ、タタタ〜タ・タタタタ(タタタ)」の「タ〜タ」とヨレる(揺れ動く)部分が「ドン、カッ」の基本ビートになっていく点も最高です。

というわけで「First we rock and that’s how we roll=まず揺り動かす それが私たちの進み方」という歌詞から始まっています。COCONAさんがドンと着地して地面を揺り動かしてからラップを始めるダンスの振り付けも最高です。

ジャズとヒップホップのビートが融合したサウンドに「rock and roll=ロック」というラップを乗せる遊び心、音楽全体へのオマージュに心が揺り動かされます。豚のような男性から王座を奪った「X」はXGでしょうか。

Ray Charles「Sticks and Stones」


no sticks and stones=棒や石ではない」の由来はことわざ「Sticks and stones may break my bones, but words shall never hurt me」(棒や石は私の骨を折るかもしれないが、言葉は決して私を傷つけない→嫌なことを言われても気にすることはない)。

Ray Charles(レイ・チャールズ)のシングルでヒットしたR&B曲「Sticks and Stones」(スティックス・アンド・ストーンズ)も連想できそうです。ShotGunDandyさんは「rock and roll」の伏線を回収するかたちでThe Rolling Stones(ローリング・ストーンズ)とのつながりを指摘しています。

さらに「Dots connecting like tic-tac-toe=○×ゲームみたいに 点がつながる」は「X」の伏線回収。○×ゲームのバツ(エックス)がつながることでXGが勝った(王座に就いた)イメージという考察もおもしろいです。また「Dots=点」は後ほど回収される伏線にもなっています。

XG「HOWLING」韓国MBC:ショー!K-POPの中心(Show! MusicCore)2024/11/09


大まかに3種類ある韻の踏み方(ライミング、押韻、踏韻)「頭韻、脚韻、完踏」のうち、「roll、throne、toe、grow、foes、smoke」は文末(小節の終わり)で韻を踏む「脚韻」になっています。「First、Tough、Lights、Game」や「Block、Dots、Opposition」はゆるやかに文頭(小節の頭)で韻を踏む「頭韻」になっているようです。

Game of hunger=ハングリーなゲーム」の元ネタは、Suzanne Collins(スーザン・コリンズ)の小説を原作としたアメリカのサバイバル映画『ハンガー・ゲーム』(The Hunger Games、2012年)と思われます。

高見広春さんのホラー小説を原作とした深作欣二監督の映画『バトル・ロワイアル』(2000年)に似ていると話題になりましたが、原作者スーザン・コリンズは関連性を否定しました。

英題そのままの「The Hunger Games」ではなく「Game of hunger」になっているのは、アメリカのテレビドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』(Game of Thrones、GOT、2011年〜2019年)も元ネタだから。ここで「throne=王座」の伏線回収、両作品ともXGを象徴するオオカミが登場するとShotGunDandyさんは考察しています。

1番Aメロ後半:マイケル・ジャクソンへのオマージュ

【歌詞 / 歌割り・パート分け】
HARVEY:Fangs out
Attack on three that’s a man down
I been throwing these paws like a handout
Too many cappin’ I be losing headcount
See the red dot?

MAYA:I like to cook so I hunt for my dinner
My appetite only get bigger and bigger
If I turn wolf then it must be a thriller
Woke up in blood so I must be a killer

【和訳】
牙をむき
3つ数えて攻撃 1人倒れた
チラシ配りみたいに この肉球を繰り出した
嘘つきが多すぎて 数えきれない
標的の赤い点が見える?

料理が好きだから 夕食のために狩りをする
食欲は増すばかり
私がオオカミに変身したら スリラーになるだろう
血まみれで目覚めたから 私は殺し屋に違いない

HOWLING/作詞・作曲:CHANCELLOR・JAKOPS・Knave・JAEYOUNG・LYRICKS

引き続き、HARVEY(ハーヴィー)さんによるかわいい「Fangs out、man down、handout、headcount、red dot」の脚韻、MAYA(マヤ)さんによるキレキレの「dinner、bigger、thriller、killer」の脚韻が冴えわたるラップパートです。

ShotGunDandyさんによると、「Attack on three=3つ数えて攻撃」は漫画やアニメなどの『進撃の巨人』の英題『Attack on Titan』を意識しているだろうとのこと。

「1番Aメロ前半」で出てきた「Dots=点」と銃の照準器(サイト)で狙いを定める「red dot=赤い点」が、まさに「○×ゲームみたいにつながる」という伏線回収もおもしろいです。

Michael Jackson「Thriller」


thriller=スリラー、恐怖物」といえばキング・オブ・ポップ、Michael Jackson(マイケル・ジャクソン)のアルバム(1982年12月1日、Epic Records)およびシングル「Thriller」(スリラー、1983年11月12日)。

MVで狼男(人狼)に変身する点はもちろん、シャウト(合いの手)の「アウ!」がXGの2ndミニアルバム『AWE』(アウー)や「HOWLING=オオカミの遠吠え」とつながるおもしろさもあります。XGはマイケル・ジャクソン並みの王座を狙っているようです。

XG「WOKE UP」


Woke up=目覚めた」から連想できるのは、XGの5thシングル『WOKE UP』。こちらのセルフオマージュも後ほど回収される伏線になっています。

「thriller」と韻を踏んだ「killer=殺し屋」は文字どおりキラーワード(殺し文句)。「オオカミに変身する」ことを「血まみれで目覚めた」と表現していて、「XGがマイケル・ジャクソン並みの音楽的才能に覚醒した」と解釈できます。

リアルな「killer=殺人者」だとギャングスタ・ラップ的ですが、肉食のオオカミに変身すれば「killer=殺し屋」というパワーワードもコンプライアンス的にギリギリセーフ。それでも1番のラップパートのラストがリリックもフロウも最も激しいため、続くメロディアスなボーカルパートとの落差、ギャップにも注目です。

1番Bメロ:ボーカルパートも危険かも

【歌詞 / 歌割り・パート分け】
JURIA:No way out when it fades out
Can’t hide in the dark
HINATA:Cuz when the moon light
on a full rise is glowing down

CHISA:Nothing can stop or еndanger us
So don’t play with us could be dangerous
JURIN:So run if you hеar the sound
(JURIA・HINATA・CHISA:The sound)
’Cause that’s how we howl

【和訳】
暗くなったら 逃げ場はない
暗闇に隠れることはできない
月が昇りきったとき
光が照らすから

誰も私たちを止めることも脅かすこともできない
だから私たちをからかわないで 危険かも
その音を聞いたら逃げなさい(その音)
それが私たちの遠吠えだから

HOWLING/作詞・作曲:CHANCELLOR・JAKOPS・Knave・JAEYOUNG・LYRICKS

ギャングスタばりのゴリゴリのラップが炸裂した後なので、ここは穏やかな逃げ場なのかもしれないと錯覚してしまうボーカルパート。ところが「暗くなっても月の光に照らされて隠れることができないため逃げ場はない」という展開です。

たしかにボーカルパートなのにラップのように「еndanger us、play with us、dangerous」と畳みかける脚韻はキレキレすぎて危険かもしれません。

that’s how we howl=それ(これ)が私たちの遠吠え・吠え方、私たちはそうやって(こうやって)吠える」は「HOWLING」という楽曲全体のメッセージ。「the sound=その音」こと「howl=遠吠え」が響きわたるサビに続きます。

1番サビ:これがXGの遠吠え

【歌詞 / 歌割り・パート分け】
CHISA:Ah-woo-woo-woo
That’s how we howling
Growling
Wildin’
That’s how we howl

COCONA:Ah-woo-woo-woo
That’s how we howling
Growling
Wildin’
JURIA:So where are you now?

【和訳】
アウウーウー
これが私たちの遠吠え
うなり声
狂宴
これが私たちの遠吠え

アウウーウー
これが私たちの遠吠え
うなり声
狂宴
あなたは今どこにいるの?

HOWLING/作詞・作曲:CHANCELLOR・JAKOPS・Knave・JAEYOUNG・LYRICKS

マイケル・ジャクソンの短い合いの手「アウ!」を揺り動かしてロングバージョンのサビに引き伸ばしたと深読みすると、冒頭の「First we rock and that’s how we roll=まず揺り動かす それが私たちの進み方」が何重にも深みを増し、無茶苦茶おもしろいです。

2ndミニアルバムのタイトル『AWE』を一般的な「オー」や「オウ」ではなく、わざわざ「アウー」と読ませているのは、オオカミの遠吠え「HOWLING」こと「Ah-woo-woo-woo=アウウーウー」とリンクさせるためと思われます。

それでもマイケル・ジャクソンの「アウ!」揺り動かし説も捨て難いです。マイケル・ジャクソンのシングル「Thriller」のみならずアルバム『Thriller』も視野に入れて、XGは王座を狙っているのかもしれません。

2番Aメロ前半:アメフト描写の意味

【歌詞 / 歌割り・パート分け】
JURIN:Moonwalk on a rooftop like a wolf
I move like Nat Geograph with a zoom shot
Hoorah huddle up bring in the whole squad
These plays is not for you to re-enact

HARVEY:First down and you know how we adapt
Touch down and you know how we impact
Caught the throw got the goal
Rewind the video do I really gotta run it back

【和訳】
オオカミみたいに 屋根の上でムーンウォーク
ナショジオのズームショットみたいに動く
フレー 集まれ 全員集合
このプレーはあなたには真似できない

最初の攻撃で 私たちの適応力を思い知る
最後の攻撃で 私たちの衝撃がわかる
パスをキャッチして ゴールを決めた
ビデオを巻き戻して またやり直さないといけない?

HOWLING/作詞・作曲:CHANCELLOR・JAKOPS・Knave・JAEYOUNG・LYRICKS

2番に入り、JURIN(ジュリン)さんの「wolf、shot、squad、re-enact」やHARVEYさんの「adapt、impact、back」で脚韻を踏んでいるラップパート。

Caught the throw got the goal=パスをキャッチして ゴールを決めた」(カッザスロー・ガッザゴー)のみ単独の完踏(かんとう、単語丸ごと母音で韻を踏むこと)で、リズムを揺り動かすフロウがかっこかわいいです。

Michael Jackson「Smooth Criminal」


Moonwalk=ムーンウォーク」はストリートダンスの一種、ポッピングのバックスライドという技のこと。マイケル・ジャクソンが1983年5月のライブで「Billie Jean」(ビリー・ジーン)の間奏中に初披露し、有名になりました。

Smooth Criminal」(スムーズ・クリミナル、1988年10月8日、EPIC SONY)のMVやマイケル・ジャクソン主演のミュージカル映画『ムーンウォーカー』(Moonwalker、1988年)などでも披露しています。

Nat Geograph=ナショジオ」はアメリカのドキュメンタリーチャンネルNational Geographic(ナショナル ジオグラフィック)の略。「Hoorah」(読み方:フラー)はフレーや万歳という意味の掛け声です。

XG「WOKE UP」Mnet(エムネット):M COUNTDOWN(エム・カウントダウン)2024/05/30


huddle」(ハドル、円陣を組んで行う作戦会議)、「First down」(ファーストダウン、4回の攻撃権のうちの1回目)、「Touch down」(タッチダウン、敵のエンドゾーンにボールを持ち込む得点方法・6点獲得)、「run it back」(リプレイのこと、ランニングバック:RB・攻撃側のポジションも連想可)はアメフト用語。

XGは「WOKE UP」のMVやテレビ出演時にアメフトのヘルメットを被っているので、「1番Aメロ後半」で張られた伏線「Woke up=目覚めた」を回収するかたちでしょう。

XGALX(エックスギャラックス)のCEO・XGのエグゼクティブプロデューサーJAKOPS(SIMON、サイモン)がアメフト経験者で、アメリカのアメフトリーグNFLの優勝決定戦スーパーボウルのハーフタイムショーへの出演を狙っていると考察するALPHAZ(アルファズ)もいます。

XG「HOWLING」KBSワールド:ミュージックバンク(KBS World:Music Bank)2024/11/08


ちなみに「HOWLING」を含めXGの振り付けを手がけている振付師(Choreographyer、コレオグラファー)Sienna Lalau(シエナ・ララゥ)は、Rihanna(リアーナ)のバックダンサーとして2023年にスーパーボウルのハーフタイムショーに出演しました。
https://twitter.com/sienna_lalau/status/1624967864129302528

2番Aメロ後半:凶暴なラップパート

【歌詞 / 歌割り・パート分け】
MAYA:You unleashed the beast
Call it wolf gang ‘cause we bout to feast
Call it firsthand a new type of breed
Never cease I got mouths to feed

COCONA:Listen you hear the howling
Sound of a couple thousand
alphas now the fear surrounding
I move in silence
Brute like a group of wildlings
No choice but to choose the violence

【和訳】
あなたは獣を解き放った
オオカミギャングと呼んで これから宴だから
直接ニュータイプの種族と呼んでもいい
私は止まらない 食べさせる仲間がいるから

聞いてごらん 遠吠えが聞こえる
数千のアルファの声が響き
今辺りに恐怖が漂っている
私は静かに動くけど
野生の群れのように野蛮
凶暴になるしかない

HOWLING/作詞・作曲:CHANCELLOR・JAKOPS・Knave・JAEYOUNG・LYRICKS

MAYAさんの「beast、feast、breed、feed」、COCONAさんの「howling、thousand、surrounding」や「silence、wildlings、violence」で脚韻を踏んでいるラップパート。

No choice but to choose the violence」は「凶暴になるしかない」と意訳しましたが、直訳すると「暴力を選ぶしか選択肢はない」となります。ここもボーカルパート直前のラップフレーズなのでギャングスタ・ラップばりに超過激な表現です。

ただ、実際に暴力をふるうわけではなく、オオカミになぞらえて音楽業界でワイルドに暴れるイメージでしょう。総合的な創作表現としてある意味、暴力的ともいえるほどのかっこよさを誇りつつ、コンプライアンス的にはすれすれセーフなラインを攻めています。

2番Bメロ:スリラーの恐怖は続いている

【歌詞 / 歌割り・パート分け】
HINATA:Can’t break out no escape route
There’s nowhere to hide
CHISA:It’s close to midnight
and the night skies come haunting down

JURIA:Nothing can stop or endanger us
If you anger us could be dangerous
HARVEY:So run if you hear the sound
(HINATA・CHISA・JURIA:The sound)
‘Cause that’s how we howl

【和訳】
抜け出せない 逃げ道はない
隠れる場所もない
もう真夜中近く
夜空が不気味に迫りくる

誰も私たちを止めることも脅かすこともできない
私たちを怒らせたら 危険かも
その音を聞いたら逃げなさい(その音)
それが私たちの遠吠えだから

HOWLING/作詞・作曲:CHANCELLOR・JAKOPS・Knave・JAEYOUNG・LYRICKS

JURIA(ジュリア)さんの「endanger us、anger us、dangerous」と畳みかける脚韻がおもしろいボーカルパート。

https://twitter.com/XGOfficial_/status/1861787061558104370

CHISA(チサ)さんが歌う「It’s close to midnight=もう真夜中近く」はマイケル・ジャクソン「Thriller」の歌詞にも出てきます。HINATA(ヒナタ)さんの透明感あふれるボーカルも逃げ道にはなりません。

2番サビ:あなたは今どこにいるの?

【歌詞 / 歌割り・パート分け】
JURIA:Ah-woo-woo-woo
That’s how we howling
Growling
Wildin’
That’s how we howl

HINATA:Ah-woo-woo-woo
That’s how we howling
Growling
Wildin’
MAYA:So where are you now?

【和訳】
アウウーウー
これが私たちの遠吠え
うなり声
狂宴
これが私たちの遠吠え

アウウーウー
これが私たちの遠吠え
うなり声
狂宴
あなたは今どこにいるの?

HOWLING/作詞・作曲:CHANCELLOR・JAKOPS・Knave・JAEYOUNG・LY

1番、2番、3番ともサビの歌詞は同じですが、歌割り・パート分けは異なります。さて、2番ではMAYAさんが歌う「So where are you now?=あなたは今どこにいるの?」の「you=あなた」はいったい誰のことでしょうか。

オオカミに変身したXGが音楽業界でライバルとなる敵を探しているようでもあり、XGファンのALPHAZ(アルファズ)や一般リスナーにも共に歌い踊ろうと結束を呼びかけている感じもします。直後に回収される伏線にもなっているかもしれません。

3番Dメロ:ようこそ野生的な世界へ

【歌詞 / 歌割り・パート分け】
HINATA:Welcome to the wild
JURIA:Where the strongest ones survive
CHISA・HINATA:Too late to run away
You better kneel and pray
JURIA・CHISA:When we’re howling in the dark

【和訳】
ようこそ野生的な世界へ
強い者が生き残る場所
逃げるには遅すぎる
ひざまずいて祈ったほうがいい
私たちが暗闇で吠えているときは

HOWLING/作詞・作曲:CHANCELLOR・JAKOPS・Knave・JAEYOUNG・LYRICKS

HINATAさん、JURIAさん、CHISAさんの3人でひときわメロディアスに盛り上がるボーカルパート。

Guns N’ Roses「Welcome to the Jungle」

You know where you are?
You’re in the jungle, baby
You’re gonna die

In the jungle, welcome to the jungle
Watch it bring you to your shun-n-n-n-n-n-n-n-n-n-n-n, knees, knees

Welcome to the Jungle/作詞・作曲:MC KAGAN DUFF ROSE・ROSE W AXL・SLASH(US 2)・STRADLIN IZZY・ADLER STEVEN

Welcome to the wild=ようこそ野生的な世界へ」といえば、Guns N’ Roses(ガンズ・アンド・ローゼズ)の「Welcome to the Jungle」(ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル、1987年9月21日、Geffen Records)を連想する人もいるでしょう。

デビューアルバム『Appetite for Destruction』(アペタイト・フォー・ディストラクション、1987年7月21日)からシングルカットされた楽曲です。「Welcome to the Jungle」という曲名のほか「You know where you are?」や「knees」といった歌詞もあります。

You better kneel and pray=ひざまずいて祈ったほうがいい」の「kneel=ひざまずく」やサビの「So where are you now?=あなたは今どこにいるの?」とリンクするかもしれません。

そのガンズ、Axl Rose(アクセル・ローズ)の「シャナナナ……ニーニー」という甲高い金切声からメロディアスなボーカルへの振り切りぶりは、Mötley Crüe(モトリー・クルー)などのLAメタルブームのなかでも異彩を放ち、一世を風靡しました。

サウンドや音楽スタイルはまったく異なるものの、激しさと穏やかさの落差が著しいところは共通しています。ただし、ガンズは「ようこそ野性的な都会(現実)へ」、XGは「ようこそ野性的な音楽(創造)の世界へ」と世界観は真逆です。果たして関連性はあるのでしょうか。

3番ラスサビ:結局あなたは敵?それともアルファ?

【歌詞 / 歌割り・パート分け】
Ah-woo
JURIA:That’s how we howling
Growling
Wildin’
That’s how we howl

MAYA:Ah-woo-woo-woo
That’s how we howling
Growling
Wildin’
CHISA:So where are you now?

【和訳】
アウー
これが私たちの遠吠え
うなり声
狂宴
これが私たちの遠吠え

アウウーウー
これが私たちの遠吠え
うなり声
狂宴
あなたは今どこにいるの?

HOWLING/作詞・作曲:CHANCELLOR・JAKOPS・Knave・JAEYOUNG・LY

ラスサビも「So where are you now?=あなたは今どこにいるの?」の問いかけで締めくくられます。この質問が3回繰り返されるうちに、オオカミの群れは敵を倒し続けたので、「あなた=敵」はもうどこにもいないかもしれません。

あるいは「あなた=アルファ」もオオカミと化して群れに加わり、一緒に吠え、うなり、宴に参加している可能性もあるでしょう。いずれにしてもXGの「HOWLING=遠吠え」を聞くと逃げも隠れもできないという結末でした。

おわりに

「HOWLING」は総合芸術(アート)としての創造性(クリエイティビティ)が非常に高いのに難しすぎず、エンタメとして気楽に盛り上がることもできるところが最高です。この曲をきっかけにALPHAZ(アルファズ)になった人も多いのではないでしょうか。

さまざまなチャートやランキングを席巻しているXG。2025年4月開催のコーチェラのほか、TBS系『CDTVライブ!ライブ!クリスマスSP』(2024年12月16日、「IYKYK」)、テレビ朝日系『ミュージックステーション SUPER LIVE 2024』(2024年12月27日、「WOKE UP」)にも出演。


XG 1st WORLD TOUR “The first HOWL”』の最終公演は日本公演(Japan Tour、Japan Shows)。


この勢いでスーパーボウルのハーフタイムショーへの出演も期待したいですね。

Kendrick Lamer『GNX』

  • リリース:2024年11月22日
  • レーベル:pgLang / Interscope Records

ちなみに2025年2月に開催されるスーパーボウルのハーフタイムショーのヘッドライナーはKendrick Lamer(ケンドリック・ラマー)です。

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渡辺和歌
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