音楽

アンビエント&ジャズ新譜5選!究極の作業用BGM、エビ・ソーダ他

今回紹介するmunero(ミューネロ)さんの『究極の集中できる音楽~ドーパミンによるシータ波活性』、ウィリアム・バシンスキー&ヤネク・シェーファー(William Basinski & Janek Schaefer)の『… on reflection』はチルアウトに最適なアンビエント。
ティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)の『StandArt』、エビ・ソーダ(Ebi Soda)の『Honk If You’re Sad』、アミール・ブレスラー(Amir Bresler)の『House of Arches』はジャズ系です。

はじめに

ときには新譜ラッシュで嬉しい悲鳴を上げることもあるものですが、今回ピックアップした5枚のうち4枚はなぜか2022年4月29日にリリースされました。
もう1枚も含め、共通項は歌モノではないインスト作品ということくらいかもしれませんが、ご時世的にインドア、アウトドアにかかわらず単独で作業する時間が増えている可能性もあります。
その際にしっくりくる音響的なサウンドを探している人はぜひ参考にしてみてください。

【1】munero『究極の集中できる音楽~ドーパミンによるシータ波活性』


ヒーリングミュージックデラDella)からリリース、Healing Plazaで販売されている『究極の集中できる音楽~ドーパミンによるシータ波活性』は、脳科学者の瀧靖之さん(東北大学 加齢医学研究所 教授・医師・医学博士)が監修し、muneroさんが楽曲制作(作曲、編曲、演奏)した作業用BGM(全6曲・約1時間)です。

ちなみに代表的な神経伝達物質(脳内ホルモン)には興奮性の「ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリン」や抑制性の「セロトニン」があり、脳波は周波数によって下記のように分類できます。

科学的コンセプトに基づいているためヒーリングミュージックとしても信頼度が高く、なおかつバークリー音楽大学卒、オタイレコードOTAIRECORD主催ビートグランプリ CHILL/AMBIENT 2020ファイナリストmuneroさんスティーヴ・ライヒSteve Reich)やテリー・ライリーTerry Riley)を参考にして作り上げたミニマルミュージックとしても堪能できるところが魅力です。
「早朝、朝、昼、夕方、夜、深夜」をテーマに約10分ずつ全6曲という構成になっているので、時間帯によって聴き分けるのもおもしろいでしょう。

オタレコTV:muneroインタビュー

【2】ウィリアム・バシンスキー&ヤネク・シェーファー『… on reflection』


米ロサンゼルスを拠点に活動する実験音楽ウィリアム・バシンスキー(1958年6月25日生まれ)と、ポーランド人とカナダ人の両親の間に生まれ、UKロンドンを拠点に活動する前衛芸術家&音楽家ヤネク・シェーファー(1970年7月14日生まれ)によるアンビエント作『… on reflection』(全5曲・42分あまり)。
それぞれの拠点から遠距離でコラボし、時間をテーマに8年がかりで制作されました。
ピアノやシンセサイザーによるミニマルかつドローン的な電子音と、街の喧騒や鳥の鳴き声などフィールドレコーディングによる環境音のレイヤーに癒されます。
3つのレコードを一度に再生できるプレーヤー「Tri-phonic Turntable」を発明し(1997年)、「最も用途の広いレコードプレーヤー」としてギネス世界記録に認定された(2001年11月)、ヤネク・シェーファーによる「プチプチノイズ」もさりげなく入っています。

【3】ティグラン・ハマシアン『StandArt』


アルメニア出身のジャズピアニスト&作曲家ティグラン・ハマシアン(1987年7月17日生まれ)が、20年代から50年代にかけてのグレイト・アメリカン・ソングブックアメリカンスタンダード)を取り上げた『StandArt』(全9曲・約48分)。
ピアノのティグラン、ベースのマット・ブリューワーMatt Brewer)、ドラムのジャスティン・ブラウンJustin Brown)によるトリオ編成を軸に、トランペットのアンブローズ・アキンムシーレAmbrose Akinmusire、7・8曲目)、サックスのジョシュア・レッドマンJoshua Redman、4曲目)とマーク・ターナーMark Turner、3曲目)をゲストに迎えています。
全9曲のうち、スタンダード8曲、オリジナル1曲(8曲目)という構成です。

代表的なリンクを張っておきましたが、スタンダードは数多くのバージョンがあるので聴き比べると違いを楽しめるのではないでしょうか。

【4】エビ・ソーダ『Honk If You’re Sad』


UK南部の港町ブライトンを拠点に活動する5人組のフューチャージャズ(ニュージャズ)バンド、エビ・ソーダ

2ndアルバム『Honk If You’re Sad』(全11曲・約50分、Tru Thoughts)には、バーレーン人の父とイギリス人の母の間に生まれたトランペット&フリューゲルホルン奏者ヤズ・アハメドYazz Ahmed、6曲目)など多数のゲストが参加。
エレクトロニカアンビエントプログレポストロックポストパンクダブ、ファンク、ボサノバ、ヒップホップ、UKドリルなどの要素が入り混じったフューチャージャズを堪能できます。

【5】アミール・ブレスラー『House of Arches』


イスラエルのジャズドラマー、アミール・ブレスラー(1989年11月8日生まれ)のソロデビューアルバム『House of Arches』(デジタル:2022年3月9日→輸入盤CD:2022年4月15日→国内盤CD:2022年5月11日、Raw Tapes / rings)は全6曲・約40分(国内盤CD:全7曲)。
イスラエルのベーシスト、アヴィシャイ・コーエンAvishai Cohen、1970年4月20日生まれ)のライブに参加するなど、世界的に活躍しているアミール。
初のソロ作はアフロビートポリリズムのほか、イスラエルのインディーレーベルの設立者で、フューチャーソウルバンド、バターリング・トリオButtering Trio)などのビートメイカーとしても活躍しているリジョイサーRejoicer)のプロダクションも聴きどころです(6曲目のみボーカル入り)。

Mole’s Pirouette (Live at Romano)

おわりに

なぜか同日にリリースされた4枚+1枚を一言で紹介すると「作業用BGM、アンビエント、新解釈スタンダード、フューチャージャズ、イスラエルジャズ&アフロビート」になりますが、いずれにもさまざまな要素が含まれていて、それぞれじっくり聴き込みたくなったのではないでしょうか。
インスト作品は日常生活に溶け込みやすいという特徴があるので、お気に入りのシーンでお役立てください。

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渡辺和歌
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