米津玄師さんと宇多田ヒカルさんのデュエットによるコラボ曲「JANE DOE」(読み方:ジェーン ドウ)は劇場版『チェンソーマン レゼ篇』のエンディングテーマとして書き下ろされました。
宇多田ヒカルさんがボーカルで参加したことにより、エロ・グロ・暴力(バイオレンス、バトル、アクション)・ホラー表現が苦手で、これまで漫画やTVアニメの『チェンソーマン』をスルーしていた人も、この作品に注目するきっかけになったのではないかと思われる「JANE DOE」の歌詞の意味を考察、解説します。
Contents
- 1 米津玄師, 宇多田ヒカル「JANE DOE」ミュージックビデオ・Music Video・MV・PV・YouTube動画
- 2 劇場版『チェンソーマン レゼ篇』リンク
- 3 米津玄師, 宇多田ヒカル「JANE DOE」歌詞の意味を考察
- 4 1番Aメロ:ビョークとトム・ヨークのデュエット曲を意識したワルツ
- 5 1番Bメロ:レゼの正体は身元不明の女性ジェーン・ドウ
- 6 1番サビ:複雑系女子と能天気男子の邂逅
- 7 2番Dメロ:イルカの鳴き声のような間奏に続く米津玄師パート
- 8 2番Eメロ:掛け合いとユニゾン&ハモリで2人だけの夢の世界を表現
- 9 2番サビ:レイドバックする後ノリ横ノリの宇多田ヒカル節炸裂
- 10 3番Aメロ:レゼ復活の可能性
- 11 おわりに
米津玄師, 宇多田ヒカル「JANE DOE」ミュージックビデオ・Music Video・MV・PV・YouTube動画
米津玄師 × 宇多田ヒカル – JANE DOE対談
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』リンク
10分で振り返る アニメ『チェンソーマン』/劇場版『チェンソーマン レゼ篇』9.19(金)全国公開 !
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』原作者 藤本タツキ × 主題歌 米津玄師 対談/Chainsaw Man – The Movie: Reze Arc”
- Wikipedia(ウィキペディア):チェンソーマン、アニメ、藤本タツキ
- 公式サイト
- X(Twitter):チェンソーマン、英語アカウント、ながやまこはる(藤本タツキ)
- ピクシブ百科事典(pixiv):チェンソーマンレゼ篇、レゼ
米津玄師, 宇多田ヒカル「JANE DOE」歌詞の意味を考察
- リリース:デジタル配信・2025年9月22日、CD・2025年9月24日、Vinyl・2026年2月27日
- レーベル:Sony Music Labels
- サブスク:Spotify、Apple Music(iTunes)
- カラオケ:DAM、JOYSOUND
- 楽譜・コード譜:U-フレット、楽器.me、RinNe(リンネ)
- Wikipedia(ウィキペディア):米津玄師、宇多田ヒカル、IRIS OUT / JANE DOE
- 公式サイト:米津玄師、宇多田ヒカル
- X(Twitter):米津玄師、REISSUE RECORDS、宇多田ヒカル、宇多田ヒカルSTAFF
- ピクシブ百科事典(pixiv)
曲の構成
- 1番:Aメロ~Bメロ~サビ(Cメロ)
- 2番:Dメロ~Eメロ~サビ(Cメロ)
- 3番:Aメロ
1番Aメロ:ビョークとトム・ヨークのデュエット曲を意識したワルツ
まるでこの世界で二人だけみたいだね
なんて少しだけ夢をみてしまっただけJANE DOE/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
米津玄師さんと宇多田ヒカルさんのコラボが実現した背景には、ざっくりソニー系列のレーベルメイトという大人の事情があるでしょう。
そのうえで両者とも幼少期に漫画家を志すなど、いわゆるアニソン歌手ではないシンガーソングライター(ミュージシャン、音楽家)にも関わらず、漫画・アニメ・ゲームなどのいわゆるオタク文化と親和性が高いという共通点があります。
米津玄師さんにとって宇多田ヒカルさんは8学年上のパイセン。
アニメ映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』4部作やゲーム『キングダム ハーツ』シリーズの主題歌も担当しています。
海外オタクからの認知度が高い宇多田ヒカルさんをデュエット相手に選ぶのは、マーケティングの観点からすると非常に戦略的といえるでしょう。
ところが米津玄師さんはクリエイティブな感性で宇多田ヒカルさんを思い浮かべ、コラボ相手は宇多田ヒカルさんしかあり得ないという結論に達したようです。
劇場版『チェンソーマン レゼ篇』公開記念PV/Ending Theme:米津玄師, 宇多田ヒカル「JANE DOE」
※以下、ネタバレありの考察、解説なので要注意!
『チェンソーマン』の主人公、16歳の少年デンジ(CV:戸谷菊之介さん)は、契約によりチェンソーの悪魔ポチタ(CV:井澤詩織さん)を心臓に宿し、チェンソーマンに変身する武器人間。
父親が残した借金を返すため、ヤクザにだまされながらも悪魔などの人外を駆除する民間のデビルハンターとして極貧生活を送っていましたが、リーダーのマキマ(CV:楠木ともりさん)にスカウトされ、国のデビルハンター組織・公安対魔特異4課に所属しました。
まるで青春映画やラブコメ作品のような『レゼ篇』の前半では、初恋相手のマキマだけでなく、カフェ二道(ふたみち)のアルバイト・レゼ(CV:上田麗奈さん)と出会い、好きな人が2人になって困惑するデンジが描かれます。
レゼの正体が「ソ連のモルモット(実験体)として育てられた、爆弾の悪魔ボムに変身する武器人間」だと明らかになる『レゼ篇』の後半は、ド迫力の戦闘(バトル、アクション)シーンの連発。
『チェンソーマン』の漫画原作者・藤本タツキさんがレゼのモデルとしたのは、押井守さん原作・脚本のアニメ映画『人狼 JIN-ROH』で爆弾の運び屋・赤ずきんを務め、自爆する少女・阿川七生(CV:仙台エリさん)でした。
Björk「I’ve Seen It All (feat. Thom Yorke)」
デンジとレゼの切ない結末の後に流れるエンディングテーマに似つかわしいのは女声と判断した米津玄師さん。
映画オマージュにあふれた『チェンソーマン』のごとく、注目したのはアイスランド出身のSSW・Björk(ビョーク)主演、Lars von Trier(ラース・フォン・トリアー)監督のミュージカル映画『Dancer in the Dark(ダンサー・イン・ザ・ダーク)』の主題歌「I’ve Seen It All(アイヴ・シーン・イット・オール)」。
劇中ではセルマ役のビョークとジェフ役のPeter Stormare(ピーター・ストーメア)のデュエットでした。
サウンドトラック『Selmasongs: Music from the Motion Picture Soundtrack Dancer in the Dark(セルマソングス〜ミュージック・フロム・ダンサー・イン・ザ・ダーク)』(日本:2000年8月30日、イギリス:2000年9月18日、One Little Indian)およびシングル(2000年7月21日)ではビョークとThomas Yorke(トム・ヨーク)がデュエットしています。
その90年代UKロックの金字塔レディヘことRadiohead(レディオヘッド)のボーカル&ギターなどのトム・ヨークとのデュエットバージョンを意識したそうです。
レゼとデンジ、ビョークとトム・ヨーク、宇多田ヒカルさんと米津玄師さん、それぞれ2人だけの世界を夢見るようなはかなさが3拍子(8分の6拍子)のワルツで綴られます。
1番Bメロ:レゼの正体は身元不明の女性ジェーン・ドウ
つま先に月明かり 花束の香り 指に触れる指
さよなら もう行かなきゃ 何もかも忘れてJANE DOE/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
「JANE DOE」(ジェーン ドウ)という曲名の意味は「身元不明の女声、名無しの権兵衛」、男性の場合はJohn Doe(ジョン・ドウ)です。
“Chainsaw Man – The Movie: Reze Arc” – “Jane slept in the church” /劇場版『チェンソーマン レゼ篇』「ジェーンは教会で眠った」
アメリカのホラー映画『ジェーン・ドウの解剖』のほか、『レゼ篇』でレゼが歌うロシア語の歌「ジェーンは教会で眠った」(単行本5巻・第43話のタイトル)を彷彿とさせます。
作詞は藤本タツキさん自身。
男性目線の「普通のデートの歌」で、「水族館へ行って、ジェーンのお気に入りのイルカとペンギンを見よう」といった歌詞があります。
ただし、レゼがロシア語の歌を歌うのは、殺人鬼であるモヒカン男の首を絞めながら。
このシーンはコーエン兄弟監督によるアカデミー賞受賞作『ノーカントリー』へのオマージュです。
レゼの正体はソ連のモルモット(実験体)として育てられ、爆弾の悪魔ボムに変身する武器人間、つまり身元不明の女性ジェーン・ドウでした。
夜、学校のプールに忍び込んでデンジに泳ぎ方を教えたり、夏祭りに出かけて花火を見ながらデンジとキスをしたり、「田舎のネズミ」のような普通の日常、普通のデートを試みるレゼ。
しかし、身元不明の女性ジェーン・ドウには叶わない夢だったようです。
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』 OPノンクレジット映像|“inner universe”
多数のオマージュ作品が散りばめられた『チェンソーマン』の元ネタのひとつでもあるアニメ映画『人狼 JIN-ROH』と同じ公安アニメ、さらにロシア語の歌というところで、TVアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002年10月1日~2003年11月30日)のオープニング主題歌となった、ロシア人のSSW・Origa(オリガ)の「inner universe」(2003年1月22日、Victor Entertainment)も連想できるかもしれません。
レゼに届いた花束の香り
米津玄師さんが描いたジャケットイラストは「IRIS OUT」がレゼの上半身、「JANE DOE」が下半身(つま先)と縦につながった1枚の絵のように見える仕掛けになっています。
頬を赤らめたり、上目遣いの表情をしたり、ボディタッチ多めでデンジを惚れさせるレゼ。
好きと告白したうえで、すべては訓練で身につけた嘘だと語りました。
電話ボックスの出会いの場面で2人を結びつけた花は、レゼが2つの道のうち間違ったほうを選ぶきっかけにもなり、切ない結末でデンジが抱える花束につながります。
その花束の香りはレゼに届くものの、届いたことを知り得ない(わかっていない)デンジというすれ違いがMVでも表現されているようです。
1番サビ:複雑系女子と能天気男子の邂逅
硝子の上を裸足のまま歩く
痛むごとに血が流れて落ちていく
お願い その赤い足跡を辿って 会いにきてJANE DOE/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
「JANE DOE」は『チェンソーマン』や『レゼ篇』の世界観、とくにデンジとレゼのラブストーリーのニュアンスを的確にとらえつつ、そのままなぞるのではなく、独自の歌物語に昇華しているところが秀逸です。
たとえばレゼが「硝子(ガラス)の上を裸足のまま歩く」シーンはありませんが、ソ連のモルモット(実験体)として育てられたレゼの人生には「硝子の上を裸足のまま歩く」ような痛々しさや自虐性が内包されています。
『チェンソーマン』に登場する悪魔や魔人といった人外のほか、悪魔の心臓を持つ武器人間にも血を飲む(吸う)と復活するという設定があるため、血は象徴的なモチーフです。
また、MVの冒頭で宇多田ヒカルさんの構図が縦から横に変わることにより、駅のホームのベンチで横たわっていたことがわかるように、ラストの「カフェ二道で待つデンジのもとへ向かいつつ、マキマと天使の悪魔エンジェル(CV:内田真礼さん)に始末されるレゼの流す血」も連想できます。
D’Angelo「Send It On」
「JANE DOE」でコラボするにあたり、米津玄師さんは宇多田ヒカルさんに「複雑さを抱えた女の子とそれを根本的にわかっていない男の子によるデュエット」と伝えたそうです。
この「複雑系女子&能天気男子」の組み合わせは「レゼ&デンジ」はもちろん「宇多田ヒカルさん&米津玄師さん」でもあり、リスナーそれぞれに自分や誰かを重ねることも可能でしょう。
2025年10月14日、Erykah Badu(エリカ・バドゥ)と共に90年代ネオソウルや2000年代(ゼロ年代、Y2K時代)オルタナティブR&Bを象徴する存在だったD’Angelo(ディアンジェロ)が亡くなりました。
宇多田ヒカル「Automatic」
音楽プロデューサー・宇多田照實さんと演歌(怨歌)歌手・藤圭子さんの娘としてアメリカ・ニューヨークで生まれ、家族3人のユニットU3やCubic Uの活動を経て、1998年12月9日、15歳でソロデビューを果たした宇多田ヒカルさん。
2010年から2016年にかけて人間活動のためと称して音楽活動を休止したこともあるなど、複雑な背景を抱えていると考えられます。
幾度もコラボを重ねている、東芝EMI(現・EMIミュージック・ジャパン)の同期デビュー・椎名林檎さんは「宇多田ヒカルが陽、自身が陰」と語りましたが、むしろ宇多田ヒカルさんのほうが深い闇を抱えているからこそ光るしかない(陰のまま表現できないほどの陰を抱えているので表向きは陽)といった複雑さがあるはず。
母の藤圭子さんは演歌ならぬ怨歌の女王としてアイドル並みの人気を誇りましたが、浪曲師(浪花節語り)の父と浪曲師&曲師(三味線伴奏者)の母をもち、ロックやヒップホップにも傾倒したそうです。
音楽一家で育った宇多田ヒカルさんはデビュー曲の「Automatic」(読み方:オートマティック)からR&Bやネオソウルを体現し、リズムの揺れ、とくにレイドバック(後ノリ)を重視したポップミュージックを展開してきました。
対する米津玄師さんはジャストのリズムというかリズムの概念から解放された(リズムより人間離れした音程を重視する)ボカロ、前ノリ上等のオルタナティブロックがルーツ。
ディアンジェロが亡くなったことでR&Bやネオソウルのリバイバルも終わったような哀愁が漂い、米津玄師さん的な縦ノリ文化の日本にはブラックミュージックなどの横ノリ文化は根づかなかった印象を受けます。
だからこそデンジのように「何もわかっていない」というエクスキューズ(言い訳、断り)をしつつ、レゼ並みの複雑さを抱える宇多田ヒカルさんにコラボを挑む米津玄師さんという構図が歴史的な邂逅として成就したのかもしれません。
2番Dメロ:イルカの鳴き声のような間奏に続く米津玄師パート

錆びたプールに放たれていく金魚
靴箱の中隠した林檎
萎びた君の肌に残る傷跡
犬のように泳いだ迷子JANE DOE/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
レゼが歌ったロシア語の歌「ジェーンは教会で眠った」の歌詞にあるように、水族館デートでジェーンのお気に入りのイルカを見るような、あるいはレゼとデンジが2頭のイルカとなって共鳴し合うような間奏。
1番のボーカルは宇多田ヒカルさんでしたが、イルカの鳴き声のような間奏に続く「2番Dメロ」は米津玄師さんのボーカルです。
2番では、1番のAメロ・Bメロとは異なるDメロ・Eメロが展開される構成になっています。
レゼとデンジの夜の学校デートを連想させる「プール」と「靴箱」、夏祭りデートの「金魚すくい」と「林檎あめ」、デンジの心臓となったチェンソーの悪魔ポチタの姿である「犬」、そのデンジの心臓を奪う任務に失敗し「迷子」となったレゼというモチーフが散りばめられています。
「硝子の上を裸足のまま歩く」ような人生を送るレゼの「赤い足跡=傷跡」にわけもわからず触れたデンジはマキマの「犬」でもあり、マキマとレゼを両天秤にかけて揺れた切ない「迷子」とも解釈できそうです。
2番Eメロ:掛け合いとユニゾン&ハモリで2人だけの夢の世界を表現

どこにいるの (ここにいるよ)
何をしているの (ずっと見てるよ)
この世を間違いで満たそう
側にいてよ 遊びに行こうよ
どこにいるのJANE DOE/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
デュエットとはいえ、これまでは1番が宇多田ヒカルさん、「2番Dメロ」が米津玄師さんという歌い分け(パート分け)になっていました。
表現されていたのは、レゼ(宇多田ヒカルさん)とデンジ(米津玄師さん)のすれ違い。
ところが「2番Eメロ」は「どこにいるの」と「何をしているの」が米津玄師さん、「ここにいるよ」と「ずっと見てるよ」が宇多田ヒカルさんという掛け合い、「この世を間違いで満たそう」というフレーズのみユニゾン&ハモリで2人が同時に歌っていて、「側にいてよ~どこにいるの」は米津玄師さんのみの独唱パートに戻る構成です。
この「2番Eメロ」の「掛け合い〜ユニゾン&ハモリ」こそレゼ(とデンジ)が夢に見た2人だけの世界でしょう。
ただし、まるで奇跡のように2人の歌声が重なるレゼとデンジの邂逅は「間違い」でしかあり得ません。
そのためデンジ(米津玄師さん)の「側にいてよ」以降の呼びかけに対するレゼ(宇多田ヒカルさん)の返答はなしという孤独が描かれています。
2番サビ:レイドバックする後ノリ横ノリの宇多田ヒカル節炸裂

硝子の上を裸足のまま歩く
痛むごとに血が流れて落ちていく
お願い その赤い足跡を辿って 会いにきてJANE DOE/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
「2番サビ」は歌詞も宇多田ヒカルさんの独唱という点も「1番サビ」と同じです。
人間離れしたボカロ由来の手法である「硝子」(ガラス)の「ガ」から「ラ」にかけて、「痛む」(いたむ)の「い」から「た」にかけての激しい音程差は、実は武器人間であり、爆弾の悪魔ボムに変身するレゼにもうってつけでしょう。
米津玄師さん印ともいえるボカロ由来の激しい音程差は「1番サビ」から引き続いていますが、「この世を間違いで満たした」果ての「2番サビ」では宇多田ヒカルさんの真骨頂でもあるレイドバック(後ノリ)、横ノリが炸裂。
レゼ&ボムとしての任務に失敗し、名無しのジェーン・ドウとして揺れ動いた心が表現されてているようにも感じられます。
3番Aメロ:レゼ復活の可能性

まるでこの世界で二人だけみたいだね
なんて少しだけ夢をみてしまっただけJANE DOE/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
Aメロで始まり、Aメロで終わる構成は循環性、ループ状態、輪廻転生などを表現したい楽曲でよく見受けられます。
武器人間のレゼが第二部以降で復活し、再登場する可能性はあるのでしょうか。
ただ「JANE DOE」の場合は同じ歌詞にも関わらず「1番Aメロ」の歌唱は宇多田ヒカルさんのみ、「3番Aメロ」の歌唱は「まるで~」が米津玄師さん、「なんて~」が宇多田ヒカルさんという違いがあります。
2人だけの世界という間違った夢を見たのはレゼ(宇多田ヒカルさん)だけでなく、デンジ(米津玄師さん)もだったという結末です。
レゼは何もわかっていないために生じた間違いであることはわかっていて、デンジは間違いだったこともわかっていないのかもしれません。
支配的なマキマ目線で解釈すると(=IRIS OUT)、これは恋というより過酷な境遇を背負った者同士の意識的、無意識的な邂逅でしょう。
『チェンソーマン』が世界中から求められるほどハードな2020年代を生き抜くためには、ひとまずデンジ(米津玄師さん)の能天気さが有効な気もします。
おわりに
『レゼ篇』のオープニングテーマ「IRIS OUT」は作詞・作曲・編曲ともに米津玄師さんが手がけましたが、エンディングテーマ「JANE DOE」は共編曲者としてYaffle(ヤッフル)さんが参加しました。
Yaffleさんといえば藤井風さんのプロデューサーとして知られていますが、藤井風さんは3rdアルバム『Prema』(プレマ、2025年9月5日)で韓国のプロデューサー250(イオゴン)さんを迎えました。
米津玄師さんの楽曲をYaffleさんが共同編曲するのは「毎日」(2024年5月27日)、「Azalea」(アザレア、2024年11月18日)に続き3曲目です。
さらにYaffleさんといえばクリエイティブレーベルTOKA(トウカ、旧・Tokyo Recordings)を率いる小袋成彬(おぶくろなりあき)さん、そして宇多田ヒカルさんとつながるブラックミュージック、とくにR&Bやネオソウル由来のレイドバック(後ノリ)&横ノリをJ-POPに落とし込む確信犯(J-R&Bのフロントライン)です。
宇多田ヒカル「Mine or Yours (Bella Boo Remix)」
宇多田ヒカル「Mine or Yours (The Blessed Madonna’s GODSQUAD Mix)」
どの道を選ぼうと
選ばなかった道を失う寂しさとセット
令和何年になったらこの国で
夫婦別姓OKされるんだろうMine or Yours/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル
宇多田ヒカルさんの綾鷹CMソング「Mine or Yours」(2025年5月2日)では「夫婦別姓」にまつわる歌詞が、音楽そのものではなく政治的な文脈で賛否両論を巻き起こしました。
宇多田ヒカル「Mine or Yours (Yaeji Remix)」
もしかしたら4thアルバム『Zatto』(2025年2月26日)リリース後の2025年3月25日、さいたま市長選挙への立候補を表明し、同年5月25日に落選した小袋成彬さんに対するアンサーなのかもしれません。
Yaeji「Raingurl」
宇多田ヒカルさんの選んだ道には、ビョークを彷彿とさせる革新性に注目が集まる韓国系アメリカ人のプロデューサーYaeji(イェジ)がリミックスを手がける世界線があるという奇跡のほうが大騒ぎすべき案件のような気もしますが、デンジがその複雑さに気づく日は訪れるのでしょうか。
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