チリのBahía Mansa(バイーア・マンサ)と日本のYama Yuki(ヤマユウキ)さんのコラボ作『Cartas Náuticas』(カルタス・ノーティカス)には、フィールドレコーディングによる大西洋と太平洋の波の音が散りばめられています。
水の音を聴いて癒されたり、リラックスしたりしたいときにおすすめのアンビエントです。
「アンビエント」をテーマにライブ、トーク、ワークショップなど7日間連続で開催された都市型フェスティバル。企画背景や当日の様子を伺った。
「アンビエント」を通して、社会を捉え直す。7日連続開催した『MIMINOIMI – Ambient / Week -』を振り返るhttps://t.co/AaY8vucBuH pic.twitter.com/mWU22PN2th
— Ucuuu | 穏やかな音楽メディア (@Ucuuu__) February 23, 2024
Contents
はじめに
Bahía Mansa
チリ・サンティアゴを拠点とするアンビエント作家&写真家Iván Aguayo(イヴァン・アグアヨ)によるソロプロジェクトBahía Mansa(バイーア・マンサ)。
そのアーティスト名は、チリ南部ロス・ラゴス州オソルノ県にある集落および湾バイーア・マンサ(Bahía Mansa)に由来するようです。
— bahia mansa (@MansaBahia) January 13, 2024
Yama Yuki
三重出身、美学校・現代美術講座「アートのレシピ」(講師:松蔭浩之さん、三田村光土里さん)第2期(2011年)を受講し、ブラジル・サンパウロ在住を経て、東京を拠点とする電子音楽家(作曲家&サウンドアーティスト)Yama Yuki(ヤマユウキ)さん。
2023年12月にアーカイブレーベルato.archivesを設立し、アンビエントフェスMIMINOIMI(新イベントシリーズ:Food for Ears ~ 耳の糧 ~)主催者3人のうちの1人(他:kentaro nagataさん、FeLidさん)、odoma名義、sorta opalka名義、東京・阿佐ヶ谷のライブスペース天(TEN)で定期的に開催されているアンビエントイベント天ビエント(TENbient)主催者4人のうちの1人(他:kentaro nagataさん、Cixaさん、Yu Oguさん)でもあるKentaleaux NakajimaさんとのドローンデュオSogahukau(ソガフカウ)などとしても活動しています。
Yama Yuki、過去に訪れた様々な都市に着想を得た新作アルバム『Inverted Cities』リリース。ブラジル・サンパウロ在住の音楽家 – https://t.co/AE5GVodPOZ pic.twitter.com/0HqRp65V4A
— UROROS (@UROROS_NET) May 7, 2021
Cartas Náuticas
2人のコラボ作『Cartas Náuticas』(読み:カルタス・ノーティカス、スペイン語:海図、2023年8月11日、Mystery Circles)は、全4曲・40分あまり。
大西洋と太平洋で収集されたフィールドレコーディング素材が散りばめられたアンビエントを聴いて、想像の膨らむ海の旅に出かけましょう。
MC076: @MansaBahia / @yamoyuku – 'Cartas Náuticas' is OUT NOW. Edition of 50 cassettes: https://t.co/DSoYcIKKo1 pic.twitter.com/GijrG3etha
— Mystery Circles (@MysteryCircles) August 11, 2023
クレジット
- Bahía Mansa:作曲、アッサンブラージュ、フィールドレコーディング、写真
- Yama Yuki:作曲、アッサンブラージュ、フィールドレコーディング
- Giuseppe Ielasi(ジュゼッペ・イエラシ):マスタリング
This Friday 8/11 – MC076: @MansaBahia / @yamoyuku 'Cartas Náuticas' https://t.co/vUP2D3pVCy pic.twitter.com/ikS3IwiG8G
— Mystery Circles (@MysteryCircles) August 9, 2023
【1】Carta Atlántica I
チリのBahía Mansaは大西洋、日本のYama Yukiさんは太平洋が生活圏。
Yama Yukiさんはブラジルで暮らしていたこともあるので、大西洋にもなじみがあるでしょうか。
それぞれの海で収集されたフィールドレコーディング素材が交換され、再構築されたとのこと。
『海図』を意味する作品全体は「大西洋の海図1」(約6分半)、「大西洋の海図2」(約14分)、「太平洋の海図1」(約4分半)、「太平洋の海図2」(約16分)という構成です。
1曲目「Carta Atlántica I」はモジュラーシンセの温もりのあるかわいらしい音色と、フィールドレコーディングによる穏やかな波や風の音、鳥の鳴き声などが交じり合います。
日本で暮らしていると大西洋は遠く離れた地球の反対側のように感じるかもしれませんが、実際に訪れたことがあってもなくても懐かしさが込み上げてくるサウンドでしょう。
世界中の海はつながっていて常に循環しているから、あるいは羊水に浸る胎児の感覚が呼び覚まされるためでしょうか。
陸地で生活するうちにいつのまにか募ってしまう悩みや不安が洗い流されるように癒されます。
MIMINOIMIのYama Yukiさんおすすめ音楽は、宇波拓さんの『bot box boxes』。新聞紙と段ボールで何かをしている音がずっと流れるというアルバム。最初は意識的に違和感を感じながら聴いてたけど、途中から部屋の物音の一つなんじゃないかというくらいに馴染んだりして不思議な感じだった。面白い体験。 https://t.co/EGvcbCxWr0
— がちゃーん / 石松豊 (@orange_plus_me) February 23, 2024
【2】Carta Atlántica II
2曲目「Carta Atlántica II」は波の音や子どもたちのはしゃぐ声から始まり、光が反射する波を彷彿とさせるキラキラしたシンセドローンが展開されます。
後半からトロピカルなパーカッションサウンド、鳥の鳴き声、プチプチとしたグリッチなども重なる圧巻の構成。
脱力して海に浮かぶような、あるいは絶大な安心感や信頼感に身を委ねるような瞑想的な時間が流れます。
水の音が散りばめられたアンビエントは心の浄化だけでなく、過度な緊張を和らげたり、余分な力を取り除いてくれたり、リラックスする方法としても適しているかもしれません。
海そのものや大自然、地球と同化する感覚も堪能できるでしょう。
Last Capsule Garden of summer break… w/ Marguerite de Roche, Norwood, Rosie Turton, Bernard Xolotl, claire rousay, Slikback, Junior Mint Prince, Philippe Deschamps, bahía mansa / Yama Yuki, & Bee Balm Fields. https://t.co/iQrzl6tlD6 pic.twitter.com/IYxRX1S7YT
— Brad E. Rose / Foxy Digitalis (@foxydigitalis) August 16, 2023
【3】Carta Pacífica I
3曲目「Carta Pacífica I」から太平洋に移りました。
これまでより海の荒々しさが感じられます。
メトロノームのように淡々と刻まれる時間軸に対し、大きくうねる波がフィールドレコーディング素材のほか、ギターやシンセドローンで表現されているようです。
物音コラージュのようにモジュラーシンセの音が散りばめられ、ひときわ大きくなった波の音がカットアウトされて静けさの余韻が残るラストはエクスペリメンタル。
地球の約7割を占める海は、人間にとって癒しになることもあれば自然の脅威となるときもあります。
アンビエントは単に心地いい音楽というだけでなく、生活や地球環境にも配慮した環境音楽であることを改めて想起させられるでしょう。
地球の自然に敬意を払い、感謝を忘れないようにしたいものです。
In today’s review, we look at a recent collaborative album from @MansaBahia and Yama Yuki released on @MysteryCircles https://t.co/jv6BVMi9in#ambient #drone #fieldrecording #lofi #lofiambient #modularsynth #experimental #bandcamp #musicreview
— Fringes of Sound (@FringesofSound) August 22, 2023
【4】Carta Pacífica II
リバーブの効いたミニマルなサウンド、ドローン、水の音などが混然一体となった4曲目「Carta Pacífica II」。
砂や鳥の羽音のような音も重なりつつ、ボイスやキックも加わる後半、波の音とクジラかイルカかシャチ(オルカ)の鳴き声のようなサウンドで締めくくられるラストに向けての展開も美しいです。
言葉のない音楽によって描かれた抽象画みたいな海の旅を堪能できたのではないでしょうか。
Our 2023 Year in Review is here: https://t.co/GXyRHre2nS pic.twitter.com/FtYDZc3UP4
— Mystery Circles (@MysteryCircles) December 21, 2023
おわりに
Bahía MansaもYama Yukiさんも写真などのアートにも造詣が深く、ノイズ寄りのドローンやエクスペリメンタルなサウンドを展開することもあるところが共通点といえるかもしれません。
今回紹介した『Cartas Náuticas』はフィールドレコーディングによる海の音を素材としたサウンドアートのようになっているので、多くの人が思い思いに想像を膨らませながら共鳴することができるのではないでしょうか。
この作品を入り口として、それぞれのディスコグラフィにどっぷり浸るのも楽しいでしょう。
また、Yama Yukiさんが主宰するato.archivesレーベルから第1弾として2023年12月16日にリリースされた、Seiji Nagai(永井清治)さん(タージ・マハル旅行団)のエクスペリメンタルなソロ作『Oscillating Stars』、Tomonao Koshikawa(越川友尚)さん(マージナル・コンソート / Marginal Consort)のドローン寄りのソロ作『Footprint』、米LAの電子音楽家Jared Carrigan のアンビエントプロジェクトV. Kristoff、ENDoさん&soma hayatoさんと共に即興電子音楽トリオOiDのメンバーでもあるYu Ogu(Øguu)さん、カナダ出身・東京を拠点とする電子音楽家&ビジュアルアーティスト&梅レコード主宰者PrecipitationことZefan Sramekの3人によるアンビエント即興セッションの記録『Transcendental Meeting at Hatagaya』の3作品は、Yama Yukiさんのルーツと現在が反映されていると考えられるため必聴です。
アーカイブ・レーベル始めます!!!初回の3作品はタージ・マハル旅行団Seiji Nagaiのソロ作、マージナル・コンソートTomonao Koshikawaのソロ作、V .Kristoff、Yu Ogu、Precipitationのトリオ・アンビエント即興になります!カセットリリースです。是非!!https://t.co/ChBwW8jFvr pic.twitter.com/bru0wyNhPH
— Yama Yuki (@yamoyuku) December 10, 2023
Akhira Sano『In front of』
1992年、新潟生まれ、東京を拠点とするアンビエント作家&アーティスト(ドローイング、グラフィック、インスタレーションなど)のAkhira Sano(アキヒラ サノ)さんは、Yama Yukiさんらが主催するアンビエントフェスMIMINOIMIにも参加しています。
静謐なアルバム『In front of』(2023年12月13日、Otoroku / Cafe OTO)も併せてどうぞ。
⚡️– Ambient / Week – DAY5 紹介⚡️
MIMINOIMI – Ambient / Week – DAY5
“抽象と具体”<LIVE>
Akhira Sano
H.Takahashi
FourColor<DJ>
Nick Luscombe(MSCTY Studio) pic.twitter.com/ThgAfkbcuB— MIMINOIMI (@MIMINOIMI_info) August 30, 2023
Aidan Baker & Stefan Christoff『Januar』
アンビエント・ドゥームデュオNadja(ナジャ)の活動でも知られる、カナダ・トロント出身、ドイツ・ベルリン在住のドローン作家&Broken Spine Productionsレーベル主宰者Aidan Baker(エイダン・ベイカー)とカナダ・モントリオールのアンビエント作家Stefan Christoffのコラボアルバム『Januar』(2024年1月6日、Time Released Sound)もおすすめです。
1 of 2 #AidanBaker solo shows in Tokyo this month at @FORESTLIMIT. The other is at @ochiaisoup. https://t.co/9GYNZEz9y3
— Broken Spine Prods (@BrokenSpinePrds) November 9, 2023
Andrew Tasselmyer『Where Substance Meets Emptiness』
『Cartas Náuticas』と同じ米ラスベガスのアンビエントレーベルMystery Circlesからリリースされた、米フィラデルフィアのアンビエント・ドローン作家Andrew Tasselmyer(アンドリュー・タッセルマイヤー)のアルバム『Where Substance Meets Emptiness』(2024年1月30日)も素敵です。
https://twitter.com/tobirarecords/status/1758613198347849793
ディスコグラフィ:Bahía Mansa
- EP『Devoradores de Piedra』2019年9月12日
- EP『Artefactos Innaturales』2019年7月17日
- 『Memorias De Los Pájaros Niños』2020年11月23日、Golden Ratio Frequencies
- 『Descomposición de un Haiku』2021年1月1日
- EP『Expo 21′』2021年3月13日
- 『La Orilla en la Que Habito』2021年4月7日、Histamine Tapes
- 『Botánica del Olvido』2021年6月20日、Bahía Mansa
- EP『Mare Amoris』2021年11月5日
- 『Boyas + Monolitos』2021年12月22日、Irán Wym Organización
- EP『Ausencia (O la Virtud de los Árboles)』2022年2月28日、Fallow Recordings
- 『Grietas』2022年4月14日、Florina Cassettes
- EP『Entre La Niebla』2022年8月30日、[walnut + locust]
- EP『Tortuga』2022年10月7日、Bahía Mansa
- 『Costa Documental』2022年11月14日、Colony Collapse
- VA『Migraciones』2023年1月2日
- EP『Atavismos』2023年4月6日、Bahía Mansa
- Emho / Bahía Mansa『Sonic dialogue 2』2023年5月5日、Sonic-dialogue
- 『@citylab GAM liveset』2023年6月30日
- Emho / Bahía Mansa『Sonic companion 2』2023年10月6日、Sonic-dialogue
- 『Malliki』2023年11月1日、Cyclical Dreams
- EP『Patagonia』2023年12月16日
ディスコグラフィ:Yama Yuki
- 『Panelaço』2020年、Takuroku / Cafe OTO
- Yama Yuki / Darisbo / Crise Vitória『Gibon』2021年4月26日、Fort Evil Fruit
- 『Inverted Cities』2021年4月26日、Good Morning Tapes
- 『Music for Ride Hailing Services』2022年5月8日、Golden Ratio Frequencies
ディスコグラフィ:odoma
- 『Absence』2022年7月29日、Fina Stampa
- 『Ordinary Scenes (Giallo)』2022年11月18日、Élan Vital
- 『A Certain Frequency』2023年1月12日、Psøma Psi Phi
- 『Jam Karet』2023年2月21日、Neotantra
ディスコグラフィ:sorta opalka
ディスコグラフィ:Sogahukau
- Olegg Lermontov『Counterfactual』2016年、Olegg Lermontov
- 『The Eternally Melting Ice of John Gorrie』2021年10月1日、Midira Records
- 『Zener_50』2024年1月26日、Sensory Leakage
リンク
- AllMusic:Mystery Circles
- Discogs:Bahía Mansa、Iván Aguayo、Yama Yuki、ato.archives、odoma、sorta opalka、Sogahukau、Cartas Náuticas、Mystery Circles
- Website:ato.archives、MIMINOIMI、re_location/Tumblr、re_location/note、Mystery Circles
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