音楽

鋭児「銀河」歌詞を考察!圧倒的才能のロックバンド出現!幻の名曲に心が震える

コロナのパンデミックに疲れ果てたら、鋭児の「銀河」を聴いて心を震わせましょう!
愛情がこもりまくった深すぎる歌詞をじっくり考察します。

はじめに

個人的に、椎名林檎さんの3rdシングル「ここでキスして。」(1999年1月)のMVを街頭ビジョンで観て、「これはただごとではない」と震え、1stアルバム『無罪モラトリアム』(1992年2月)と2ndアルバム『勝訴ストリップ』(2000年3月)を聴き倒した経験があります。

圧倒的な音楽的才能に裏打ちされた、ロックの初期衝動
すさまじい熱量に火傷しそうなほど衝撃を受けました。
感覚的には何百年、何千年、何万年、何億年に一度くらいの奇跡的体験です。

それほどの奇跡が再び訪れたのが、吉田秋生さんの漫画を原作としたTVアニメ『BANANA FISH』(バナナフィッシュ、2018年7月~12月)を観て、第1期エンディングテーマのKing Gnu(キングヌー)「Prayer X」(2018年8月)を聴いたときでした。

「一体全体」というふざけているのか、本気なのか判断のつかない歌詞に、「これはアヤシイ」と反応。
Tokyo Rendez-Vous」に続いて「Vinyl」のMVを観て、とくに「あ~ばれまわれよ」というメロディの変拍子に度肝を抜かれ、音楽的才能を確信しました。

PERIMETRONペリメトロン)のYouTubeチャンネルを中心に映像を観て、1stアルバム『Tokyo Rendez-Vous』(2017年10月)を聴き、Srv.Vinciサーバ・ヴィンチ)やDaiki Tsuneta Millennium ParadeDTMP)なども後追いし、邦楽の歴史が動いたと驚愕したものです。

前置きが長くなりましたが、椎名林檎さんやKing Gnuの登場並みに衝撃を受けたのがロックバンド鋭児(読み:えいじ)です。

https://twitter.com/sensor897/status/1453266284615974916

  • 前列左→右:御厨響一(みくりや きょういち、ボーカル)、菅原寛人(すがわら ひろと、ベース)
  • 中列左→右:田村連(たむら れん、ドラム)→脱退:2022年1月25日、藤田聖史(ふじた きよし、マニピュレーター
  • 後列左→右:市原太郎(いちはら たろう、ドラム)、及川千春(おいかわ ちはる、ギター)

2020年4月(?)にAGE名義で活動開始。

2021年1月に1st EP『銀河』をリリースした後、鋭児に改名し、2nd EP『Fire』(2021年3月19日)と3rd EP『連理』(2021年10月13日)をリリースしました。

https://twitter.com/digle_tokyo/status/1480122663368593411

メンバー全員バンド、ソロプロジェクト、会社などを掛け持ちしているため、活動期間が短いわりに情報量は多いです。

ただ、謎めいたままガツンと衝撃を受けるのも醍醐味でしょう。

今回は鋭児の始まりの曲「銀河」の歌詞についてのみ考察します

【サビの歌詞】鋭児が導く境地とは?

銀河誕生へ遡る引導
アバンチュールじゃ足りないでしょ
森羅万象に秘められた感情と
愛情こそが世界の振動

出典:銀河/作詞:御厨響一 作曲:御厨響一

さんざん煽ったのでハードルが上がりすぎたかもしれませんが、どれほど褒めても上回る「感動」が待ち受けているので、まずはMVをご覧ください。

よろしいでしょうか。
アナーキーで治安が悪そうなアーティスト写真に反して、シンプルに壮大で美しいロックバラード。

とくに計4回繰り返されるサビが耳に残ります。
ファルセットのボーカル、キラキラきらめく鍵盤、ドラムとベースのグルーヴに早くも涙がこぼれたのではないでしょうか。

タイトルにもなっている「銀河」とは「恒星、星間物質、ダークマター(暗黒物質)などが集まった巨大な天体」のこと。
地球を含む太陽系などからなる「銀河系」(天の川銀河)や「アンドロメダ銀河」など、観測可能な宇宙に2兆個も存在すると考えられています。

「引導」とは先に立って導くこと、仏教用語で仏教や悟りの世界に引き入れること、葬儀の際、死者を涅槃(ねはん)に導くために僧が棺の前で唱える法語やその儀式のことです。

2020年10月31日にAGE名義で初めて公開されたMVを観ると、「最後通告」という残酷な慣用句「引導を渡す」ではなく、何度も生まれ変わる輪廻(りんね)の苦しみから解脱するようにニルヴァーナへと導く意味が込められていることがわかるでしょう。

初披露曲の冒頭の1行に音楽を通して伝えたいメッセージが凝縮されていて、そのスケールの大きさに圧倒されます。

リスナーに対して「アバンチュール(冒険味を帯びた火遊びの恋愛)では満足しないでしょう?」と呼びかけているのは、その場限りの恋愛みたいな関係ではなく、音楽によって根源的なところでつながりたいという宣言のようです。

そんな鋭児がリスナーを導く「引導」の言葉が「森羅万象~世界の振動」。
「宇宙に存在するあらゆるものや現象の感情と、愛情によって世界は動いている」といったニュアンスでしょうか。

そもそも音楽は空気の「振動」によって伝わる波動なので、宇宙物理を踏まえたうえで、この世は何も語らない自然の「感情」や人間の「愛情」の連鎖で成り立っている(震えている)という考え方が示されています。

「引導と振動」や「感情と愛情」で韻を踏んでいるところがさり気なくヒップホップ的。

歌詞にはない英語の部分は「Wake out of people f**kin’ this so slowly days(×2) Listen(×2) Baby(×4)」でしょうか。
宇宙スケールの真理を展開した直後に4文字言葉のスラングが混ざっているため、借り物ではない自分の言葉で語っている印象を受けます。

【1番の歌詞】3秒前は曇り

3秒前君の顔は曇りに曇ってた
きっと瞳に映ったのは 白黑のショーケース
つまらないのかい
走り出す衝動と快感を 忘れさす盲目の現代よ

出典:銀河/作詞:御厨響一 作曲:御厨響一

約138億年前のビッグバンによって宇宙が誕生したとすると、その直後から現在より小型の「矮小銀河」が形成され始め、地球が属する「天の川銀河」は約100億年前に別の「矮小銀河」と衝突合体したことで形成されたと考えられています。

宇宙誕生から約1秒後に陽子・中性子・電子が出そろい、約3分後に原子核(陽子+中性子)が作られたものの、原子(原子核+電子)が生まれ、「宇宙の晴れ上がり」によって光がまっすぐ進むようになったのは宇宙誕生から約38万年後でした。

「3秒」という数字はこうした「宇宙の年表」や1年に換算した「宇宙カレンダー」などと関連がありそうな気もしますが、適当な事象は見当たりません。

「銀河誕生の3秒前」のようなマクロな視点から、ストンと日常生活のミクロな視点に移したと考えるのが妥当でしょう。

「アバンチュールじゃ~」という前置きがあったので、ラブソングとして女性に語りかけているというよりは、男女問わずリスナー(君)に向けて「退屈な日常を送っているのではないか?」と心配しているようです。

この後サビが繰り返され、また宇宙スケールのマクロな視点に引き上げられます。

【2番の歌詞】3秒後は晴れ

  1. Life
  2. Zion
  3. 突然変異
  4. Lisa
  5. 銀河
  6. Fire

3秒後に君の顔は晴れに晴れ渡って
きっと瞳に映ったのは虹色の情景
震えたったのかい
とめどない感動と執着を 思い出す最上の瞬間よ

出典:銀河/作詞:御厨響一 作曲:御厨響一

「銀河誕生の3秒後」とか「宇宙の晴れ上がり」のような壮大なスケールの世界観から、一気に鋭児とリスナー(君)の「1対1」の身近な距離感に近づく時空の歪みに震えます。

「白黒のつまらない現代」に「銀河のような鋭児が誕生」したことで、「虹色の瞬間」が訪れるという「感動」を体感できたのではないでしょうか。
この後さらにサビが繰り返されることで、精神的な高みに達します。

【ラストの歌詞】3歳児が連れて行く

  1. $uper $onic
  2. 突然変異
  3. Lisa
  4. Zion
  5. Fire
  6. 銀河

見るもの全てに飛びついた3歳児は
全てに疲れた貴女をどこまでも連れて行くから

出典:銀河/作詞:御厨響一 作曲:御厨響一

「3歳児」は鋭児、「貴女=君」はリスナー。
「貴方」ではなく「貴女」と表記されていて、MVでも女性が主人公として描かれているので、ラブソングのようにも聴こえます。

ただ、鋭児は無邪気な「3歳児」のごとく、心が「曇り」だろうが「晴れ」ていようが「全てのリスナーに飛びつき」、「銀河」のように壮大なスケールの境地まで「連れて行く」という宣言です。

「3秒後」や「3秒前」は、人間らしい初期衝動や邪気のなさを表す「3歳児」につなげるための伏線でもありました。

身近な恋愛も含みつつ、人間愛、音楽愛、あるいは宇宙愛とすら言えそうな根源的な「愛情」によって精神的な高みに連れて行くために鋭児は誕生したという話でしょう。
これがコロナのパンデミック中に、鋭児が出現した真相です。

この後ギターがむせび泣き、サビが繰り返されます。
鋭児の導きにより、「最上の瞬間に震えたった」のではないでしょうか。

おわりに


2021年12月17日に東京・渋谷WWWで開催された「鋭児 presents “Propaganda”」での御厨響一さんの発言によると、「銀河」は「これからたぶん封印することになりそう」とのこと。

詳細や理由は不明ですが、2022年1月25日にドラムの田村連さんの脱退が発表され、6人組から5人組に変わったことが影響しているのかもしれません。

ただ、6人体制だった既発の3枚のEPを聴く限り、音楽性の振り幅が広く、あらゆるスタイルを自分たちのものにしているところが鋭児の強みと思われます。

例えば御厨響一さんの歌い方だけでも楽曲やパートによってファルセット・ロック的・ラップなどと変幻自在で、どれが主軸ということもなく、すべて御厨響一さんらしいと思わせる圧倒的でカリスマ性のあるボーカルが魅力です。

さらにメンバー全員の音楽性を掘り下げると長くなりそうなので、この辺で切り上げましょう。
まずは幻の名曲になるかもしれない「銀河」を大勢が聴くことで、リスナーの日常生活と鋭児の音楽活動がさらなる高みに達することを願っています

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渡辺和歌
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