音楽

弌誠（イッセイ）「モエチャッカファイア」歌詞の意味を考察！ゲーム『ゼンゼロ』エレン・ジョーのインスパイアソング

 

弌誠（イッセイ）さんの14thシングル「モエチャッカファイア」はゲーム『ゼンゼロ』ことRPG『ゼンレスゾーンゼロ』のキャラクター、エレン・ジョーのインスパイアソングとして制作されました。

Billboard（ビルボードチャート）、YouTube（ユーチューブ）、Spotify（スポティファイ）などのランキングを席巻。TikTok（ティックトック）で「萌え萌えハート」の振付ダンスがバズったほか、歌ってみた、踊ってみたなどの二次創作動画も盛り上がっています。「モエチャッカファイア」はなぜ人気なのか、歌詞の意味を考察、解説します。

弌誠（イッセイ）とは？ディスコグラフィ


弌誠（読み方：イッセイ）さんは2001年6月10日生まれのシンガーソングライター。2020年2月23日、YouTubeに自作曲「ユートピア」のミュージックビデオを初投稿し、音楽活動を開始しました。

2ndシングル「通リ魔」は映画『きさらぎ駅』主題歌、10thシングル「しあわせレストラン」は映画『リゾートバイト』主題歌、13thシングル「GAME OVER」はテレビアニメ『多数欠』第1クール・エンディングテーマに起用されました。

  • 1st SG「阿吽」2022年4月27日、issey
  • 2nd SG「通リ魔」2022年6月1日、issey
  • 3rd SG「みにくいアヒルの子」2022年7月1日、issey
  • 4th SG「はろー。」2022年8月1日、issey
  • 5th SG「謝祭」2022年9月1日、issey
  • 6th SG「おもちゃばこ」2022年11月1日、issey
  • 7th SG「なんだか眠そうですね」2023年1月11日、issey
  • 8th SG「恋舞」2022年4月26日、issey
  • 9th SG「ラヴボム!!!」2023年6月28日、issey
  • 10th SG「しあわせレストラン」2023年10月20日、issey
  • 11th SG「さよならバースデー」2024年1月26日、issey
  • 12th SG「よなべのタンゴ」2024年4月1日、issey
  • 13th SG「GAME OVER」2024年7月3日、Nippon Television Music / VAP
  • 14th SG「モエチャッカファイア」2024年7月19日、issey

ゲーム『ゼンゼロ』エレン・ジョーとは？


ゲーム『ゼンゼロ』とは、最新都市ファンタジーアクションRPG『ゼンレスゾーンゼロ』（Zenless Zone Zero、2024年7月4日リリース）のこと。略称は『ゼンゼロ』や『ZZZ』。『崩壊』シリーズや『原神』を手がける中国のソーシャルゲーム会社miHoYo（ミホヨ）およびそのブランドHoYoverse（ホヨバース）が開発・配信しています。

エレン・ジョー（Ellen Joe、CV：若山詩音さん）は『ゼンゼロ』に登場するキャラクター。世界を飲み込んだ災害かつ球状空間・ホロウの出現後に唯一残った都市・新エリー都で暮らす女子高生です。

家事代行派遣会社・ヴィクトリア家政が経営するメイド喫茶で鮫（サメ）メイドとしてアルバイトしているほか、エージェントとしても暗躍。塩対応の面倒くさがり屋ですが、エージェントとしてのスキルは高いという特徴があります。

「モエチャッカファイア」は『ゼンゼロ』エレン・ジョーのインスパイアソング。「公式なのか？」というと非公式。いわゆる同人キャラソン（ファンによるキャラクターソング・イメージソング）です。とはいえ、ゲーム配信開始から約2週間後に楽曲をリリースしているので、まったくの無関係ではないでしょう。

ちなみにエレン・ジョーのCV若山詩音さんはTVアニメ『ダンダダン』モモ（綾瀬桃）の声優も務めています。

弌誠「モエチャッカファイア」ミュージックビデオ・Music Video・MV・PV・YouTube動画


「モエチャッカファイア」の作詞・作曲者は弌誠さん、編曲者はnecchiさん。コーラス＆ボーカルディレクションは森田くみこさん、ミュージックビデオのイラスト（ジャケットも）とアニメーションはハツミノさんが手がけました。リリース日から4日後のMV公開（2024年7月23日）の2か月後（2024年9月23日）に再生回数は100万回を突破しています。

サメのシリオン（亜人、獣人種族）エレン・ジョーに相当するのが、メイド服姿でサメの尾ビレ（しっぽ）があるギザ歯の女の子。エネルギーの消費が激しいため、エネルギー補給として棒つき飴（アメ）をくわえています。

MVの概要欄には二次創作素材をダウンロード（Download）できるリンクが貼ってあり、ボカロカバーのような感覚で歌ってみた動画などに挑戦できる仕組みです（ガイドラインあり：無料のインスト・Instrument、フリー音源、フリー素材、動画素材、文字素材、歌詞素材　歌詞動画など）。

「本家以外に誰が歌ってるの？」と気になる人は、弌誠さんのYouTubeチャンネル・再生リスト「みなさんの動画（モエチャッカファイア）」をチェックするといいでしょう。

B2S & Koala「真的没渇多」


中国語ラップ「真的没渇多」（読み方：ジェンダメイフードゥオ、2022年4月18日、怒放音乐）とのマッシュアップ、MAD動画、ショート動画、ニコニコ動画でのMMDモーション配布も盛んです。

絵師（趣味のイラストレーター）による線画や塗り絵、画像や漫画などのファンアート・ファンメイド、メイド服姿や狼執事フォン・ライカン（Von Lycaon、CV：小林親弘さん）のコスプレも賑わっています。

弌誠「モエチャッカファイア」歌詞の意味を考察

  • デジタル配信リリース：2024年7月19日、issey
  • 1番：Aメロ～Bメロ～サビ（Cメロ）
  • 2番：Aメロ～Bメロ～サビ（Cメロ）
  • 3番：Dメロ～ラスサビ

1番Aメロ：にらめっこのあっぷっぷ？

ようこそお越しなさったご主人様
隣に座ってせーの
萌萌萌萌
こんなんで誰が喜ぶのさ
ねぇ教えて 笑顔でup pull pull

モエチャッカファイア/作詞:弌誠 作曲:弌誠

「モエチャッカファイア」を「萌着火炎」と表記するリスナーもいて、ニコニコ大百科では曲名の元ネタ・由来をギャル語「おこ」＜「まじおこ」＜「激おこぷんぷん丸」の最上級「ムカ着火ファイヤー」と推察しています。たしかにパロディっぽいですね。

萌え仕草「手でハート」をしながら「萌え萌えキュン」の言葉を添えて、飲み物や食べ物に愛を込めるサービス「愛込め」を考案したのは、秋葉原のメイド喫茶・あっとほぉーむカフェのレジェンドメイドhitomi（志賀瞳）さん。もともとオタクではなくギャルだったそうです。

YMO「君に、胸キュン。」


ちなみに「萌え萌えキュン」の元ネタはYMOことYellow Magic Orchestra（イエロー・マジック・オーケストラ）の「君に、胸キュン。」（1983年3月25日、Alfa Music）でしょう。作詞は松本隆さん、作曲はYMOです。

バーバパパ「ウ”ィ”エ”」


映像は怖いので要注意です。トラウマになるレベルなので怖いのが苦手な人は観ないほうがいいかもしれません。そんなVtuberバーバパパさんの「ウ”ィ”エ”」（ヴィエ、2020年7月22日、MusicRay’n）。中山昌亮さんのホラー漫画『不安の種＋』（秋田書店）のキャラクターおちょなんさんをモチーフとしています。

HIKAKIN「ウ”ィ”エ” ヒカキンVer.」


HIKAKINさんのカバーも怖いので、やはりホラーは嫌いとかオカルトは好きじゃない人は観ないほうがいいです。ただ、高速テンポ（160BPM前後）のロシアンハードベース（Russian Hardbase）かつキャラソングという点は「モエチャッカファイア」と似ています。

編曲者necchiさんのポストによると「弌誠さんのアコギ弾き語り音源を元に作っていて、歌以外の鳴ってる音は全部自分が作った音」とのこと。


「モエチャッカファイア」が流行った理由は、弌誠さんの低音ボーカルが『ゼンゼロ』エレン・ジョーの気だるい雰囲気（ローテンション）を巧みに表現しているからでしょう。にらめっこの「あっぷっぷ」のような英語表記の「up pull pull」がパンチラインです。

ただ、原作ゲームを知らず「何のアニメ？ヲタ芸？」と勘違いしていた人、作者・歌手の弌誠さん本人を知らず「ボカロなのか？どんな曲？ジャンルは何？歌ってる人は誰？誰の歌？何の歌？何の曲？」ととまどっていた人もいつのまにかハマる中毒性があります。

結局「なぜ流行ったのか？何が良いのか？」というと弌誠さんの低い声、簡単かつキャッチーなメロディーや踊りとトリッキーなサウンドの融合にあるでしょう。イントロの出だしからとにかくサウンドがかっこいいです。しかも歌いだしは原曲キー（Key）の1オクターブ下。後の最低音から最高音への音域・声域の振り幅も魅力になっています。

1番Bメロ：ご主人様は無愛想な塩対応に大喜び？

愛想を忘れてご苦労様
私とあなたでせーの
luvluvluvluv
こんなんで誰が喜ぶのさ
ねぇ教えて 笑顔でup pull pull

モエチャッカファイア/作詞:弌誠 作曲:弌誠

メイド喫茶で働きながら「萌萌萌萌」や「luvluvluvluv」といった「愛込め」サービスの良さがわからないエレン・ジョーの心情がセリフとして表現されています。

性別の違いがあるにもかかわらず、激しい運動をした後は気絶するように寝るのであくびが絶えないエレン・ジョーのキャラクターをうまく再現しているところが高評価。好き嫌いは人それぞれですが、メイド喫茶の客やゲームプレイヤー、楽曲リスナーのなかには無愛想な塩対応を喜ぶご主人様もいるでしょう。

カラオケや歌ってみた動画で歌うときは一般的な女性キーより低いため難易度が高く、音程迷子になりやすい案件かもしれません。

1番サビ：お冷めな娘は鮫メイドのエレン・ジョー

ひらりはらり 女の子
ふわりふわり 言葉のsaw
それってつまり お冷めな娘
感情的リアル 笑顔でup pull pull

モエチャッカファイア/作詞:弌誠 作曲:弌誠

「言葉のsaw（ソー）」は「のこぎりのように傷つけることもある言葉」と「のこぎりの刃のようにギザギザの歯」、「お冷めな娘」は「冷めた女の子」と「鮫（サメ）メイドのエレン・ジョー」のダブルミーニング。

弌誠さんの低音ボーカル、ギター、ベース、ドラムなどのかっこよすぎるサウンドに、サビでは森田くみこさんのコーラス（オクターブハモリ）も重なります。

弌誠「もえちゃっかふぁいあ」


鍵盤ハーモニカのように息を吹き込む鍵盤リコーダー・アンデス（鈴木楽器製作所）バージョンもあります。そのYouTube動画の字幕では「エレン・ジョーのやる気のない接客態度と友だち思いの情の厚さのギャップを表現するために制作した」といった楽曲の誕生秘話も語られています。

2番Aメロ：人が見抜けない嘘とは？

人は見かけによらぬもの
嘘を嘘だと見抜ない
したたかな袖 裾の革
鳥肌 鮫肌 アンドゥトロワ

モエチャッカファイア/作詞:弌誠 作曲:弌誠

エレン・ジョーのギャップが表現されている「モエチャッカファイア」。全身に「鳥肌」が立つほど気持ち悪いことがあっても、サメのシリオンなので「鮫肌」というのもギャップのひとつでしょう。

表向きはメイドですが、裏の顔はエージェントという背景もあるので「人は見かけによらない、嘘を見抜けない」という歌詞につながります。

2番Bメロ：間違ったご指名とは？

間違ったご指名をいただきます
私とあなたでせーの
luv luv luv luv
これはど派手にご苦労様
遊びましょう 笑顔でup brrrt brrrt

モエチャッカファイア/作詞:弌誠 作曲:弌誠

「メイド喫茶で間違った指名を受け、派手に失敗しても笑顔で遊ぼう」といった意味ですが、ギャップや嘘、間違いが散りばめられているのでエージェントとしての派手な格闘シーンを連想できるでしょう。つまり「メイドとしての指名そのものが間違いであり、実際はエージェントとして任務を遂行していた」ことになりそうです。

また「モエチャッカファイア」は公式キャラクターソングではありませんが、『ゼンゼロ』サイドから弌誠さんに対して何らかの「ご指名」があったのではないかと推察したくなります。「up pull pull」が「アンドゥトロワ」を経て「up brrrt brrrt」に変化する点もおもしろいですね。

2番サビ：掃討 let me show の意味

ひらりはらり ここは何処
ふわりふわり 掃討 let me show
それってつまり お冷めな娘
確証的リアル 笑顔でup brrrt brrrt

モエチャッカファイア/作詞:弌誠 作曲:弌誠

「掃討 let me show」の「掃討」（そうとう）は「（敵や好ましくないものを）徹底的に払い除く」こと。「敵を排除するところを私に見せて」といった意味になります。「ソドレミソ」と空耳できるものの、実際の音程とは合致しないところもギャップ萌え。

「確証的リアル」は1番サビの「感情的リアル」と韻を踏んでいます。「luv」は「love」、「brrrt」は発砲音のスラングなので、感情的に冷めた女の子がエージェントとして戦うことが確証的（決定的）になった印象です。

3番Dメロ：ワルツからメタルへ

歌い出す 秘密の鐘
終わることの無いこの世界
悲しい子供は
虚しい子供は
眠らせて

モエチャッカファイア/作詞:弌誠 作曲:弌誠

3拍子のワルツになる間奏の後に続く「3番Dメロ」。弌誠さんのYouTube動画「もえちゃっかふぁいあ」の字幕によると、間奏では「ランラン」ではなく「ンナンナ」と言っているそうです。『ゼンゼロ』に登場する小型知能ロボット・ボンプの声を意識したのでしょう。

最低音から最高音への振り幅が激しい「悲しい〜眠らせて」の後、メタル調の伴奏になるところでもギャップが表現されています。弌誠さんは淡々と歌っていますが、とくに「眠らせて」は超学生さんのようにメタルっぽく叫びたくなるのではないでしょうか。「ワルツとメタル」で「メイドとエージェント」のギャップを表現していると考えられます。

【超学生】モエチャッカファイア @歌ってみた

3番ラスサビ：すべてはお飯事？

お飯事
遊びましょう 笑顔でup pull pull

ひらりはらり 女の子
ふわりふわり 言葉のsaw
それってつまり お冷めな娘
感情的リアル 笑顔でup pull pull

遊びましょう 笑顔でup pull pull

モエチャッカファイア/作詞:弌誠 作曲:弌誠

女子高生がメイド喫茶で働くこと、メイド喫茶そのもの、実はエージェントとして暗躍していること、楽曲にワルツやメタルを取り入れること、すべてはお飯事（ままごと）であると達観しているようです。

ラストの「ひらりはらり」で転調する展開もドラマティックですが、サウンドが盛り上がれば盛り上がるほど冷めたボーカルが強調されます。全体的にやる気なしでもやることはやるというゆるい感覚が流行りポイントだったのではないでしょうか。

おわりに

弌誠さん自身が『ゼンゼロ』やエレン・ジョーのファンなのでゲーム好きに刺さるのは大前提として、二次創作を解放するボカロ的な手法が広告（プロモーション）代わりになっているとも考えられます。

たとえゲームを知らなくても歌ったり踊ったりしたくなるサウンドが極上。歌手でも声優でもこれまでは高音が注目されてきましたが、今後は低音ボイスの魅力にハマる人が続出するかもしれません。

2025年8月12日には恵比寿LIQUIDROOMにて1st ONE MAN LIVE『チャイルドレストラン』を開催する予定。

https://twitter.com/tyih_1950/status/1855626758244257852

2025年8月27日、Zepp Shinjukuの追加公演もアナウンスされました。バンド編成の「モエチャッカファイア」が期待できるかもしれません。

 

弌誠
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渡辺和歌
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